7話:町に入りたいんだが…。
俺たちはあれから1時間ほど歩き、森を抜けた。まだ1キロほど草原が広がっている。
森は少し高台にあるようで、城壁に囲まれたその町も全体を見渡すことができた。まぁ、距離的には屋根しか見えないが、1つだけ、ずば抜けて高い塔が町の真ん中に建っていた。
「行こうか。」
立ち止まっていた足を動かす。
セレナもさすがに疲労しているようだが、日が暮れてしまったら危ない。とはいっても、空には雲が隙間なく流れているので時間が分からない。だからこそ先を急ぐ。
「なぁ、その角はまずいんじゃないか? これから人間の町にいくんだぞ?」
「あ…えっと、確かにそうですね。 ちょっと待ってください。」
なにをするのかと思ったら、気づいた時には角はなくなっていた。
「え!? 何をしたんだ!?」
「それはですね、角を引っ込めた…とでも言っておきましょうか。」
なるほど、便利なものだなと感心する。
しかし、角がなくなれば人間とそう変わりはない。ひと安心だ。
やがて俺たちは、城壁を目前にするまでに近づいた。城壁は石でできており、登るのはもちろん無理だが、厚みがあり、壊すのも無理そうだ。
城壁に沿って歩き、門のようなところまで来た。
鎧を身につけた兵が2人、門の前に立っている。
「ちょっと、ここで待っててください。」
セレナは躊躇することなく門番に近づいて行った。おそらく、何度か来ているのだろう。魔王の娘とはいえ、あんな森の真ん中でどう生活しているのだろうとは思っていたが、おそらく森で手に入らないモノはこの町で調達しているのだろう。
セレナは門番と何か話しているが、内容までは分からない。やがて、門番はこちらを指さした。セレナもこちらを振り返り、俺を見ている。
セレナが俺に手招きしているので門番のもとに向かう。
俺が隣まで行くと、セレナは門番の方へ向き直り、話し始めた。
「この人は、アレン=フレイム。私の夫です。」
―――ええぇぇぇぇぇぇ!?
セレナの発言にアレンは…。