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耽美奇譚

貴方は帰るべき場所

作者: 秋暁秋季

注意事項1

起承転結はありません。

短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。


注意事項2

生き人形、早苗さんと胡蝶のワンシーン。

正妻が為せる余裕。

貴方は何時も私を置いて、何処かへ出掛けてしまう。帰ってきた時には何時も他の女の影があって、強い香水の匂いと共に私に口付けを施す。

今日もそんな朝帰り、首元に赤い花を咲かせた貴方は、猫のような足取りで部屋に入って来た。

「ただいま、早苗さん」

他の女に吸い付いたその口で、陶器で出来た唇を吸うのだ。本当に不愉快だった。浮気者。男娼。夢魔。それでもこの体では録に文句さえ言う事が出来ない。この腕の中に閉じ込める事も、「行かないで」と泣き縋る事も、何一つ。他の女から奪ったであろう生気を口から受けて、不快にも頬を染める事しか出来やしない。生命が宿った事を気配でしか伝えられない。

貴方は衣装箪笥の中から取り出したシフォンのドレスを体に重ね合わせると、すっと私の顔を覗き込んで来た。髪をひと房取り、そこに口付けを落とすと、優しく髪を梳く。

「早苗さん。今日はこれにしようね。それから髪を高い位置で束ねて……。化粧を施して……。……今日はね、何処にも行かないよ。朝から晩までずっと一緒。嬉しいね」

貴方はドレスに皺が寄るのも構わずに抱え込むと、私の膝上にその耽美な顔をちょこんと乗せた。甘えるようにシルクの布地に頬を擦り寄せると、色っぽい吐息を吐く。

悔しいかな、こうされると許してしまうのだ。他の女と何度床を共にしようとも、その屍の上に私を鎮座させられた気がして。

貴方は名残惜しそうに上体を起こすと、ネグリジェの肩紐に手を掛ける。ずるりと剥かれて、シフォンのドレスを見に纏わせていく。毎日、そうされて来たように。

「幸せだね。早苗さん。他のどの()よりも、僕は早苗さんが一番好きだよ」

嘘仰い。直ぐに置いて行く癖に。

「本当だよ。直ぐに手を出す僕の唯一の愛の形。プラトニック」


ん? 早苗さんは生きてるのかって? どうだろうね。それは君に教える事は出来ないかな。それは私だけの秘密だから。特別だからこそ、隠しておきたい事が沢山あるんだよ。生きてたら君、手を出すだろう? それは許さないよ。

え、浮気と不倫を繰り返しているから、特別とは言わないって? お忘れかい? 私は夢魔だよ。女性だったら誰彼構わず手を出す生物だよ。特に夢の中なら合意問わず。蕩けてしまえば一種の合意。まぁ、現実では気にするけど。

そんな私が手を出さずに、口吸いだけで満足する時点で特別だと理解して欲しいね。彼女は特別だよ。本当に。じゃなかったら此処に戻って来ないもの。

胡蝶の性格的に、夢中で起きた事は現実じゃないから、セーフ。

でも“胡蝶の夢”、“夢現”をモットーとしてる此奴が言う事だから信用しちゃいかん。

終わり良ければ全て良し。最後に蕩けりゃ万事解決。一夜の関係こそ全て。


そんな此奴がプラトニックな関係を続けて、甲斐甲斐しく面倒を見るって一つの愛の形ですよね。

早苗さんが居なくなったら、絶対連れ戻すし、今度は足枷嵌めそうな。


もしそうされたら早苗さんも早苗さんで、これで二度目だからと呆れて受け入れてくれそうですけども。

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