紙の剣
いつものように目覚ましの音であなたは起き上がり。
朝食はノドを通らないけどコーヒーくらいは飲んでいこうと湯を沸かしていると。
電波の弓矢が飛んできてケータイデンワを鳴らし。
「早くこい」と突然言われて。
火を止めて顔を洗って。
歯だけは磨いてスーツへ着替えて。
あなたは住み処から飛び出しました。
車を飛ばしてそこまで辿り着くと。
たくさんの人の声と電波の弓矢が飛び交っていて。
紙の剣があっちこっちで振り回されて。
あの人を突いてあの人を戦わせて。
まるで殺し合っているみたいだなぁとあなたは思います。
あなたも兵士の一人となって。
電波の弓矢を飛ばしたり、盾持って弓矢を受け止めたり。
時には紙の剣で誰かをやっつけたり。
やっと戦いに区切りがついて。
今日も一日を共に生き残った戦友たちが。
お酒でも飲みに行こうかとあなたを誘いますが。
お酒があまり強くないあなたは。
控えめに誘いを断って。
家に帰って。
質素な食事を流し込み。
なにかしようかと考えるけれど。
体が疲れていてねむたかったから。
なにかするのは明日にしようと。
すぐにベッドに入り込み。
紙の剣がずいぶん積み上がっていた気がするけれど。
税金だとかお家賃だとかで崩されていて。
実はそれほどでもなく。
大きな使い方をできるほどではなくて。
それよりも。
戦いの緊張と。
剣と弓矢が近くを通るときの恐怖で。
心の削れていくのに気づかないで。
耳の奥でケータイデンワが鳴っている気がしながら。
あなたは今日もねむりに落ちました。