登場! 悪役3人組! いつかどこかで見た光景
始まりました! 悪役三人組のいつもの「続き」の冒険譚!
やられっぱなしの悪役三人組が、もしも異世界に転生したら…?
いつかどこかで見たことのある3人が、異世界で何をしていくのか。ご覧ください。
「全国の悪の組織ファンの皆さん、長らくお待たせ致しました!
いよいよ登場です! 今週の、今週のぉ……ビックリ&どっきり&ワクワク、メカ――――ッ!」
白スーツ姿の小太り男・ハンスが手を振り上げた。
ゴゴゴ…と地鳴りがしたかと思うと、
足元の地面に亀裂が走る。
大きく口を開けた割れ目からは、
鮮やかすぎる黒とピンク色をした、丸々太った装甲車のようなメカが姿を現した。
「僕の自慢の発明品のぉ、世界最強汎用戦闘用タンク! そう……人呼んで、バトル・タンク・オブ・コンスタンス―――――『バ・タ・コ』だァ! 行けェ――――ッ!」
サングラスに小太り体形の男・ハンスが、地面からせりあがってきた「バタコ」を、手にしているリモコンらしき操作ギミックで操る。
ウイイィィイィイィ…ン! ウィイイィ……ン!!
「バタコ」の左右の胴体部分から、金属製の長い腕が機械音と共に生えた。
「逃げられやしないンだかんね!」
「バタコ」の胴体の上に、1人の女性が立っている。
白を基調としたラバースーツに身を包み、その豊満なボディラインを余すことなく見せつけながら…目は蝶の形をしたマスクで覆って素顔を隠している。背中には赤いリボンと「DB」の印。
もとより高い身長なのに、さらに高いヒールを履いた刺激的な恰好で、手に拡声器を持って仁王立ちをしていた。
特徴的な赤毛を振り回し、凛とした眉を怒らせる。
「もう、諦めなってんだ! お前が―――――持ってるのは、アタシら調査済みなンだよ!」
ガンッ、と白ラバースーツの赤毛女史が、「バタコ」の胴体を踏みつける。
製作者のハンスが「姐さん…壊さないでくださいよぉ」とオロオロしていた。
「……さっさと渡すんだよ! ―――――Tクリスタルをッ!!」
◇ ◇ ◇
突然現れた巨大な装甲車と、その上に乗って拡声器で叫び声をあげてくる赤毛の女。
少年と少女は手を取り合い、駆けている。
ついさっきまで、2人きりでのんびりと将来を語っていたのに。
穏やかなセリーヌ川の流れを眺めて。
爽やかな川を吹き抜ける柔らかな風が、少女の黒髪を舞いあがらせたときの…その美しさに見惚れていたのに。
その静寂と幸せ、そして淡い恋心をも吹き飛ばすような轟音と共に、あの三人組が現れた。
「そこのガキどもぉ! Tクリスタルを、寄こせ――――――ッ!!!!」
現れるなり、拡声器で怒鳴り声を浴びせてくる女。
「……ちょっと大人しく見てりゃぁ、イチャイチャ、イチャイチャと……! キィ―――ッ!! 声をかけるタイミングを探って我慢していた私たちの前で、10代の少年少女がよくやる、甘酸っぱい…トキメキなんか、してんじゃないよッ!! あ――――も――――! イライラするぅッ!!」
女の声は、すべて拡声器でボリュームを高められて、少年が住んでいる町中に響き渡っている。
聞いていた村の人たちは「何だ?」「誰が叫んでるんだ?」「なんか叫んでるオバサンの声が聞こえる」「うるさいオバサンがいんのか?」と口々に文句を言いながら、家の外に出てきた。
その村人たちの声も、拡声器女の赤毛の下の耳に、届いてしまう。
「誰がオバサンじゃああッ! アタシは、こう見えても、26だよっ! 26ッ! まだまだ、オバサンなんて言われる歳じゃぁ、ないかンね!!」
ガンガンと、拡声器女史が「バタコ」の胴体を踏みつけた。
その様子に、村人たちは呆れている。
「……別にあの子たち、10代前半なんだから……いいだろ、甘酸っぱいトキメキ、しても」
「10代の甘酸っぱい恋が、うらやましいんじゃねェの? あのオバサン」
「そりゃあ、あの女の子と比べりゃあ……オバサンだよな」
「どう見ても、オバサンだな。ありゃあ」
「オバサン…」
「26って……若くは、無いよね」
一緒に家から出てきた小さな子どもでさえ、
装甲車の上に仁王立ちしている女を指さして、呟いた。
「―――――こ……こん……のォ……!!」
怒りに目を血走らせた拡声器女史は、バキンッ!と音をたてて拡声器の持ち手の部分を握りつぶした。ギリギリと歯ぎしりをして、女は牙を見せて部下に命令を出す。
「もう我慢の限界だよッ! あのガキどもを、力づくでも捕まえるんだ!!
―――サムス、ハンス、やっておしまいッ!!」
『合点・了解・アイアイサー!』
リモコンでロボットアームを操作している小太り男・ハンスと。
「バタコ」の操縦席でハンドルとアクセルを巧みに操作し、逃げる少年少女を追いかける長身男・サムスが、声をそろえて拡声器女史の命令に反応する。
「もう逃げられりゃしないンだよ! ……この、レディ・コンスタンス様がァ――――お前らみたいなガキ相手に、本気になろうってンだかんねッ! 覚悟しろぉッ!!」
◇ ◇ ◇
巨大な8輪タイヤで地面をえぐるように駆ける、汎用戦闘用タンク「バタコ」の巨大な車体。
住み慣れた村から離れて、郊外に逃げようと考える少年と。
その少年に手を引かれ、ショートカットの黒髪をなびかせる可憐な少女。
膨らみ始めた胸には、青く輝くクリスタルが飾られたペンダントが揺れている。
そのクリスタルを握りしめながら、少女は不安そうに少年の手を握り、今、全力で村道をかけていた。
「……まだ追ってくるのかしら? 何なの? アイツら」
「わかんない。……でも、村の人たちから話は聞いてたんだ。王都のほうで、青いペンダントを胸に下げた女の子を探してる、妖しいヤツらがいるって」
「―――私のこと探してたの? あの人たち」
「そうみたい」
「どうして?」
「わかんないよ。でも、アイツらが名乗っていた名前は聞いたよ。アイツらは……」
3人組の名前を言おうとした少年は、そこで急ブレーキ。
手をつないで全力で駆けていた村道の、少し先。
隣町へと続く、少し丘になっている向こう側の草原から……音が聞こえてきた。
ガシャンッ! ガシャンッ!! ドルルルルルッ!!
金属製のアームの音と、唸り声をあげる排気量の多いエンジン音。
おまけに。
砕け散った持ち手を応急処置としてテープでとめただけの拡声器で、相変わらず、キンキンとした声で叫ぶあの女―――――レディ・コンスタンスの声まで、聞こえてきた。
「――――こォこォで会ったが百年目ェ! もう逃げられないかンねッ! 大人しくアタシら『ダベェ団』に…そのTクリスタルを、寄こしなッ!!」
仁王立ちをして2人を見下ろす、レディコンスタンス。
そして、ガチャリと「バタコ」の左右のハッチが開く。
片方からはリモコンを手に…ロボットアームをウネウネと動かして威嚇してみせる、小太り男・ハンスの姿。
もう片方からは、これまで「バタコ」を運転していた、長身の体格のいい青年・サムスが上半身を出し、2人に拳銃を構えた。
抵抗するならば、発砲もするし――――ロボットアームで力づくで拘束もする。
そう、警告をしてきている。
「観念しな、ガキども。悪の組織『ダベェ団』のアタシらを前に、よくここまで逃げ切れたァね!
もう、逃がしゃしないかンね!」
つけまつ毛をバサバサさせながら、レディ・コンスタンスが睨む。
「僕の発明した『バタコ』は、世界最強だよぉ♪」
リモコンをガチャガチャしながら、ハンスがニヤニヤする。
「―――大人の怖さ、知ることになるゼぇ。オレの射撃は……世界一だ」
サングラスごしに、サムスが容赦なく拳銃の狙いを向けてくる。
絶体絶命のピンチ!
青春真っただ中の少年少女を主人公とした冒険譚は、ここで終わってしまうのか?
そう、誰もが思ったとき。
救いの光は、突如として現れる。
「呼ばれて飛び出て…救い出す! 正義の超光子ヒーロー・アイアンソルジャー…参上ッ!」
◇ ◇ ◇
高らかな声と共に、3人の人影が頭上に飛び上がった。
澄み渡った青空と、眩しい陽光。
飛び上がった人影は――――細身のシルエットの手足を伸ばして、体の関節部分から青白いジェットを噴射し……姿勢を制御しながら、滑空している。
巨大な「バタコ」の車体に阻まれ、動けなくなっている少年少女のほうへと、舞い降りた。
タタタッ!
ジェットを逆噴射して、華麗に着地をする3人のヒーロー。
左から順に、赤、ピンク、青のカラーリングが施された、金属製の細身のアーマーに身を包んでいる。顔も金属製のフルマスクで覆われているので、正体はわからないようになっていた。
「アイアンレッド、アイアンピンク、アイアンブルーッ! ――――いつもいつも、アタシらの邪魔ばっかりすンじゃないわよッ!! ホントにもうっ! いつもこれからって時に、アンタら現れやがって!」
レディ・コンスタンスがますます怒り狂う。
「今日という今日は、決着付けてやンだから!
―――――サムスッ! ハンスッ! やっておしまいッ!!」
『合点・了解・アイアイサーッ!』
◇ ◇ ◇
ドルルルルッ!!
重々しいエンジン音を響かせて、黒煙を吹き出しながら「バタコ」が8輪のタイヤを急回転し、アイアンソルジャーたちへと猛突進する。
黒とピンクの色をした巨大な装甲車の「バタコ」。
戦闘開始宣言と同時に、レディ・コンスタンスもハッチから中に乗り込んで、運転手のサムス、メカニック操作担当のハンスと共に、3人は車内のモニターカメラごしに外の様子を伺っている。
「――――ハンスッ! アイツら…すぐに『超光子』テクノロジーの武器を使ってくるかンね! ……『ダベェ団』技術開発部から提供された……アレ!! やってみるよ!」
「アイアイサーッ!!」
サングラスをしたハンスが、いつにも増してギラリと眼鏡を輝かせる。
「アイツら……僕の作った発明品を、次々と粉々にしやがってェ…。
バタコ1号、バタコ2号、他にも色々と…『超光子』テクノロジーをアイツらが使い始めてから、僕の作品はボロボロだッ!
でも――――今日からは、一味違うところ、見せてやるッ!!」
ハンスが操作パネルに手を伸ばす。
新しく導入された機能を、今こそ発動させる時。
「見て驚くなよッ! お前らが使う『超光子』テクノロジーへの、対抗策だ。
――――――『反光子』バリア、作動ッ!」
ボタンを押すと、巨大な「バタコ」の車体全体をキラキラとした結晶のような膜が―――覆っていく。『反光子』素子をナノテクノロジー化したもので、完全とは言えないが…『超光子』による攻撃に対して一定の抵抗ができるようになるもの。
「アンタらが、どうやって『超光子』テクノロジーを手に入れたかは知らないけど。アタシらだって……いつまでも、それにやられっぱなしじゃ、ないかンねェ―――ッ!!」
バリアに包まれた「バタコ」が、左右2本の金属製のロボットアームを伸ばした。
3人まとめて、巨大な手で握りつぶそうとする。
「覚悟しやがれェ―――ッ!!」
「僕の発明品の凄さを、思い知れェ!」
「とっとと、やられておしまいッ!」
サムス、ハンス、レディ・コンスタンスの3人が、「バタコ」の車内で叫んだ。
対して。
余裕ある様子で対峙するアイアンソルジャーの3人は、マスクの中でニヤリとする。
「……悪の栄えた例はない。お前ら―――悪役3人組も、ここまでだ」
アイアンレッドが、右腕を伸ばす。
傍らのアイアンピンクと、アイアンブルーが……その腕に自らの手を添えた。
そして。
3人のアイアンソルジャーが力を合わせ、最大最強の必殺技をくり出していく。
『必殺――――超光子・レーザー!!』
◇ ◇ ◇
3人のアイアンソルジャーの腕から、キラキラと輝く光の波が出現する。
凄まじい光のエネルギーをまとったレーザーは、それに対する『反光子』のバリアに包まれた「バタコ」の車体へと……一直線に伸びていく。
「来た来た来たよォ―――ッ!! こっちには、技術開発部が発明した『反光子』テクノロジーがあンだ!! 負けンなァ!」
「勝負ですぜ、姐さんッ!!」
「僕の作った『バタコ』は……最強なんだ。運命、預けるよ。……行ッけェ―――ッ!!」
正面から勝負にでる悪役三人組は、「バタコ」のコクピットの中で叫んだ。
強烈な光を放つ「超光子・レーザー」が。
いよいよ、「バタコ」のバリアに包まれた車体へと――――突き刺さった。
その瞬間。
悪役三人組の意識は、真っ白になった。
◇ ◇ ◇




