表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/3

TALK 1.めぐりあい

 夕暮れがた、赤提灯に火が入る。

 年若いサラリーマンの男性がネクタイを緩め、黒ずんだ一枚板のカウンタで一合徳利を傾けていると、奥の身なりの好いご老人が会釈なさった。

 とても感じのいい方。

 サラリーマン男性は相手の御顔を見て、すぐにハッとした。

 滅多にない事と、ためらいつつ声を掛ける。



「あのう、はじめまして。まさかこんなところでお会いできるとは……」


『こちらこそはじめまして。もっとも、私がこういう場所でこんな形で人に会う時、みなさんもれなく初めてですがね』


「お元気そうで。前にテレビで御尊顔は……」


『はいはい、そりゃどうも。そっちはこっちの顔を知ってるだろうけど、こっちは何にも知らないから、そこのところは汲んで欲しいですね。表を歩いてて、ふとみんなに知られていると思うと、気味悪くなることがあるのよ』


「あ、失礼しました。ほんと、すみません」


『いいよいいよ。慣れているから』


「あのう……長いことご苦労様でした」


『でたそれ。みんな言ってくれる。ほんとに良い国だよ。でもそれ本心?』


「え?」


『今やネットとかあるから、こう見えて、いろいろ知ってますよ。みんな結構、いろんなことのたまってるじゃない。いらないとか、やしなってるとか。一時期はひどかったんだから――最近そうでもないけど』


「と、とんでもない。ぼくは思ってませんよそんなこと」


『ちょっと想像してみてくださいよ。こっちは生まれてこの方、しきたりを受けれいて、まっとうに、正直にやってんですよ。それなのに選挙権もないし、職業選択の自由もない。これじゃまるで服役だ。前にちょっと銀座ブラブラしただけで、いまだに言われる』


「それはおつらい」


『可哀想といえば、いま、孫娘が』


「やや、その話は。大変失礼ですが、このトック――御神酒を」


『御神酒! そう来たか! あは、気が利いてるね。こちとら親父の代までアラヒ――おいおい、あなた、お手酌はいけませんよ。ちょっと貸しなさい』


「わわわわもったいないことです」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ