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鬼子の過去

妖姫は幽霊なのに、何故かパンが大好きだ。

この間も事務所に置かれていたパンを勝手に食べて皆を騒がせた。



事務所にて、れみと一緒にソファーに座り、クリームパンを頬張る妖姫。

そんな彼女を、鬼子はどこか寂しそうな目で見つめていた。

そして、その鬼子をれなが不思議そうに見つめていた。

「鬼子お?どしたん?」

はっ、と顔をれなに向ける鬼子。両手を振り、何かを否定するような様子を見せるが、そんなに意味はなさそうだ。

首を傾げるれなを見て、一旦冷静になる鬼子。

「…昔を思い出しちゃって」

…れなはゆっくり、深く頷く。



鬼子とれなはだいぶ前から悪鬼と戦っていた。

当時鬼子はかなり過激な思考だった。相手が悪鬼であれば、誰であろうと殺害する。そんな思考のまま、悪鬼退治を繰り返していた。

そんななか、なるべく敵を殺さないという思考のれなと出会い、一時は敵対し、互いに意思をぶつけ合った事もある。


…鬼子が過激思考を持っていたのは、彼女がかつて暮らしていた町での一件が原因だった。

その町には、あるテロリストからの襲撃を受けていた。

悪鬼を生物兵器として放った大規模なテロだった。

鬼子はこの一件のなか、とある力に目覚め、悪鬼達を退ける。

だがその力を恐れた人間達の攻撃を受け、母親を失う。


生き残った父は妻を失ったショックのあまり人間を憎むようになり、そして悪鬼の力に魅了され、悪鬼の力で人間を討ち滅ぼそうと目論んだ。

そして、残された鬼子は父を変えてしまった悪鬼を憎む。

父は人間を憎み、娘の鬼子は悪鬼を憎み…憎悪にまみれてしまったのである。


そして、先程説明した鬼子に目覚めた力というのは…。



「邪神、シン…」

鬼子は胸に手を置く。


邪神シン。

かつて人間を創造した神々の一角であり、かつ地獄を作り上げた創造神と伝えられる存在である。

悪意から誕生する悪鬼にも地獄の力が含まれているとされ、悪鬼を間接的に作り上げた存在とも言える。


そんなシンだが、人間創造への反対派であった神々により、その体はバラバラに打ち砕かれ、魂も二つに分かれ、二人の人間の内に宿った。

そのうち一つの魂が、鬼子に宿ったのである。


「…改めて聞くと、壮絶ですな…」

彼女の過去を改めて聞かれたれなは、終始目を見開いていた。

鬼子は話を聞いてもらって申し訳なさそうな顔だ。

その戦いからかなり経ったが、まだ胸が痛むのだろう。

「悪鬼がこうしてまだ現れ続けるという事は、人間の悪意は尽きてないのよね…」


先程説明したシンだが、実は鬼子、れなの戦いの最後に戦った相手こそがシンだったのである。

とある事で現代に目覚め、人間世界を第二の地獄に変えようとしたシンを打ち破り、世界を守ったのだが…。

悪鬼の発生は止む気配がない。


…あの妖姫を、鬼子はどうしても過去の自分と重ねてしまうのだ。

彼女がなぜ死んだのかは分からない。だがまだ小さな子供だ。酷い死にかたをした可能性だってある。


…弱々しい鬼子の肩に手が置かれる。

れなだ。

「萎れちゃ鬼子らしくない。鬼子、なんて厳つい名前してるんだから、もっと熱くなれ。悪鬼だって何か理由がないと暴れられないでしょ?その理由を突き止めるまで、戦い続けるまでだよ」

どこまでも前向きなやつ。

だからこそ、彼女が側にいると、何故だか元気が出る。

綺麗な歯を見せて笑うれなは、アンドロイドとは思えない温もりだ。


「…ありがとうれな。そうよね」

鬼子は二人を見た。




…と、れみと妖姫がいつの間にか消えている。

クリームパンもない。

「あれ?」

そういえば二階が騒がしい。二人が階段を駆け上がると…。




…そこには、パソコンルームの書類をあちこちにばらまいたり、踏んだり、食べたりして遊ぶれみと妖姫の姿があった。

「こらーーー!!!」

とんだ悪戯っ子を招き入れてしまったようだ…。

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