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静かなる陰謀

れなたちには他にも仲間がいる。

森に来たれなの目の前にいる紫の長い髪につり上がった紫の瞳の女も仲間の一人だ。

「ラオン!今こそちみの力を貸してほしい!」

「報酬はいくらだよ」

ラオンと呼ばれたその女は、切り株に腰掛けながらナイフを布巾で磨いていた。

彼女は荒くれた性格のアンドロイドだ。

荒っぽい性格の彼女はれなたちも度々手を焼く。

先程、れなたちが拠点としている事務所に依頼が入ったのだが、あいにくれなたちは他の依頼で手が回らず、彼女に頼らざるを得ない。

「報酬?あー、お金!モンスターを倒せば百二円くれるって」

ラオンは舌打ちしてナイフを拭いたまま立ち上がる。

「れな。私達は人より力もあるし、頼られるべき存在だろう。でも命を懸けてる事には変わりない。…なのに何だ?百二円ってよ!!」

どうやら機嫌が悪いようだ。こういう時の扱いはとことん困る。

れなは一瞬そっぽを向いた。

「ま、まあ人助けだと思ってさ」

「…最近特に報酬額が落ちてないか?人間達は私達がアンドロイドやら死神やらだと思って舐め腐ってやがるんだ。それに依頼自体もバカに少ない…」

ラオンはナイフを切り株に起き、拳を握る。

「科学が発展したこの町の事だ。恐らくまた新たな兵器を開発して、それに浮気する気なんだよ!死神のドクロちゃんとテリーはまだしも、私達は所詮アンドロイド。道具かなんかだと思ってやがるんだ…」

依頼こそ来ないが、それとは別個に闇姫軍の襲撃で最近戦い続きだ。ラオンも趣味のギャンブルに行けずにストレスが溜まってるらしい。


困り果てるれなの元に、また一つの声が聞こえてきた。

今度はラオンの荒れた感じの声とは違い、美しい声だ。

「じゃあ私が行ってあげるわよ」

振り替えると、そこには緑のサイドテールの髪の女が、両手にライフル銃を抱えて立っていた。

そのすぐ横には筋骨逞しい体格に、日に焼けた肌の二メートル以上もある大男。大男の目は黒目がなく、白目を剝いた奇妙なものだが、不思議と穏やかなオーラが伝わる表情だった。

女はアンドロイドの葵、男はアンドロイドとは少し違う、いわゆる人工生命体の粉砕男だ。

粉砕男はラオンの頭に大きな手を置く。

「やれやれラオン、お前も手がかかるな」

「るっせええ!」

ナイフを振ろうとしたのを見て後ずさる粉砕男。

咳払いの後、後ろに振り返ってこう言った。

「…でもラオン。お前の読みは正しいようだ。本当にテクニカルシティはある兵器を開発中のようだ」

一同は動きを止めて粉砕男の背中を見る。


「最近モンスターの他に新たな存在が動き出してるらしくてな。そいつらへの対抗策として研究が進められているらしい…。…また何かやらかさないと良いんだが」

顎に人差し指を添える粉砕男。

そうだ。れなたちはかなり長い間人間の為に戦い続けている分、人間の汚れた面も多く知っている。

その新兵器で、過激な行為に出なければ良いのだが…。



…その頃、ここから遥か離れたとある岩山に、何かを察知した二人の戦士がいた。

一人は赤い髪に赤い着物を着ており、背中には大きな鎌を装着した女。風と共に、どこかから流れてくる何かを感じて、登山に励む足を止める。

その横にいたのは一人の青年。

オレンジの髪に、炎のように輝く瞳の青年だ。まるで炎のような、熱い物を感じさせる、美しい瞳だった。

「どうした?鬼子(きこ)

「…何か殺気を感じない?火竜(かりゅう)

火竜はオレンジの髪を左手でいじりながら辺りを見渡す。

冷たい風が吹いているばかりで、特に怪しいものは感じられない。


…だが鬼子の顔を見ると、確かに嫌なものを感じているのは気のせいではないようだ。

うっすらと、僅かな恐怖が感じられる。


「…そうだわ。最近れなたちに会ってないわね。たまには会いにいこうかしらね」

嫌なものを感じると同時に、鬼子は思い出した。

大切な仲間達…れなたちの事を。

嫌なものを感じ取った鬼子は、かつてとある戦いを共にしたれなたちに会いたくなったようだ。

二人は山登り修行を中断して、下山しようとしたのだが…。


「お前らが噂の悪鬼狩人か…」

二人の目の前に、何かが現れた。


何というか、不思議な形をしている。

形は丸っこく、全身が茶色い体毛に包まれ、空中をふわふわ浮いている。

その毛は風に吹かれても全く動かない。毛玉のような見た目だが、毛と毛の隙間には僅かに赤い目が見えている。

火竜はその生物から殺気を感じたのか、拳を向ける。

「…お前、悪鬼か」

「ワシは毛鬼(もうき)鬼界(きかい)より、我らの計画の為、まずはお前達悪鬼狩人から消えてもらうとしよう!」

毛鬼はモサモサな体で飛びかかり、体当たりを仕掛けてくる!

あまりに突然の事に火竜は反応できず、ぶつかってしまう。

毛鬼はそのまま全身の毛を伸ばし、火竜の首に絡み付かせてきた!

一瞬焦ったが、火竜は毛を掴み、両手から火を放つ事で毛を燃やしてみせた。

離れる毛鬼に今度は鬼子が鎌を引き抜き、向かっていく!

鎌を振り上げ、毛鬼を空高く斬り上げた!

岩の地面に叩きつけられ、早くもダウンする。鬼子はその毛を掴んで、毛鬼の顔…があると思われる位置に怒鳴るように聞いた。

「何を企んでるか教えなさい」

「予想通りの実力だな…。なら尚更計画は話せん。さらばだ!」

毛鬼は一本の毛を伸ばして鬼子の手を叩き、離させ、そのまま転がりながら岩山を器用に下山していく。二人は追いかけたが、そのあまりに器用かつ素早い動きには追い付けなかった。


「これは…ますますれなたちに会う必要がありそうね」

鬼子と火竜は顔を見合わせた。

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