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静かなる戦いの幕開け

ここは科学が発展した町、テクニカルシティ。

多くの建物が立ち並び、多くの人間達、そして人間ならざる者も共存している不思議で、少し奇妙な町。

ここには、ある戦士達が暮らしていた。

これは、その戦士達に降りかかる不思議な戦いの物語。

不思議な世界の、不思議な物語だ。


沢山の建物が立ち並ぶなか、二人の少女が走っている。

ピンクの丸い髪留めをつけた黄色いツインテールを揺らしながら走る、白い服にピンクのリボンとスカートの女子高生くらいの少女。

そして彼女の緑の瞳の先には、小学生くらいの外見で、彼女とお揃いの髪留め、黄色い星をプリントした緑の服を着た小さな少女。

女子高生くらいの方はれな、小学生くらいの方はれみと言う。

よく似た名前の通り、二人は姉妹だ。



れなはれみに手を振る。

「れみー!!早よ早よ!!」

「待ってよ速すぎるお姉ちゃん!」

息を切らすれみ。

れなはそんな彼女にお構い無しにまた走り出した。

「はあああ!酷くない!?許さん!!」

突然口調が荒くなるれみ。

普段は普通の口調なのだが、興奮すると度々口調が荒々しくなる…はっきり言って面倒な性格だ。

れみの子供らしからぬ恐ろしい剣幕に恐れをなすれな。

「や、やばい、ちょっとからかいすぎた!こうなれば何としてでも逃げなければ!」

れなはコンクリートの地面を蹴る。


すると彼女の体がふわりと宙に浮き、そのままロケットのように高速飛行を始めた!

後ろのれみも同じように飛びながられなを追いかける。


そう、彼女らは人間ではない。

アンドロイドなのだ。

風を全身に浴びながら町の上空をあちこち飛び回る二人。

「待ちやがれー!」

れなの方が飛ぶ速度は速い。しかし、れみにばかり気をとられていたせいで前方をよく見ておらず…。

「ぐへ!」

間抜けな声を出すれな。

電信柱に顔面から衝突してしまった。

コンクリートの地面に倒れ、白目を剥くれなを見下して大笑いするれみ。

まあ、基本こんな感じの日常だ…。



「あ、れな」

そんな異様な光景に全く戸惑いを見せずに声をかける一人の少女、そしてもう一人、黒いスーツを着た骸骨がいた。

白く、短いツインテールにふんわりと長い後ろ髪、ドクロ型の髪飾りに赤くつり上がった目の少女。

その口のなかには牙がある。彼女もまた、人間ではない。


…隣の骸骨と並んでる時点で人間ではない事は確かだが。

少女はドクロ、骸骨はテリー。二人は兄妹の「死神」なのだ。

れなは近づいてきたドクロの手を凄い勢いで掴み、テリーの方を向きつつ空中のれみを指差した。

「ねえテリー。この妹さんください。あんな妹いらんです」

眼球もない骨の顔を歪ませて苦笑いするテリー。

「そんな事言って、またすぐに仲直りするんだろ?お前らはもうそういう仲の姉妹なんだよ」

もうれなとれみがこういう仲なのは分かりきってる。長年ある事で通じあってきた仲間達は、強い絆で結ばれているのだ。


そのある事とは…。



「ん…?」

ドクロが何かを感じ、上を見上げた。


何気ない青空だが…何かがおかしい。

四人は分かるのだ。何か邪悪なものが動いていると、大気が淀んでいく事が。

何か危険なものが、この町に来る。




…青い空から無数に飛んでくる物体。

よく見るとそれは、紫の丸い物体に手足と翼が生えた異様な姿の小悪魔だった!

小悪魔達は町に次々と飛んでいき、手に持つ槍を使って破壊活動を開始した。

建物に穴を空けたり自動販売機を倒したり道行く人々に襲いかかったり…やりたい放題だ。


それを見て、れなたちは黙って見過ごさなかった。

腰を落として構え、拳を構え、一斉に空を飛ぶ。

空中にいたれみも言われずとも小悪魔達に向かっていく。

そして、れなが真っ先に拳を小悪魔に叩き込んでみせた!

そう、戦いだ。戦いを通じて深めた仲なのだ。




れなに続くようにれみが蹴りをお見舞いする。姉妹の息ぴったりのコンボ攻撃だ。

テリーも骨の体で小悪魔に突っ込んでタックル、ドクロは回し蹴りで小悪魔を地上に蹴落とす!

凄まじいコンビネーションだ。小悪魔達も連携をとろうと陣形を組もうとするが、れなたちの速度には敵わない。

陣形を組む前に蹴りや拳を打たれ、あっという間に全員が気絶、地上に墜落してしまった。

「他愛ない相手ね」

ドクロの一言が、戦闘に幕を下ろす。


地上に降り立つ一同。れなが小悪魔達に近づくが反応がない。目を覚ますまで時間がかかりそうだ。

「目を覚ましたら何から聞こうか?」

「そうだな…まあ、こいつらがどこから来たかはいくらでも見当がつくが…」

テリーは空を見上げる。

そう、実はこの小悪魔達の在所には大きすぎる心当たりがあるのだ。

一同と長らく対峙する、ある者がいるのだ。





…そいつは、人間の世界より遥か離れた世界…。

闇の世界にいた。


赤黒い空が広がるなか、石造りの建物が並ぶ異様な町がある。

その町に聳え立つ漆黒の城。


そこのバルコニーに、黒いツインテールを冷たい風に揺らす一人の女が。

灰色の服に黒いスカート、赤く冷たい視線の左目、翼のような形状の眼帯で右目を隠している。

闇の世界の殺風景な様を見下ろすその女のもとに、一つの声が城の中から聞こえてきた。

「ああ〜闇姫様!!また失敗しました!!」

出てきたのは紫の球体から翼を生やした奇妙な悪魔。

先程の小悪魔とよく似ているが、あちらと比べると黄色く輝く鋭い目に牙を生やした口を持つより強そうな姿。

闇姫と呼ばれたその女の頭から胸当たりの大きさしかない威厳のない体型だが、この悪魔は並みの悪魔とは比べ物にならない力を持つ恐ろしい悪魔、名はデビルマルマンと言う。

デビルマルマンはあたふたした様子だが、闇姫は一回ため息をついただけで済ませた。

「れなたちにまた小悪魔マルマンをけしかけたのか。私と対等に戦うような連中が相手なんだぞ。役不足も良いところだ」

「とか言って闇姫様。あの負けた部下達もしっかり報酬を与えるんでしょう?」

闇姫は一瞬黙り、すぐに口を開いた。

「モチベーションが無ければ何も始まらん。働きには相応の褒美が必要だ」

デビルマルマンはニヤニヤと笑っている…。


「どちらにせよ、我々闇姫軍が世界を牛耳る日はまだ遠そうだ。デビルマルマン、お前には今日は戦闘員の訓練の指導を任せる」

敬礼し、羽ばたきながら城へ戻っていくデビルマルマン。

彼ら闇姫軍の最終目標は、簡単に言えば世界征服。

悪を絵に描いたような連中なのだ。

この手の悪党は大体すぐに制圧されるのだが、闇姫軍の歴史は闇姫以前の指導者達の時代も含めれば数万年にも及ぶ。

それだけの期間がありながら未だ目的を達成できない理由は単純だ。

すぐ邪魔が入るのである。


それこそ、あのれなたちだ。

邪魔なやつらを倒さない事には何も始まらない。

闇姫は、独り言を呟く。


「今度はやつらを利用するとしよう…」

闇姫は空を見上げた。

赤い空に浮かぶ黒い雲が、不穏な雰囲気を彩っていた。






「皆の者!!」

…ここは地球の奥底。

しかし、地底世界ではなく、地底から通ずる異空間のような世界…。

人間が作ったような木材の家が立ち並んでいるが、ここに住むのは人間ではない。

おぞましい姿をした獣や不定形の体を持つ生物とは言いがたい妙な連中が、ある建物を見上げて集まっていた。

赤い昔ながらの城から響く、どこか高圧的な女の声。

「我らが地中に身を潜める時代は終わった!今こそ我ら悪鬼(あっき)の力を世に示す時!!人間の築き上げた文明を混沌に叩き落とすのだ!」

一斉に上がる歓声。頭上に暗闇が続く異世界に、その声は吸い込まれていく。

何やら、厄介な連中が動いているようだった。


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