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第105話 日本行きのチケット


 サウスビーデン大学病院。

 その中庭で俺は私服の柏木さんと話をしていた。


 6月にしては気温が上がらず、肌寒いので柏木さんは縦セーターのニットワンピースを着ていた。

 いつもは白衣なので私服姿を見るたびにドキドキしてしまう。


 柏木さんのワンピース姿……これがひとつなぎの財宝の正体なのかもしれない。


 俺は真剣な表情で柏木さんと向き合う。


「――といわけで柏木さん。俺はアメリカの悪の組織に捕まっていて、リベンジャーズのヒーローさんたちに助けてもらったということにするので日本に帰ったら口裏を合わせてくださいね」


 この半年間、俺が日本に居るみんなと連絡が取れなかった理由を考えたので柏木さんに説明していた。

 一緒に帰るので、柏木さんには協力してもらわなければならない。


「そして、悪の組織のマッドドクター、カシワーギによる人体実験を受けて今の姿になりました」


 柏木さんは聞きながら呆れ顔で口を半開きにする。


「……なるほど、それは残念だったな。ほら、実験室に戻るぞ。私の家の地下で一生飼ってやる」


 魅力的過ぎる誘いにどう返事をするか迷っていると、柏木さんは大きなため息を吐いた。


「現実逃避してないでさっさと連絡を取れ。まずは携帯電話に電源を入れろ」


 留置されている間にとっくに充電が切れていた携帯電話を握る。

 ちなみに俺の携帯電話はスマートフォンではない。

 通信料を節約するために、日本に居る時からずっとガラケーである。


「うぅ……彩夏は毎晩俺と電話してたんです。多分、恐ろしい数の着信履歴が溜まってます……」


「なら、なおさら早く声を聞かせてやれ。今年から高校生になったんだろう? 普通はとっくに兄離れしている年齢だ。もしかしたら、忙しくてお前のことなんか忘れてるかもしれん」


「そ、そうですよねっ! きっと俺のことなんて忘れてます! ありがとうございます、勇気が湧いてきました!」


「そんな風に勇気を出すのはどうかと思うが……」


 柏木さんに背中を押してもらった俺は携帯電話を開いて電源を入れる。

 着信履歴は――


「……朝の7時から夜の9時まで2時間ごとに毎日かけてきてます。この半年間」


「……死ぬ気で謝れ」


 彩夏は俺のことを全く、ひと時も忘れていなかった。


 彩夏にだけは隠し事はできないと考えた俺は電話をかけて、これまでの経緯を懇切丁寧に説明して何とか許しを得た。

 犯罪者になったことですら、彩夏は「お兄ちゃんが無事ならそれで良い!」としゃくり上げながら号泣する。


 彩夏が泣きやむまで、俺は「ありがとう」と「入学おめでとうと」と「ごめんなさい」を繰り返す。


 本当に……いっぱい心配をかけてしまった。


「早く日本に帰って顔を見せてやれ」


 柏木さんはそう言うと、明日の日付が入った日本行きの航空機のチケットを懐から2枚取り出して笑った。


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