表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

58/135

第58話 ラッキースケベ

 

「柏木さん! すみません、一旦こちらに避難させて――!」


「……ふぇ?」


 女性看護師さんたちから逃げて、俺が柏木さんの診察室のドアを開く。

 バキッと何かを破壊するような音と共に、柏木さんは瞳を見開いたまま俺を見て呆けた声を上げた。


 それもそのはず……柏木さんはお着換え中だった。

 正確に言うと、スカートを履いている途中で……。


 俺と柏木さんは見つめ合ったまま一瞬、時間が止まる……。


「す、すみませんでしたぁ!!」


 我に返った俺は扉を閉めて、すぐに背中を向けて謝った。


「だ、大丈夫だ! もうほとんど着替え終わっていたしな!」


「いいえ、完全に俺が悪いです……本当にすみませんでした」


「謝ることはない。思えば私だって君の身体を堪能――じゃなくて、治療のために何度も見させてもらっているし。それにしても、ちゃんと鍵をかけていたと思うのだが……」


 俺は柏木さんに背を向けたままもう一度頭を下げる。


「あの……それが、今見たらどうやら扉を開いた時に鍵を壊しちゃったみたいで……」


 背中越しに柏木さんの呆れたため息が聞こえた。


「お前の場合、普通に生活するだけでも手加減が必要だな。もう着替え終わったから、振り向いても良いぞ」


 俺はゆっくりと振り返る。

 顔を真っ赤にした柏木さんが強がっているような表情でラムネシガレットを咥えて足を組んで座っていた。

 美人で経験豊富そうな柏木さんでも恥ずかしかったらしい。

 思えばまだ年齢的には女子高生だし、そりゃそうか。


 柏木さんは大きく咳ばらいをすると、恐る恐る聞いてきた。


「……ぎりぎり、スカートを履くのが間に合っていたと思うんだが。ちなみにその……"見えて"いたか?」


「いえっ! 全く! 何も見えませんでしたぁ!」


「そ、そうか……せっかく――いや、何でもない」


 柏木さんは何とも言えない表情で何とも言えない返事をする。

 あまり感情的な人ではないので、内心ではかなり怒っている可能性もある。

 いや、怒っているに違いない。


「それで……どうして、こんなに早くに私の診察室に来たんだ?」


「実は、昨夜は眠れなかったので中庭のベンチで涼んでいたらそのまま寝落ちしてしまいまして……起きたら看護師さんたちに心配されて追い回されてしまったんです。それでここに避難を……」


 俺が事情を説明すると、柏木さんの目が急に鋭くなる。


「なるほど、私から山本には近づかないように注意喚起をしておく」


「そ、そこまでしなくても良いと思いますが……」


「山本、自分の病室のカギはちゃんとかけているか?」


「え? えぇ……まぁ、トイレとかに行くときはすぐに帰ってくるのでかけませんが。それ以外は基本的にかけてます」


「そうか、ちゃんとかけておいた方が良いぞ。病院とはいえここはアメリカだ、危ないからな」


「柏木さんのアメリカのイメージ、なんか悪くないですか? 確かに、勝手に荷物を漁られたりするのは困りますが……」


「そんなことより、せっかく早く来たなら話を始めるか。お前の経過観察についてだが、恐らくあと3か月程度だ。それまでに異常がなければ退院だな、日本にも帰れるぞ」


「そうなんですね、思ったよりも早い! でも、柏木さんとお別れになると思うと寂しいですね~……」


 俺がそう呟くと、柏木さんは不思議そうに首をかしげた。


「何を言ってる。私もお前についていくぞ?」


「え?」


「当然だろう、私はお前の肥大症を治すためにここにいるんだ。お前の病気が治ったなら私がここに残る理由はない。今回お前から得たデータは日本に持ち帰って、製薬は日本で行うつもりだ」


 なんてことでもないかのように言う柏木さんに俺は困惑する。


「ちょ、ちょっと待ってください! この病院を辞めるおつもりですか!? 柏木さん、ここでもかなり偉い立場なんじゃ……」


「だ~か~ら~、それも私が自由に肥大症の研究をするために得た立場に過ぎん。要らぬ名声だ」


「……もしかして、俺……柏木さんの人生を狂わせてます?」


「今更、何を言ってるんだ」


 柏木さんはラムネシガレットを一本取り出すと、俺の口に差し込んだ。


「お前が私の人生を治療したんだろ、こうやってな」


恐らく勝負下着を履いて来ていた柏木さん。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓のタイトルをクリックすると他作品のページに飛べます↓
連載版始めました!
下のタイトルを押すと読みにいけます!
『【連載開始!】ライブ直前に怪我をしたアイドルの代わりにステージに立ったら、マネージャーの俺の方が大人気になってしまった件』
作品のブックマーク・☆評価お願いします!
<(_ _)>ペコッ
小説家になろう年間1位!
下のタイトルを押すと読みにいけます!
『クラスで陰キャの俺が実は大人気バンドのボーカルな件』
漫画も発売中!

    
新刊!7月25日発売!予約受付中!
『山本君の青春リベンジ!』
  ▼▼▼ 画像をクリックすると、書籍情報に飛びます! ▼▼▼  
表紙絵
  ▲▲▲ 画像をクリックすると、書籍情報に飛びます! ▲▲▲  
新刊!次巻は8月発売!
『【漫画】ギルド追放された雑用係の下剋上~超万能な生活スキルで世界最強~』
  ▼▼▼ 画像をクリックすると、漫画を読めます! ▼▼▼  
表紙絵
  ▲▲▲ 画像をクリックすると、漫画を読めます! ▲▲▲  
― 新着の感想 ―
[気になる点] 肥満症を治すまでの話が少し長い気がする
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ