第1話.えぇ…(引)
異世界ブームまだまだ続きそうなので、自分も異世界物に挑戦してみました。
ギャグたっぷりシリアス少なめで展開していくつもりです。
是非とも鼻で笑ってください!
「あぁ… 天使様…」
今の状況を端的に説明しよう。
異世界転生したら天使になっていて、森をさまよっていたら、一行が山賊に襲われていたので助けてみた。
山賊を追っ払った後に、女性が怪我をしていたので治癒魔法をかけたらなんか崇められたって感じだ。
しがない会社員だった俺が異世界転生…
森で目が覚めた時は、死ぬほど動揺やら困惑やらしたが、姿が変わってること、現実ではありえないモンスターがいることで、ここが異世界だってようやく理解出来た。
死ぬほど喜んだ。死ぬほど焦ったり困惑したり喜んだりと忙しいが超絶嬉しかった。
夢溢れる異世界に来たのだ!
男が異世界転生したらやることはひとつだ! そうだろう!?
俺は大いなる野望を叶えるため、この異世界人生を歩み出した。
そして今、野望の第一歩が叶おうとしている。
「助けてくださってありがとうございます! 天使様! この御恩は一生忘れません!」
周りのモブ共(治癒済み)はまだ目覚めてはいない!
目の前には服も身分もお高そうな美女!
山賊から助けだし、怪我を治療して、美女は俺に手を合わせ拝んでいる!
フラグはビンビンに立っているはずだ!!
いける…いけるぞ!!
俺は前世では縁のなかった選ばれたものしか扱えない奥義を試みる。
「天使様が助けてくださったこの命、決して無駄にはしません! これからは毎日お祈りをして、教会にももっと寄付金を払って、それから――」
「ああ、お祈りの寄付も大事だよ。けど、今はそれよりももっと大事がことがあるんだ…」
「えっ… 大事なこと…ですか?」
美女は目を輝かせて俺を見つめる。
その頬には、ほんのり赤みがかかっている…気がする。
気づかれないようにそっと深呼吸をして、爽やかイケメンの爽やか笑顔をリスペクトして、前世で必死に1人で練習してきたが結局、誰にもお披露目はしなかった超絶イケボ(自称)で、目の前の美女に問う。
「俺のハーレムに入らないか?」
前世と今世合わせて初めての渾身の告白をした。
ここで少しだけ想像してみてほしい。この後の告白に対しての女性の反応を。
普通なら、助けた時点で惚れるのがセオリーだ。騎士とか吟遊詩人など定番どころじゃなくても、ボロボロの服を着たニートが同じ行動をしても、この場面ではかっこよく見えるだろう。
ただ、今回は背中に淡い光を放っている大きな翼を生やし、白い司祭のような服に身を包んだ、まさに神の御使いと言わんばかりの男だ。
女性からしたら、助けてくれた神様が勢いで告白してきたようなものだ。
少し分かりにくいだろうから、現代で例えるなら、熱血教師がヤンキーに襲われた不良女子高生を助けた後、不良女子高生が尊敬の念を抱いている中「お前のことが好きだァァァ!!!」と、愛を伝えるようなものだ。
或いは、中年のおっさんが新人OLのミスを庇って上司からOLを助け、OLに「可愛い部下を守るのは上司の役目だろ?」と、キメて、OLが尊敬の眼差しを向けている中、「この後、時間ある? 2人で飲まないか?」と、飲みに誘う事と似たようなものだろう。
これらの行いに対しての女性の反応はみな、類似的なものだろう。
美女は声にならない声で、一言呟いた。
「えぇ…(引)」
美女の恍惚とした表情は途端に変容した。
顔を引きつらせ、眉間に皺を寄せ、先刻まで輝かせていた目は見る影もなく、まるで珍獣を見るかの如く、曇った眼差しを目の前の天使もどきに向けていた。
男の2度の人生に渡る初告白の結果は、YESでもNOでもなく、ただ引かれただけだった。
できるだけ速いペースで更新していく予定です。
ただ、ネタ切れしたり、仕事が忙しくなったら更新止まります。
その時は、気長に待っていただけたら幸いです。