表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/135

第21話 妹に相談する


 蓮司さんから治療のご提案をいただいてから2日後。


 彩夏の中学校の中間テストが終わったので、いよいよ治験の話をすることにした。


 彩夏は俺たちが住む狭いアパートの居間に姿勢を正して座り、真剣に話を聞いてくれた。

 そして、わずかな葛藤の間を見せた後に微笑む。


「うん、私も治験を受けるのに賛成かな。1年間もお兄ちゃんと離れるのは寂しいけれど、お兄ちゃんの身体がこのままだと心臓とかも悪くなっちゃうだろうし」

「このままだと早死にするのは間違いないよな」

「ちょっと~、冗談でもそんなことは言わない!」


 彩夏は頬を膨らませて俺に抗議の視線を向けた。

 今のは俺が悪かったと反省する。


「――あ! ということは、治療が終わればお兄ちゃんの腫れてない顔が見られるんだね!」

「そうなるな」

「私は別に今のお兄ちゃんも好きだけど、少し楽しみだなぁ。お兄ちゃんの素顔ってどんな感じなんだろうね?」

「想像もつかないな……俺にとっては腫れてる状態が普通なわけだし」

「とんでもないイケメンになったりして~!」

「おいおい、変にハードルを上げるのはやめてくれよ」

「えぇ~、大丈夫だよ! それに、どんな顔でも私はお兄ちゃんが大好きだから心配しないで!」

「あはは、それは心強いな」


 現実は非情である。

 劇的な変化が起こることは間違いないだろうが、俺なんて良くてモブ顔が関の山だろう。


 そんなどうでも良いことはともかく、最後に残った問題について考える。

 両親が居ない俺たちにとっての一番大きな問題だ。


「彩夏は一人になっちゃうから……親戚の誰かの所に行くか?」


 そう言うと、彩夏の表情が分かりやすく曇った。

 俺の前では笑顔を絶やさない彩夏の珍しい表情だ。


「お兄ちゃん、私……お兄ちゃんの悪口を言われたら手が出ちゃうかも。ていうか、多分出る」

「暴力はいかんぞ、暴力は」


 俺の親族は全員俺の事を煙たがっている。

 一方で彩夏のことは全員気に入っているのでお願いすればすんなりと話は通りそうだが……。


 会話の途中、親戚たちは何かしらにかこつけて俺の醜い姿を揶揄するのは想像に難くない。

 彩夏は自分の意思で俺と二人で生活しているのだが、親族たちは俺が彩夏をたぶらかしていると信じて疑っていないからだ。


 まぁ、彩夏も俺が一人になるのが可哀そうだから同情して一緒に居てくれているんだと思うけど……なんてことを言ったらまた彩夏に怒られそうだ。


「それとね……えっと、私の勘違いであって欲しいんだけど……」


 彩夏は言い出しづらそうに眉をひそめる。


「――私、従弟いとこたちにいやらしい目で見られているような……」

「……マジか」


 思わず絶句してしまったが、彩夏は世界一可愛いので可能性のない話ではない。

 彩夏は天真爛漫な性格だけど、そういうところは割と鋭く、電車で痴漢を何人も撃退している。


 そんな話を聞かされたら俺が彩夏を連れ去っているだなんて妄信されるのも納得がいく。


「う~ん、留美るみちゃんだけは良い子なんだけどなぁ……」

「――え?」


 永田留美(ながたるみ)

 ついこの前も実家で暴言を吐かれた母方ははがたの弟の娘である。


「俺、顔を合わすたびにあいつに馬鹿にされるんだけど?」

「あはは、留美るみちゃんってば、まだそんな調子なんだ……」

「確かに、他の親族に比べると悪口はマイルドだけどな」

留美るみちゃん、お兄ちゃんが実家に帰ると良く同じタイミングで居るでしょ? あれ、実は私が留美るみちゃんに教えてあげてるんだ~」


 彩夏は何やらニヤニヤしてそう言った。

 留美るみがタイミングを合わせてわざわざ俺に会いに来ている、その意味を考える。


「もしかして留美るみって――」

「おっ? 気が付きましたか~?」

「そんなに俺に悪口を言いに来たいのか……!? どんだけ俺のことが嫌いなんだ!?」

「ズコー!」


 彩夏は古風なリアクションでズッコケる。


「違うよっ!」

「あっ! じゃあ、俺が作る料理を楽しみにしてるんだ! 実家に帰ったらいつも作ってやってるからな~」

「う~ん、とりあえずはそれでいっか……手料理を食べられるという意味ではそれもあるだろうし。そもそもこんな風に思われてるのも留美るみちゃんの自業自得だしね」

「……?」


 謎が解けない俺を置いてけぼりに、ウンウンと頷きながら彩夏は携帯電話を取り出した。


「じゃあ、今回の治験の件は私から留美るみちゃんに話しておくね」

「まぁ、あいつは別に興味ないだろうけどな~」


 ――翌日、俺は留美に自宅へと呼び出された。


作品をブックマークしてくださった方、評価を入れてくださった方、本当にありがとうございます…!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓のタイトルをクリックすると他作品のページに飛べます↓
連載版始めました!
下のタイトルを押すと読みにいけます!
『【連載開始!】ライブ直前に怪我をしたアイドルの代わりにステージに立ったら、マネージャーの俺の方が大人気になってしまった件』
作品のブックマーク・☆評価お願いします!
<(_ _)>ペコッ
小説家になろう年間1位!
下のタイトルを押すと読みにいけます!
『クラスで陰キャの俺が実は大人気バンドのボーカルな件』
漫画も発売中!

    
新刊!7月25日発売!予約受付中!
『山本君の青春リベンジ!』
  ▼▼▼ 画像をクリックすると、書籍情報に飛びます! ▼▼▼  
表紙絵
  ▲▲▲ 画像をクリックすると、書籍情報に飛びます! ▲▲▲  
新刊!次巻は8月発売!
『【漫画】ギルド追放された雑用係の下剋上~超万能な生活スキルで世界最強~』
  ▼▼▼ 画像をクリックすると、漫画を読めます! ▼▼▼  
表紙絵
  ▲▲▲ 画像をクリックすると、漫画を読めます! ▲▲▲  
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ