第8話 親族たちにも馬鹿にされる。その2
「おぉ〜、流伽は相変わらず力持ちだの〜」
「あはは、お爺ちゃんったら。これくらい普通だよ〜」
お昼過ぎには畑の収穫作業が終わった。
俺はトマトやキュウリ、スイカなどの収穫した夏野菜を詰めた箱を5つ積み重ねて運んでいる。
「いやいや、本当に凄い力持ちだよ。この前近所のムキムキのお兄さんに頼んだけど、箱2つで精一杯って感じだったし」
「あはは、ありがとう。爺ちゃんは無理しちゃダメだよ」
小さい頃に、「流伽は力持ちだねぇ」なんておだてられて、よく買い物袋を持っていたのを思い出す。
きっと、祖父母にとって孫はいつまでも小さな子供なのだろう。
今だに俺が重いモノを待ち上げるのを褒められるのが嬉しいと思っているみたいだ。
「……流伽、お前は優しい子だから、きっと学校でもやられてばかりだろう? だが、たまにはガツーンとやり返してもいいんじゃよ?」
「そうそう、本当は流伽の方が強いんだから。私たちはお前が傷つく方が辛いよ」
急にそんなことを言われて驚いたけど、俺は慌てて笑顔を作った。
「あ、あはは……嫌だなー爺ちゃんも婆ちゃんも! 俺は学校でもちゃんと上手くやってるよ! 心配しないで! と、友達だっているしね! 可愛い女の子もいるんだよ!」
文芸部の皆さんを友達と言い張り、俺は何とか誤魔化す。
爺ちゃんたちに余計な心配をかけないように。
(本当に俺の方が強いならイジメられることもないんだけどなぁ……俺をサンドバッグにしている学校の不良たちには有名なボクシング部の人だっているし、地元のギャングの総長だっている……とても勝ち目がないよ……)
自分の力のなさに思わずため息が出そうなのをなんとか堪え、箱をトラックの荷台に置く。
トラックが箱の重みで15センチほどズシリと沈んだ。
手伝いを終えると、俺は着替えて家に戻った。