孤立無援の異世界スタート!
見上げれば、のどかな青空が広がっていた。
かなり上空を、一羽の大きな鳥が…優雅に空を舞っている。
快晴。
そして……森の、清涼感溢れる心地よい風と、木々のざわめき。
「自然って…良いですねェ―――……。ねぇ、姐さん?」
近くの川で洗濯をしていたハンスが、濡れた衣類をギュウッと絞った。
水が、ボタボタと落ちていく。
停車している「バタコ」の車体と近くの木の間にロープを張って、ハンスはそこに洗濯物を干していた。
「あぁ……良いもんだネぇ…」
やる気のない、レディ・コンスタンスの声。
彼女は今、停車している「バタコ」の車体の上に大きな日よけのパラソルを広げ、その下に横たわって冷たいレモネードを飲んでいた。
「――――戦いの中で荒んじまった心が、癒されるよ」
長いまつ毛の目で、周囲を見渡す。
「バタコ」の上で、視線が高くなっている分、遠くまで見渡せた。
木々が広がる森の向こうには、小さな山がある。
けど、人間が住んでいるような形跡は、無い。
近くを川が流れているような、水音のようなものも聞こえている。
けど、人間が住んでいるような形跡は、無い。
レディ・コンスタンスたちがいるのは、森の中に少しだけ開けた小さな広場。
背の低い芝生のような草が生えている。
周りの木々もそれほど背は高くなく、枝も細い。
だから、爆風で吹っ飛んできた「バタコ」が突っ込んでも、車体にそれほど甚大なダメージは無かった。
だから、「バタコ」の中にある冷蔵庫から冷たく冷えたレモネードを出して、優雅にティータイムを楽しむことができている。
「……けど、姐さん。いつまでここで、こうしてるつもり、ですかい?」
「そりゃこっちの台詞だよ。―――一体いつになったら出発できるンだい!
この日差しの中にずっといたら、日焼けしちまうってんだい。日焼け止めが何本あっても、足りやしないよ」
「…だとよ。ハンス。……出発はもうできんのかァ? 正義の味方にふっ飛ばされて、不時着して……。念の為に点検するって言ってから、かれこれ4時間は経ってるぜ?」
運転席のすぐ近くのハッチを開けて、長い足をひっかけて。
のんびりとした口調でサムスが言った。
「姐さん。サムス。……聞いてくれ。
今僕たちが置かれている状況、ちょっとこれまでと何か違う気がするんだ。
今まで、正義の味方にフッ飛ばされた後……僕ら、どうしてたんだっけ?」
「そりゃあ、ほら。アタシらが『覚えてろよー!』とか『お〜た〜す〜け〜!』とか、お約束の捨て台詞を残して……空の彼方にフッ飛んじゃう、て感じだろう?」
「そうそう。それで、どっかの山とか畑とか、海の上に落ちる前に、『バタコ』が姿勢制御システムってやつで逆噴射して、なんとか、無事に着地すんだろ」
レディ・コンスタンス―――コニーとサムスが言う通り。
これまで、この三人組が無事でいるのは全て「バタコ」あっての事なのだ。
「そうだ。でも―――その後が肝心だ。
いつもなら、その後どうなってた?」
「いつもなら……そうだなぁ。ハンス、お前が『ダベェ団』本部に連絡して……」
「……回収班が来てくれて、『バタコ』を回収してくれたり、アタシらの面倒見てくれるンだよねぇ?」
「そう! こういう状況になったたきは、まずは『ダベェ団』本部と連絡を取り合わなきゃいけない。そうでなければ、僕らがこんなところで、こんな事態になっているなんて……」
「誰も…知らないって…こと?」
「そうだ」いつになく、真剣な表情のハンスだ。
「それじゃあよ!」
ハッチに掛けていた長い脚を、サムが降ろした。
「本部に連絡すりゃあいいだけの事なんじゃねェの?
だが……お前がそう言うってことは、もしかして、本部と連絡が取れねェって状況なのか?」
「そうだ。……我々は今、『ダベェ団』本部とも連絡が取れず、完全に…」
「……完全に?」
「孤立無縁状態なんだ」




