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第124話 尊敬しています


 ――バターン!


「だ、大丈夫で――大丈夫か、涼子!」


「大丈夫だっ! 大丈夫だから、そんなに顔を近づけるな!」


 おでこを打ったらしく、藤咲さんは少し涙目になっていた。

 あまり見られたくない姿だったのだろう、配慮が欠けていたと反省する。


 ――居間に戻ると、藤咲さんのご両親は彩夏と盛り上がっていた。


「そうか! 子供を預かっているとは聞いていたけど君が彼の妹なのか!」


「はい! 涼子さんは、とっても優しくて大好きです!」


「涼子ったら、上手くやっていたのね!」


「お仕事も凄く頑張っていますよ! 涼子さんのお料理は世界一美味しいです!」


 彩夏の持ち前の素直さと愛嬌で藤咲さんのご両親も懐柔されていた。

 良かった……彩夏は1年間の間に人見知りになってしまった訳じゃなくて、俺に冷たいだけだった。

 いや、良くないけど。


「――お待たせしてすみません、改めて……涼子さんとお付き合いさせていただいております。山本流伽と申します」


 俺が頭を下げなおすと、ご両親も慌てて頭を下げた。


「ご丁寧にどうもありがとう」


「涼子ったら彼氏が居るなんて私たちに一言も言わなかったのよ?」


「すみません、実は俺がまだ高校2年生でして。涼子も言い出しづらかったんだと思います」


 俺は上手い言い訳を考えてご両親に説明した。


「こ、高校2年生か……それは確かに若いな」


「そんなの気にすることじゃないわ! あと1、2年で成人じゃない!」


 俺を見てニコニコと笑うご両親。

 先ほどは確実に俺の顔を見てショックを受けたような顔をしていたけど……。


(……なるほど)


 俺は何となく分かった。

 ご両親が藤咲さんに結婚を迫る理由。

 その一つは恐らく、『孫の顔見たさ』である。


 今、彩夏という天使のような妹が俺にいることが分かり、自分たちに懐いてくれそうだったので、『最悪俺でも良いや』くらいにはなっているのかもしれない。


 そんな風に考えていたら、ご両親は座りながら俺に語りかける。


「流伽君、本当にありがとう! 涼子は頑固で大変だろ?」


「可愛げのない娘なのよ~。親の言うことにはいつも反対してばっかりで」


「そうだ、女のクセに料理人の道を極めて経営者になりたいだなんて……。こんな困った娘でも、もらってやってもらえると――」


 ――パン!


 俺は話の途中で自分の両の頬を平手で打ちつけた。

 例えご両親であろうと、藤咲さんへの侮辱は我慢ならない。


 決心した俺はご両親の前に座り、大きく深呼吸をするとお2人の目を真っすぐに見つめた。

 そして、思いの丈をぶちまける。


「俺は……涼子さんを尊敬しています。自分を曲げずに、信念を貫いて料理と向き合う姿を見て、隣に並びたいと思いました」


 ご両親は田舎に住んでいると聞いている。

 もしかしたら、職業観も男性と女性への考え方も古いままなのかもしれない。


「女らしさ、男らしさ。そんなモノは関係ないと思います。男性の保育士や看護師がいても、女性の医者や料理人がいても良いと思います。人の為に尽くしたい、頑張りたい、そんな素敵な気持ちを俺は応援したいんです」


 きっと、明確な敵なんて居ない。

 生きてきた環境があって、その場所で培われた常識や価値観を心に植え付けられる。


 それを相手に押し付けてしまうのは善意や無意識からの行動かもしれない。


 それでも、これだけは言っておきたかった……。


「だから、お父さんお母さん。どうか、涼子の意思を尊重してあげてください」


 そうして、俺は深く頭を下げた。

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