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第1話 俺はクラスの嫌われ者

新作です。

若年性肥大症じゃくねんせいひだいしょう


 そんな奇病のせいで俺、山本流伽やまもとるかは高校1年生にして体重はなんと130キロを超えていた。


 この病気は水分を吸って脂肪が肥大化する。

 そのせいで俺の顔や手はクリームパンのように膨れあがっていて、道行く人々は俺を見ると怖がって距離をあけるほどだ。

 俺を見て笑っている人やヒソヒソ話をする人。

 勝手に写真や動画を撮ってtiktockなどのサイトで晒し者にする人。

 そのせいか、面識もないのに突然俺に罵詈雑言を浴びせてくる人もいた。


 どうやら、太っていて醜いというのはそれだけで大した罪らしい。


 そんな異物が学校のクラスという閉鎖空間に居たら、入学してすぐにイジメられるのも当然の流れで……


「おい、豚男ぶたお! さっさと走って購買行ってこいよ〜!」

「あっはっは! マジうける!www」

「3分以内に買って来れなかったら金は返さね〜からなぁ!」


 教室の端では今日も当然のように俺はパシリをやらされていた。

 お察しのとおり、豚男ぶたおは俺のあだ名である。

 俺の頭を踏みつけてあざ笑うヤンキーの男子と取り巻きのギャル二人。


 結果は変わらないと知っていても、俺は必死に許しを請う。


「さ、3分なんて……絶対に無理……。誰が走っても5分以上は——」

「うるせー! 特訓だよ特訓! お前、いつも体育のマラソンでドベだからな!」


 当然だ、俺の体重は約130キロ。

 みんなと比べると常に全身に70キロの重りを着けて生活してるようなもの。

 マラソンなんて、何とか最後まで走り切るのがいつも精いっぱい。

 走り切ったらいつも倒れて、保健室にも運べないということで外に放置される。


「特訓だって! リュウちゃんやっさしー! きゃはは!www」

「ほら急げ〜! 早く帰ってこないと授業が始まっちまうぞ〜!」

「太ってるなら転がった方が速いんじゃない〜!www」


 そして、このお使いはいつもわざと授業開始の直前に強制される。

 せめて授業にだけは間に合うよう、俺は必死に身体を揺らして走るのだった。


 ——今回も何とか授業が始まるギリギリの時間に戻ってくることができたが、俺が彼らに支払ってきたお金が戻ってくることはないだろう。


(はぁ、またバイト増やさないとなぁ……)


 呼吸が整わないまま、授業が始まる前に自分の席に座る。


「はぁ……はぁ……」

「ちょっと、豚男ぶたお! 机近づけないでよ!」

「ご、ごめん……でも一応隣の席だから……はぁ……はぁ……」

「しかも、呼吸が荒くてキモいんだけど!」

「ご、ごめん、さっきまで走ってたから……」

「はぁ〜マジで最悪。さっさと席替えしてくんないかな〜。豚男と一番離れてる席がいい〜」

「はぁはぁ……ご、ごめん……」


 隣の席の宮下さんも毎日こんな感じだ。

 いや、誰が隣になっても大体同じような感じ。


 みんな、こんな俺の隣だなんて嫌に決まっている。


        ◇◇◇


(今日もいつも通りの一日だったな……)


 放課後、そんなことを思いながら俺は独りでトボトボと帰宅していた。


 地獄のような毎日だけど、俺にはとても大きな心の支えがある。


「あっ! お〜い!」


 すぐ後方から聞き馴染みのある明るい声が聞こえて、俺は笑顔で振り返った。

 声がした先には思わず目を見張るような美少女が満面の笑みで俺に手を振っている。


 俺の一つ下の妹、中学三年生の山本彩夏やまもとさいかだ。

 その周りには、いかにもスクールカーストが高そうな可愛い女の子たちが3人、一緒に下校していた。


 彩夏は俺なんかとは違って学園の人気者だ。

 俺とは真逆の意味で、街中を歩いているとみんなが思わず振り返る。

 そんな、学園で一番——いや、俺の目から見れば世界で一番の美少女だ。


「さ、彩夏……あれ誰? 知り合いなの?」

「彩夏ちゃん、関わらない方がいいよ〜」

「うげぇ、どうやったらあんなに太れるのよ……」


 彩夏の周りの三人の女の子たちが俺を見て明らかに良くない反応を示していた。


 俺は気を利かせて彩夏とは他人の振りをしようとしたけれど、彩夏は駆け寄って俺の腕を掴んでしまう。


「私のお兄ちゃんです! ということで、今日はお兄ちゃんと一緒に帰りますのでこれにて!」


 彩夏の発言に驚愕の表情を見せた彩夏の友達たちは、急いで笑顔を取り繕う。


「そ、そうだったんだ〜! へぇ〜、彩夏にこんなガッシリしたお兄さんがいたんだね〜!」

「その……と、とても大きくて頼もしそうな方ですね!」

「そ、そうね! 固定資産税がかかりそうなくらい!」


 俺が彩夏の兄だということを知って、三人はなんとか俺を褒める言葉を探す。

 恐らく、さっきの発言を帳消しにしようとするためだ。


 褒められてるのかどうかは正直よく分からなかったけど、三人とも作った笑顔が引きつっていることだけは確かだった。


 しかし、彩夏は軽蔑という感情を知らないかのように無邪気に笑う。


「三人ともありがとう! 自慢のお兄ちゃんなんだ! じゃあ、また明日学校でね〜」


 彩夏はそう言うと、そのまま俺の手を握って一緒に歩きだした。


「学校の人気者、才色兼備さいしょくけんびな彩夏にもこんな弱点があったのね……」

「まぁ、彩夏って少し完璧すぎるしアレくらいでバランス取れてるわよね」

「凄いな〜、私だったらあんなお兄さんが居たら絶対に隠すし、他人の振りしちゃうかも……」


 背後から、そんな会話が聞こえた気がした。


             ◇◇◇


 二人で歩きながら俺は楽しそうに隣を歩く彩夏に呟いた。


「……ごめん、彩夏。俺みたいなブサイクがお兄ちゃんで」


 俺がこう言うと、彩夏がいつも不機嫌になることは分かっていた。

 それでも、俺のせいで彩夏まで馬鹿にされていることを知るとつい口をついて謝ってしまう。


「だ〜か〜ら〜! お兄ちゃんはブサイクじゃないよ! カッコいいもん! 周りの人の言葉なんか気にしないで!」

「あはは、こんなに醜く太っててカッコいいわけないよ」

「見た目の話じゃないよ! お兄ちゃんは凄く優しくって頼りになるって私は知ってるんだから!」


 そして、彩夏はいつも通り一切の疑念も持っていないような瞳で俺を見る。


「お兄ちゃんは私が困った時にいつも助けてくれるし、さりげなく気遣ってくれるし、家の為にバイトも頑張ってるし、勉強だって教えてくれる。良い? お兄ちゃん! 人は見た目じゃなくて心なんだから!」

「彩夏……」


 真っすぐに見つめられて、そんなことを言われると流石に照れ臭くなり、俺はつい彩夏に意地悪を言った。


「そんなこと言って、彩夏はアイドルグループとか大好きじゃん。やっぱりイケメンが好きなんだろ〜?」

「そ、それはそれ! これはこれなのです!」


 彩夏は慌てて誤魔化した。

 そんな必死な表情が面白くて、俺は思わず笑ってしまう。


「あはは、彩夏。俺はカッコいい兄貴にはなれないけど。せめていっぱい勉強して、良い大学に入って、良い仕事に就いて、彩夏の生活だけは何があっても守ってやるからな」

「だ〜か〜ら〜、お兄ちゃんはカッコいいってばぁ〜! というか、私だってお兄ちゃんほどじゃないけど勉強はできるもん! 馬鹿にしないでよねー!」


 彩夏はまたムキになって可愛い小さな頬を膨らませた。


 俺なんかとは明らかに不釣り合いな、天使のような妹が俺の心を癒してくれている。

 だからこそ俺はどんな困難にも耐え忍ぶことができる。


 その後も彩夏と冗談を言い合ったり、他愛のない会話をしながら俺たちは家に帰った。

 お読みいただき、誠にありがとうございます!


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