開戦! バタコvsフレイム・ウルフ
ガガガガッ!! ゴロゴロゴロッ!!
土煙をあげて、フッ飛ばされた「バタコ」が地面を転がっていく。
しかし、すぐに「バタコ」の各スラスターがジェット噴射を開始した。
激しい勢いのジェットが回転を止め…車体を安定させる。
ただ、回転は止まったけれど――――「バタコ」の車内はグチャグチャだ。
「イテテテ……またフッ飛ばされたよ……。大丈夫かい? お前たち」
「―――な、なんとか……。お前は大丈夫か? ハンス?」
「あ、あぁ…。……この柔らかいクッションのおかげで、顔をぶつけずに済んだよ。―――でもちょっと薄っぺらくて、安っぽいクッション……だ……な…ぁ……?!」
車内電力が一時的に落ちて、真っ暗な中声をかけ合う三人組。
ヨロヨロと立ち上がろうとする時、電力が復旧した。
「バタコ」の車内が明るくなる。
散乱した荷物。折り重なっている、コニー、サムス、ハンス……そして、レイナ。
ハンスの目の前にはレイナが倒れていて、その胸にハンスは顔を埋めて助かったらしい。
今もその手は、レイナの胸にあった。
「――――う、薄っぺらい……?」
喉の奥から絞り出すような声で、レイナがのしかかっているハンスを足蹴にしながら呟いた。
「うわッ!! わ、わ、わ、わぁッ! 誤解だよ誤解ッ! 僕はただのクッションだと思って!」
「――――安っぽい……?」
みるみる、レイナのサラサラの金髪が逆立ち……魔力を帯びてバチバチと火花を放ち始める。
そのレイナの、胸の感触が残っている手をブルブル震わせながら。
恐怖と恥ずかしさと、年頃の少女の胸を触ったことに。
ハンスの震えが止まらない。
「ごめんッ!! ごめんッ!! ゴメンッ!! 薄っぺらいとか、安っぽいなんて……ホント、ゴメー―――ンッ!!!」
数秒後。
「バタコ」の車内に電撃の魔術がさく裂した。
◇ ◇ ◇
体勢を整えた「バタコ」だけど、車体には大きな凹みができていた。
さすがに、フレイム・ウルフの巨大な体の突進を受けては、鋼鉄製のボディと言えども無事では済まないようだ。
「充電はどうだいッ!」
「――――行けますっ!」
「エンジンは?」
「……とりあえず快調っす!」
「アーム用オイルは?」
「大丈夫っす!」
ロボットアーム担当のハンスは、髪をチリチリに焼け焦げさせたまま答える。
後ろの席。
リーダーのレディ・コンスタンスの隣には、ハンスを電撃で焼いて痺れさせた大魔法使い、レイナ・ストレンジ嬢が、色白の頬を真っ赤にさせ、腕組みしてプンプンと怒っている。
「砲撃準備ッ! 反撃に出るよッ!」
『合点・了解・アイアイサーッ!』
体勢を整えた「バタコ」の左右から、金属製のロボットアームがニョキニョキと伸びる。
戦闘用の金属の爪が、ガシャン! ガシャン!と音を立てた。
対峙するのは、真っ黒な毛並みが美しい…巨大な狼。
目を真っ赤にして、我が子の仇を取ろうと牙を見せている。
「バタコさえありゃあ、百人力ッ!! ブッ潰してやらァ!!
オラオラオラオラァ――――ッ!!」
運転手のサムスが叫び、馬力の強い「バタコ」の車輪をギュルギュルギュルッ!!と回転させて、一気に突進していく。
魔獣に衝突するかと思いきや。
巧みなハンドル操作で、「バタコ」の前輪を浮き上がらせて、ウィリーする。
そして、後ろ側のスラスターがジェット噴射をしたかと思うと。
「バタコ」は…一瞬にして空中を飛びあがり、フレイム・ウルフの巨体の頭上を――――飛び越える。
「今だッ!」
「あいよっ!」
「バタコ」が大ジャンプをしている間、ハンスが操作するロボットアームが。
ガチャンッ! ガチャンッ!
音をたてて、フレイム・ウルフの肩に左右の手を食い込ませて、そこを支点にしてジャンプの軌道を変えていく。
「オオオオオォオオォォ――――ッ!!!」
ロボットアームと、「バタコ」の操縦。
巧みな連携によって、一瞬にしてフレイム・ウルフの背後に「バタコ」は着地した。
おまけに、ロボットアームの左右の腕は、フレイム・ウルフの肩を握って離さない。
至近距離での大チャンス。
「撃って撃って撃っておしまいッ! 『ダベェ団』の意地、見せてやんなァ!」
『合点・了解・アイアイサーッ!』
そして。
「バタコ」に1門だけ装備されている大砲から、集中砲撃が始まる。
ドンッ!!
ドンッ!! ドン、ドン、ドン、ドンッ!!!
爆炎がフレイム・ウルフの頭部を包み、砲撃の地響きと爆風が―――森の木々を揺らした。
◇ ◇ ◇




