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⑴『思考についての、一考察』
⑴『思考についての、一考察』
㈠
人間は思考する。思考しなければ、人間は沈黙し、停滞するだろう。それでも、どうにか毎日を乗り切って、生きて行く。昔、どこかで考えた気がするが、本当に賢い人は、書物から才能を借りる、と言った様な記憶があった。別段気にも留めていなかったが、今になって、急に気になりだした。
㈡
思考が、長年の人生を経て、疲弊し始めたら、後は書物の才能を必要とするかもしれない。これは、誠に正確な実践であって、思考は、歳を取るごとに、暗雲の中に閉じ込められ、何なら心まで、どこか所在ないものになってしまう。それでも、生きて行くのは、人間の生の証だろう。
㈢
思考について考察したくなったのは、今まで、割と連作の評論めいた文章は、非現実の世界のことが多かった様に思うからだ。今度は、現実に対処する時に、思考はどの様に役立っているか、ということが、随分必要性を増してきたと、自己と人生を照らし合わせて、そうとも思っているからである。