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勇者の理由-マイナスSTART-  作者: 一ノ元健茶樓
3/4

行くしかない!

 




 光の中で、目を覚ますアールジィ。


「おはようございます。アールジィ君…。自然光で起きるのが1番かと思って、そこに移動させたけど、少し汗ばんだ?」


 そう言いながら少年は、アールジィの服の中に手を入れる。

 アールジィは、驚いて目が覚め起き上がる。

 少年は、驚いて直ぐに手を引いて確かめる。


「汗ばんでる…」


「なっ…?!」


 アールジィは、頬を染めた。

 2人は、近くの滝がある川で汗を流す。


「アールジィ君っ!」


 そう言って少年は、手で水をすくってアールジィにかける。


「う、うわっ!何するんですかクルスさん!?眼鏡外してるんで見えないんですよ。危ないっ…」


 そう言って寄ろけるアールジィを、支えるクルス。


「大丈夫…?」


 そう言って小柄ながらクルスは、アールジィを受け止めた。

 跳ねる水飛沫。自然光による煌めき。

 昨日の事が、嘘のように思える異世界。


 2人は、クルスが採ってくれた山菜や魚で腹を満たす。


「ねぇ、2人の事、気になる?」


「…」


 クルスは、見ていた事とアールジィの行動は、正しかったと言った後に、続けてこう言った。

 その説明もする。


「君は、絶対に魔王の城へと行かないといけない。それは僕らが異世界に来た理由。でも勇者は、君だけなんだ。きっと大丈夫、僕ら異世界転生組が、絶対に君を魔王の元へと行かせ、戦争勃発を食い止めるんだ」


 空を見上げ目を輝かせたクルスは、それが自然の事だと言わんばかりにアールジィを見る。


「それにあの2人だって分かっているよ。それが役目で普通だと。気にする事は無いし、僕もどうなるか」


「クルスは、レベルって分かるの?今、レベ…」


 そう言うアールジィの口に人差し指を当てるクルス。


「僕は、ナイショ主義。それを聞いても状況は変わらないし、変わってもあげられない…。歩こう、あと6日しかない。何が起こるのか…」


 そう行って2人は、森を歩いて行く。

 その先に人影が見える。

 2人だ。

 アールジィは、もしやと思って2人に声をかける。


「エメラルド!ライティ・ワイズ!」


 振り向いた2人は、全く知らない人物だった。


「え?あ!勇者ですね!?」


「行きましょう!そちらは?」


 2人の女性は、にこやかにアールジィを受け入れ、クルスには不思議な顔をする。


「私は、マチス。聖戦士です!」


 白い鎧に、高そうな剣。

 短い髪に聡明な顔。


「私は、トーニ。暗黒騎士?とかいうやつですよ?そちらのお子さんは?」


 黒い鎧に、禍々しい剣。

 長めの髪に優しそうな顔。


「僕はクルス。盗賊です…」


 身軽そうな格好に、短剣。

 髪は、耳まで無表情に近い。


 勇者は、パーティを組む。


「ごはんは済んだの?まだだったら少し材料があるから作るけど…」


「勇者!私はあまりトーニの料理は、オススメしませんが!腹は減っても戦は出来る!さぁ!食べましょう!」


「もぉ~!マチス!また私をバカにして!ことわざも間違えてる!」


 2人は、呆気に取られ、さっき食事した事を伝える。

 しかし少し作戦会議をする為に、お茶の時間を設けた。


「言っても魔王の城まで直通なら3日。しっかりと作戦をたてて、あの2人みたいな事は避けたい…」


 それを聞いたマチスは、立ち上がり叫ぶ。


「クルス殿!その様な言い方は良くないのでは!?」


「マチス落ち着いて!私も、そう思わなくはないけど~?」


 アールジィは、その時まで皆が2人を気遣ってくれるものと思っていた。


「あっ、あの…皆さん!あの2人は、僕を助ける為に!」


 立ち上がった勇者アールジィは、2人との少ない思い出や出来事、どう思っていたか、そして告白の事を話した。


 他の3人は、笑っていた。


 トーニは言う。


「それはそうである!吾輩も勇者に告白をする!聖騎士なんてなりたくなかった!」


「それは私も同じ…暗黒騎士なんて…」


「僕だったら、変わってあげたいと言って勇者を慰めます。2人ともおかしいですよ?」


 アールジィは、それを聞いて黙り。

 足は、彼らと反対の方向へと歩き出していた。


 マチス、トーニ、クルスの3人は、笑ってその場に居る。


「お茶は~?!」


 トーニが、叫ぶ。


「ほっとこう!彼は勇者だぞ!あはは!」


 マチスは、立ち上がり笑っていた。


「待ってくださいよ!勇者君!」


 クルスは、アールジィの後を追う。

 アールジィは、怒りを隠せず木にあたる。


「ねぇ、アールジィ君、あの2人はダメだよ。分かる、僕と2人で行こう」


 それを無視しアールジィは、森へと消える。

 手を伸ばすもクルスは、その場から離れた。


(何でだ!?何で!何で!僕は勇者なんだ!何をすれば良いかもレベルも勇者なんかじゃないのに!何で!)


 1人、森の中を行く勇者アールジィ。

 森の切れ目まで来ていた。

 昨日の事が、思い出される。


「エメラルド…ライティ・ワイズ…」


 すると森の後ろから音が聞こえる。

 その音は、木をなぎ倒し轟音へと変わる。

 その中に爆音轟く鳴き声が、聞こえる。


 ドラゴンだった。

 皮膚は紅く真紅。

 目は鋭く自我が有るとは思えない。

 ただアールジィを目掛けて、木々をなぎ倒し向かって来る。


(僕は、またっ!)


 システム画面を開きながら走って逃げるアールジィ。


(勇者なんだ!皆があれだけ言うんだ!何かある!レベルマイナス777だとしてもっ!絶対に。クソッ、スキル画面何ページあるんだっ!使えないスキルばかり!レベルはどうやった…ら…)


 レベルの表示に目をやると、レベルがマイナス777から775になっていた。


(何で?…っ!?)


 そう思って能力画面を開く。


(…コレだ!)


 そう思った時だった。

 ドラゴンの火球が、木々を燃やし溶かしアールジィへと向かう。


「アークイージスッ!」


「エターナルダークッ!」


 聖騎士マチスと暗黒騎士トーニだった。

 2人は、火球とアールジィの間に入り、火球を防ぎ、真紅のドラゴンへ漆黒の稲妻を放ち、ドラゴンを倒した。


 クルスは、後からやって来てアールジィへと抱きつく。


「大丈夫ですか?!アールジィ君!」


 マチスは、アールジィの肩へと手を置く。


「この程度で死なれては困る」


 トーニは、その剣を腰へと納めアールジィへと微笑む。


「んもう、ホントおっちょこちょいなんだから~」


 3人に囲まれ助けられたアールジィは、安堵と同時に感謝する気持ちを持てずにいた。


「あ、ありがとうございます…」


 ただ口から出た言葉は、感謝の言葉だった。


「何か見てる?」


 トーニは、その目を特殊に光らせアールジィの手元を見る。


「システムか。あ!レベル上がってるんだ!凄い凄いっ!マイナス、768?」


 それを聞いてアールジィは、驚いてレベル表示を見る。


 -768


 そして3人を見る。


(コイツらが、ドラゴンを倒したから上がったのか?それならもっと魔物を倒してもらえれば、僕のレベルは…)


「皆、僕は勇者なんだ。死ぬわけには行かないし、助けて欲しい。魔王の城まで連れて行ってくれる?魔王の将軍が、また来るかもしれない、僕は戦力にならないかも知れない、でも前は2人。今回は…3人だ。それに強い。きっと大丈夫だと思う…」


 アールジィは、笑っていた。

 3人は、笑って受け入れてくれた。

 当たり前という風に。

 それが普通だと言って。


 魔物の群れを簡単に討伐して行く聖騎士と暗黒騎士、そして盗賊のクルスでさえ強かった。


 4人は、街へと来ていた。

 街は、ブルーバード。

 幸せの青い鳥の話を、思い出していた時だった。


 宿屋。


 1人で居たアールジィの部屋の扉を叩く。

 暗黒騎士トーニの声だった。


「アールジィちゃん~、少し良いかしら?2人は、街へと行ったの…」


 アールジィは、部屋の戸を開けた。

 ベッドへ腰掛けるアールジィ。

 椅子に座るトーニ。


「アールジィちゃんは、何処から来たの?私は日本よ…」


「え?」


 驚いて目を合わせていなかったトーニを見る。


「私とマチスは、双子なの。マチスは妹よ。ある日、ふと気付くと此処に居たの。来てから、そうねぇ~2ヶ月位かな?あなたは?」


「僕は、まだ2日目の夜です…」


「そっかァ、それじゃ何も分からないわね~、この世界の酷さや醜さも~」


 トーニは、その目を下にやるとアールジィから目線は、外された。


「きっと貴方は、恵まれているわ。だって勇者で、目的は魔王の城に行く事。私達は、いつ来るか分からない勇者を待って、ずっと此処で暮らしていた…。来てくれて良かった~」


「そっ…そんな、そうですか…」


 今度はアールジィが、目を下に落とす。

 エメラルドやライティ・ワイズも同じ想いだったのかと思いながら。


「おーい!トーニ何処だー!」


「あ!マチスが帰って来たみたい~。行くわね、ゆっくり休んでて…」


 そう言ってアールジィの手を取る。

 その目は、透き通り綺麗だった。

 アールジィの部屋に、トーニと入れ替わってクルスが来る。


「アールジィ君!明日、この街に魔王軍の将軍2人が攻めて来るらしいです。僕達は歓迎されて王様にも会えました!僕が王様だったら喜んで踊ってましたよ!1人で舞踏会の様にね」


 そう言いながらアールジィの胸へと飛び込むクルス。


「心配ですね…あんな話を聞いちゃうと。今日は、アールジィ君と一緒に寝ようかな?」


 クルスの顔とエメラルドの顔が重なる。

 全く似てない容姿に、何故そう思ったのか分からないアールジィを押し倒し、ベットへと沈む2人。


「あ!あのっ、僕、1人じゃないと寝れないんでっ…」


「知っていましたよ!アールジィ君。僕は、君が好きですよ、だから明日も逃げてくださいね…」


 そう言って身軽に身体を起こして、扉から出て行くクルス。

 その最後の笑顔は、可愛かった。


 その夜アールジィは、眠れずに街を歩く。

 明日の戦いに準備する者、そして酒を飲み、それを忘れようとする者。

 愛し合う者、喧嘩する者、街は騒がしかった。

 何かの祭りかと思う程に。


「勇者!あなたも夜が騒がしく、この興奮が分かる同志!明日の決戦、吾輩は勇者を絶対に守る!トーニも、クルスもこの街も!」


 その叫んで近付くマチスにアールジィの笑顔は、引き攣る。

 肩に手を置かれ、街には花火が上がる。


 突然の事に驚くマチスとアールジィ。


「あの花火を吾輩は、日本で見たかった。トーニと一緒に。浴衣を着て、食べないリンゴ飴を片手に…。お姉ちゃんは、少しおっちょこちょいで甘えただから、妹の私がしっかりしなきゃって…」


 アールジィは、マチスを見て固まった。


「…わ?!吾輩ったら!?き、聞かなかった事にして下さいっな!また明日!」


 そう叫んで人混みへと消えて行く。


(あと5日。それまでに絶対、魔王の城へと行く…皆の為にも…っ!)


 アールジィの後ろの空には、色鮮やかな花火が、綺麗な音と共に上がって行っては、花を開かせ消えて行っていた。




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