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45. 使者

 ※ジェラール視点


「では、参りましょう」


 カツン、コツンと監獄の地下を、ビソン及び国王陛下の使者に命じられたブリスと共に歩く。だが、彼は緊張感がまるでない。礼服を貸し出そうとしたが「窮屈だから嫌だ!」と、いつもの格好のままだ。しかもアニエスから貰ったセーターを制服から覗かしている。全く気に食わない。


 いや、今はそんなことどうでもよい。こいつ、何を企んでいる?事前のボディチェックでは武器は見当たらなかった。まさか、素手で始末しようとしてるのか?我々は扉のすぐ側に居るんだ。少しでもそんな気配があればビソンや警備隊が突入して、たちまち命を奪うだろう。ブリスもそれくらい想定してるはず。それに彼は命懸けの暗殺をするほど忠誠心がある様には思えない。


「おや、お二人とも深刻そうですな」


 余裕しゃくしゃくのブリスに腹が立つ。『お前が陛下の使者だから我慢してるんだ!』と、怒鳴ってやりたい。そんな気持ちを抑えていると、彼からとんでもない提案を受けた。


「ご心配なら、お二人ともご一緒に如何ですか?」

「……は?」


 な、何を言い出すんだ?こいつは?


 思わずビソンと顔を見合わせる。彼の真意が分からない。


「陛下は二人だけだと仰っているが?」

「ええ、そうですが。まあ、黙ってれば問題ありませんよ」

「い、いや、しかし……」

「俺が心配なんでしょう?」


 私が返答に困っていたらビソンが平然と口にした。


「心配ですね。だけど、いくら貴方でも此処で暗殺するとは思えない。せいぜいどうやって殺すのか見極めるのが目的なのでは?」

「ふん、流石はビソン次官だ。だが、言っておくが俺にそんな気はない」


 ブリスは微笑している。これは罠かもしれない。私は動揺を隠しつつ、冷静に問いかけた。


「ブリス監視官、貴方は何を考えてるんだ?」

「俺は……そうですね。お二人に同席して貰って陛下から下された命令について、ご相談したいのですよ」

「……つまり、陛下を裏切ると?」

「まあ、そんなとこです。二重スパイだと思って貰って結構です」


 そんなこと言われても、全く信用出来ないだろう。


 私は答えを見つけられないまま、カツン、コツンと無言で歩く。そして特別室の前で立ち止まった。目の前には執事が待ち構えている。


「殿下、彼の真意はさておき、せっかくのお誘いなので同席しましょう」

「う……うむ、そう……だな」


 凄く厄介なことに巻き込まれた心境だった。だが、この運命からは逃れられないだろう。私は「陛下の命に背く」という選択をしてしまった。ブリスはこれっぽっちも信用出来ないが、もう腹を括るしかない。


 警備隊と執事を扉の前で待機させ、我々はあの御方に拝謁すべく三重の扉を開けた。


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