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新たなる仲間

「鬼子ー!!久しぶりぃぃぃぃぃぃ」

テクニカルシティにある小さな建物…れなたちの拠点、事務所にて。

れなとれみ姉妹の熱烈な歓迎を受けながら、鬼子と火竜の悪鬼狩人二人がやってきた。

事務所の奥にいる葵もこちらに手を振って嬉しそうだ。他のメンバーはあいにく用事で事務所にいないが、帰ってきたらきっと同じように喜ぶだろう。

鬼子と火竜はソファーに座り、目の前にはれなとれみ。れなはよほど嬉しいのかテーブルの上に身をのりだし、鬼子の顔にくっつかんばかりに自分の顔を寄せている。

「れな、キスする気?」




…れなが元の姿勢に戻ったところで鬼子は話を始めた。

以前の毛鬼の件についてだ。

やつは恐らく、というか名前からして確実に悪鬼だ。

悪鬼というのは、伝承に伝わる鬼とはまた違う、主に人間の悪意が固まって誕生した存在。

鬼子、火竜は普段悪鬼を撃退しながら旅をしている。




「俺の炎で撃退したが、やつはそこまで危険な悪鬼ではなさそうだ。しかしやつは何かしらの目的を持っているようだった。何か大きな計画でも企んでいるのか…」

うーんと腕を組んで唸る葵。こう言った案件が一番対処に困る。


そんななかでもれなは呑気だった。

「まー何とかなるっしょ!今からコンビニ行ってくるからその途中で何か情報掴んだら教えてあげる!」

そう言うと、そのまま玄関へ駆けていった。あまりに呑気な姉の行動にれみはまさしくポカンと言った感じの顔だ。

「相変わらずね」

鬼子は目を細めた。



テクニカルシティは今日も平和だ。平和で、忙しく目まぐるしい光景。

そこら中の建物で人々が複雑な電子機器と向かい合い、必死に作業に取り組んでいる。

真っ昼間の日差しのなか、大きな荷物を運ぶ人々もいる。

そんななかでれなは呑気に口笛を吹きながら歩いていく。

そんな彼女を気にも留めぬ人々。自分の事で精一杯なのだ。

この町は、そんな目まぐるしい光景がいつも広がっているのだ。


…だが、今日は何か違う。

れなは背後から何かが近づいてくるのを感じた。


人間とは違う。人間よりも冷たく、しかし無機質でもない奇妙な力だ。


そっと、振り返る。なるべく気づかれないように振り返ったのだが、コソコソ振り返る必要はない事にすぐに気付く。


その相手は意外とすぐ近くにいた。というか、れなの真後ろだ。


子供だ。

とても長い灰色の髪が特徴で、左目が前髪で隠れている。

右目は真っ赤で、紫の着物を着ており、黄色の帯を結んでる。

その少女はれなと目があっても動かない。

何を考えてるのか分からない笑顔でれなをじっと見つめていた。

横を通る人々は、れなの事をチラチラと見つめていた。

しかし、この中では明らかに場違いなその小さな少女を見る者は誰一人としていない。



「…ん?んん?」

ようやく少女が口を開いた。

「え?あ!?」

そして、突然大声をあげる。驚いた少女だが何より驚いたのはれなだ。

少女は背を向けて逃げ出そうとしたが、明らかに怪しいこの少女をれなは逃がさなかった。

「ちょ、何!?あんた何者!?」

れなはつい少女の髪を引っ張ってしまい、少女は大声で泣き出してしまう。


…なのだが、周囲の人々は少女に見向きもしなかった。れなにだけは、怪訝そうな視線を向けていた。

「え、これはまさか…この子の姿、私だけ見えてるパターン!?」




…しばらくして、れなは近くにあった路地裏にて、本当に自分にしか見えていない事を知らされた。

落ち着いた少女は胸を張る。

「わらわは妖姫。この世で最も恐ろしい悪霊じゃ。わらわを目の当たりにしても微動だにしないとは、お前、何者じゃ」

指を指してくる妖姫。

…とりあえず突っ込みたいところは多いが、れなは正直に答えた。

「私はただのしがないアンドロイド。ちみ悪霊だか何だか知らないけど、迷子なの?」

「何じゃその言葉遣いは!!わらわはこの世で最も偉大で恐ろしい悪霊じゃ!わらわを見ても臆さぬその肝は認めてやるが、礼儀を知らぬ者は呪殺刑じゃぞ!」

…凄い自信だ。妖姫は地団駄を踏みながら怒っているが、恐らくこんなやつには小さい子供でも恐怖など微塵も感じないだろう。

物珍しさにれなは妖姫をちょっと煽ってみる。

「んー怖いねーお姉ちゃん足がすくんで動けんわ。恐怖」

「貴様頭を撫でるでない!!どいつもこいつもわらわを愚弄しおって!己の愚かさを悔いるが良い!」

妖姫は後ろに下がり、両手を構えて何やら力を集め出す。

れなは一応両手を構えるが…。


妖姫の小さな手から、その手によく似合った小さな紫の炎が飛び出す。

その炎はノロノロと向かってきて、れなの手にぶつかると、煙のように消えた。


…痛くも熱くもない。というか、これは攻撃なのかと聞いてしまいそうになった。

「…!!わらわの攻撃を真顔で受けるとは…!せめて何か良い反応をしろ!!」

地団駄を踏み続ける妖姫に、れなはすっかり困り果ててしまう…。


「振り回されているな」

聞き覚えのある声がした。


上を見上げると、灰色の翼を背中から広げた闇姫の姿が。

ゆっくり降り立つ彼女を見て、れなは拳を構えた。

闇姫と遭遇した時には、十中八九殴りあいが起きるのだ。

だが彼女はれなではなく、妖姫に視線を向けて独り言のように言った。

「やはりか…」

れなは闇姫目掛けて突進と見間違う程の速度で近づき、顔を突きだした。相変わらず距離感が狂ってる。

「いきなり来て何なんだよ姫闇」

「キスする気か。ぶっ殺すぞ」

闇姫はれなを軽くはたいた。それでもかなりの勢いで、れなは二、三歩後ずさらされ、ひっくり返る。

仰向けになったれなを確認した闇姫は無表情のまま話し出す。

「れな。悪鬼がそこら中に現れている」

上体だけ起き上がらせつつ、れなは妖姫を見た。

妖姫は何が起きているのか分からず、キョトンとしている。

「世界の各所で突然悪鬼事件が多発し、見た事もないやつらが次々に人を襲っている。私の軍も、悪鬼に襲われた」

つまり…世界に何かが起きているという事だ。

鬼子達が話していた件を思い出すれな。

これは…また新たな戦いが幕を開けようとしているようだ。

「れな。お前は恐らくまたこの件に首を突っ込むつもりだろ。だがそうはさせん。今回の騒動の根源は私の軍が頂く」

「何だか分からないけど、また何か企んでるのか。私が許さんぞ!」

適当にテンションを高めるれな。今一緊張感がないが、闇姫は真面目だ。

呆れたような目をしながら、闇姫はまた上空へ飛び去っていった。


「…とりあえず」

闇姫の出現で放心に近い状態になっていた妖姫だが、はっ、とれなの方を見た。

…れなは、今度は妖姫に顔を近づけていた。


「君、新しい友達だね」

ニンマリ笑うれなの姿は不気味だった。

人を怖がらせる立場のはずの妖姫は、早くも恐怖のあまり涙目になっていた…。





「さて、やつはどうするかな」

遥か上空で、闇姫が怪しく微笑んでいた。

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