78. 一筋の光
元の生活へ戻ったのは良いけど、お屋敷の中で飾られてるだけな様で、退屈な日々を過ごしてた。わたくしの冤罪は街の人々まで周知されてるわけではなく、中には腫れ物に触るような態度で接してくる人も居るから、お外へ出る気もしない。
ふと、島のことが頭をよぎる。罪人だったけど自由で楽しかった。やりたいことに熱中した毎日だった。できることなら、また皆んなと過ごしたい……。
そんなことばかり考えていた。
「お姉様、如何しました?」
「あら、アルフィー。おかえりなさい」
唯一の救いは我が弟が、ジェラール様に取り立てて頂いたこと。彼を通じて殿下と繋がってる気がするのだ。
「只今、帰りました。お姉様、今日もお部屋で読書ですか?」
「……ええ、特にすることもなく」
公爵家ではパン作りや畑、家畜の世話など、勿論できない。というかする必要がない。侍女や使用人は沢山居るけど、態々そんな手間のかかることをしなくても、幾らでも高級品が手に入るからだ。
「殿下が気にされてましたよ。どう過ごされているのか?ってね」
「……そう。お気にかけて頂くなんて嬉しいわ」
「会って話がしたいと仰っていました」
「でも、お忙しいのでは?」
「そうですね。今はかなり」
王太子に即位したばかりだ。それにルーク様だって色々改革を進めており、ジェラール様が指揮を執ってると聞いた。忙しいのは想像がつく。できることなら、わたくしも手伝ってあげたいけど。
このお屋敷でただ一人、ポツンと虚しい日常を送るのは、置いてけぼりにされた様でとても寂しい。
「お嬢様、来客です」
「え?わたくしに?」
「女性の方ですが、島から来たと。お名前は……」
使用人のエミリーに呼ばれた時、「島っ!?」と、叫んでしまった。この退屈な毎日に一筋の光が差し込んできたのだ。
「誰、誰っ!?」
エミリーの話を最後まで聞かず、走ってエントランスへ向かう。
「あっ!?」
「お元気でしたか、アニエス様?」
「ベルティーユ!?どうして???」
宮廷で別れたはずの彼女が目の前に居るなんて、まるで幻に見えた。
「はい。実は殿下に呼ばれたのです。一月ほどお仕事を手伝うことになりまして……」
「そうなんだ!一月も?わー、何か嬉しいよう!」
嬉しさ半分、殿下の側で働くなんて羨ましいと思った。これは詳しく聞きたい。それに僅か半月足らずだけど、積もる話もあるのだ。
ところが、ベルティーユはわたくしの予想を遥かに超えた話を切り出した。
「アニエス様、公爵令嬢に申し上げるのは気が引けますけど、もし宜しかったら一緒にお仕事しませんか?」
えっ!?
驚いた。でも直ぐに心が踊る。
な、何て素敵な提案なの!?
「す、するっ!しますとも!」
「うふふ……内容はお聞きにならないのかしら?」
内容などどうでもよろしい。この退屈な日々から抜け出せるのなら……彼女となら……何でも!
わたくしは詳しく聞く前に即答した。




