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第14話 美少女を返り討ちにした件


 ――お昼休み。


 千絵理がずっと俺のそばにいたおかげで、今朝からここまで一度も不良たちに絡まれることがなかった。


 そして、千絵理は満面の笑みで俺に語りかける。


「流伽! 一緒にお弁当を食べましょう!」

「あ……あぁ」


 引き続き、周囲の刺すような視線を感じながら俺は千絵理に返事をした。


「ここじゃ落ち着かないわね。流伽はいつもどこで食べているのかしら?」

「俺はその……いつもトイレで一人で……あはは」


 いつも不良に隠れてボッチ飯をしている俺は悲しい現実を伝える。


「じゃあ、私も流伽と一緒にお手洗いに行けばいいのね?」

「いやいや! 校舎裏! 校舎裏に行こう!」


 冗談だか本気だか分からない千絵理の言葉を受け流しつつ、俺たちはお弁当の入った包みと水筒を持って校舎裏に向かった。


 到着して、日陰の目立たない位置に俺たちは腰掛ける。

 すると、千絵理は何やら鼻息を荒くして俺に提案した。


「私、一度やってみたいことがあったの!」


 そう言って、千絵理は自分のお弁当の包みを俺に渡してきた。


「流伽、お弁当を交換してみましょう? 私、人のご家庭のお弁当を一度食べてみたかったの!」


 やけに大きなお弁当箱だと思っていたけど、どうやら俺に渡す前提だったらしい。


「別にいいけど……」

「良かった! も、もし私のお弁当が気に入ったら明日から流伽の分も作ってきてあげてもいいわよ?」

「千絵理が作ってきたの?」

「す、()()だけお手伝いさんに手伝ってもらったけどね!」

「実は俺もお弁当はいつも自分で作ってきてるんだ」

「あら、珍しいわね。でも男の手料理って栄養バランスとか味とか心配よね~。私がチェックしてあげるわ!」


 料理には自信があるのだろうか?

 千絵理は得意げに胸を張る。


 俺はヒノキの箱で出来た自分のお弁当箱を千絵理に渡した。

 俺は大食いという訳ではないので、普通のサイズだ。


「……ヒノキ? 随分と良い素材のお弁当箱ね」

「えぇっと、バイト先のオーナーがおせちを作った時の余りの箱をくれて、食材が傷みにくいから使ってるんだ」

「へぇ~、私以外にも流伽のことを気にかけてくださっている方がいるのね! それは嬉しい情報だわ!」


 言葉とは裏腹に、千絵理は何やら複雑そうな心境の表情で俺のお弁当箱を開く。


「……ナニコレ?」


 そんな一言を呟き、お弁当の中身を見て固まってしまった千絵理に俺は説明していった。


「これは、鴨のコンフィだ。こっちは鱈のポワレ。ジュレとパテ・ド・カンパーニュ、その隣が人参のラペ。鶏肉のガランティーヌ」

「?????? げ、芸術品かしら?」

「あと、パテやテリーヌと一緒にこれもどうぞ」


 俺は自分の魔法瓶に入れていたオニオンスープをカップに注いで、切り分けたフランスパンと一緒に渡した。


 俺が作るお弁当はフランス料理が中心だ。

 いつも、バイトが終わると藤咲さんが俺にお店の食材を持たせてくれるから。

 そのおかげでいつも食費が浮いて助かっている。


 盛り付けを綺麗にするのは俺のこだわりだけど、俺と同じお弁当を持って行ってる彩夏はいつも嬉しそうにお弁当を空にしてくれる。


「……イタダキマス」


 千絵理は緊張した面持ちで一口、ジュレを口にすると箸を落とした。

 俺は慌ててキャッチする。


「お、美味しすぎるわ……」

「あはは、そんな大げさな。俺も千絵理のお弁当を頂くね、楽しみだなぁ」


 俺が千絵理のお弁当の包みを開こうとすると、千絵理は慌てて俺の手を掴んだ。


「ま、待って! 開けないで! 私の料理なんてこれに比べたら酷いモノで……や、やっぱりお弁当の交換はなしにしましょう! こんなのいただけないわ!」

「そんな、俺だって千絵理の料理を食べたい」

「ダメ! も、もっと練習するから! 1年! 1年時間を頂戴! 1年後には流伽が食べられる料理を自力で作れるようになるから!」

「長すぎる……それに、俺はどんな料理でも美味しく食べるよ」


 こうして、俺が千絵理の美味しいお弁当をようやく口にできたのは10分ほどこの攻防が続いてからだった。


 千絵理のお弁当は誰が食べても美味しいと感じるような高級食材がふんだんに使われていた。

 だけど、俺が一番美味しいと感じたのは端っこに隠すように入れてあった、やや焦げた不格好な卵焼きだと答えると、千絵理は何やら嬉しそうに俺のお弁当を食べる箸を速めていた。


「そうだ、デザートにクリームブリュレがあるんだけど……」

「――頂くわ!」


 最後には千絵理も大満足で昼食を終えた。


「もしよかったら、明日から千絵理の分のお弁当も作ろうか? 凄く気に入ってくれたみたいだし、俺も作るの好きだし」

「うぅ……こんなはずじゃ……。お願いします」


 千絵理にはとてもお世話になっているので、こんな形でも少しは恩返しできそうで俺は内心ホッとする。


 千絵理は何故か少し涙目になりながらデザートを美味しそうに食べていた。

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