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48. さらに難題

 ※ ジェラール視点


「殿下、ご報告に……あれ?顔色悪いですねえ」


 バルナバか……。お前はいつも能天気で明るいな。羨ましいよ。いや、彼を非議するのは間違ってるか。


「ちょっと考えごとしてたからな」

「薄唇殿のことですか?」

「ああ、まあ色々ある。が、心配には及ばない」

「そうですか。では、全く気にせず報告しますね」


 こ、こいつは冷たいな。私が今、どれだけ悩んでると思ってるんだ。……だが、彼に何かを求めるのも筋違いだ。ここは冷静になろう。


「施薬院のことか?」

「はい。いよいよ建設が始まりました。完成は一ヶ月後です。皆んな楽しみにしてますよー!」


 満面の笑顔を見せるバルナバに、ついつられて笑顔になってしまった。


「うむ、それは明るい話題だな」

「はい!後は殿下がアニエス様と面談すれば、()()()()ですね!」


 いつものどさくさな発言はスルーしよう。うっかり返事しそうになったが。いや、待てよ……。




 私は昨日の出来事を思い出していた。監獄の帰りのことだ。自信満々のブリスから、さらに厄介な話を持ちかけられたのだ。


「それはそうと殿下、別件でお話しが……」


 お前、まだ何かあるのか!早く一人になりたいのにい!


 うんざりした気分を抑え、そのまま彼を執務室へ招いた。


「今度は王太子からの難題でしてね」

「兄が?」

「全く、困った御方ですよ。俺も月一回の報告が嫌になりました」

「で、どんな難題なのだ?」

「アニエスのことです。殿下にお任せしたくて……」


 アニエスのことだと?これは嫌な予感しかしない。


「王太子はカリーヌ嬢に嫌気がさして、俺にどうにかしろとお命じになられましてね。いやあ、面倒くさいったらありゃしない」

「カリーヌの教育が上手くいかないからか?」

「その様です。いや、それだけじゃない。彼女の性格、態度全てが嫌いになられたのだと思います」


 はあ……全く、困った兄だ。今更だろう。


「……で?」

「はい。カリーヌ嬢を王都から追放して、アニエスを呼び戻す様にと」

「な、な、何だと!?」


 私はルーク様のことが、すっ飛んでしまうくらい衝撃的な発言に驚きを隠せない。


「あ、兄は彼女を呼び戻してどうするつもりか?」

「はい。もう一度、婚約をするおつもりです。それが条件で恩赦するとね」


 し、信じられない。こんな馬鹿な話があるか!兄はどれだけ自分勝手なんだ!


「この話、俺からの言うのもアレだし……殿下は面談されるのでしょう?()()()()上手く伝えて貰えませんか?」


 ()()()()って!そんな軽い話じゃない。


「因みにアニエスは拒否出来るのか?」

「まあ出来ないでしょうねえ。彼女も戻りたくもないでしょうから、厄介な話なんですよ」


 くそっ、アニエスは絶対渡したくない。断固として反対する。だがそれは兄、王太子への反逆とも捉えられる。


 私はさらに難題を突きつけられ正気を失いかける。気づけば、一人ぽつんと執務室から牧場の方角を眺めていた。




「……殿下?……殿下?」


 心配そうにバルナバが顔を覗き込んでいる。暫く自分の世界に浸っていたのだ。


「うむ、バルナバ……」

「はい」


 私は領主として、ことの真相を明らかにして正義を通さなければならない。──そう決意した。


「アニエスと面談する。明日だ!」


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