5話:魔王を名乗る女は未だに俺の足にしがみついているんだが…。
ズサー…ズサー…
「おい、いつまでしがみついてるんだ!
いい加減離せよ!」
「イヤです。私はあなたが隠している事を全て話すまで離れません。」
「……。」
これは困った。俺は自称魔王の言う、人のいるであろう町の方角を教えて貰ったのでその方へ向かっている。かれこれ30分。
足にしがみつく自称魔王を引きずりながら…。
しかし、隠していると言われても事実を否定されてはどうしようもない。
……ちょっと休憩したいので立ち止まった。
「なんでそんなに、魔物を従わせたいんだ?
そもそも、魔王なら魔物に命令とかするのが仕事じゃないのか?」
「うっ……。」
自称魔王はまだ、地面に突っ伏したままである。
「そ、それは…」
自称魔王は身体を起こしてちょこんと座った。もちろん、俺の足をつかんだまま。
「私だってホントは、もっと大きな城に住んでたし、魔物たちとも仲良くしていたんです。」
「魔王…私の父が殺されるまでは…。」
自称魔王は下を向いたまま教えてくれた。
しかし、自称魔王の言っていることが本当なら、魔王はすでに倒されている。そして、その娘の自称魔王も今では魔王としてのチカラはない。
ならば、あの神が言っていた『魔王』とは一体なんなのか……。
「分かった、君を信じることにするよ。だから、だから手を離してくれないか…。」
魔王を名乗った女は目を丸くして、俺を見つめる。
「俺の言ったことが信用できないなら、ついてきても構わない。」
魔王は口を開きかけたが、何も言葉を発することなく、額を俺の太ももにあてた。
…お尻に刺さる角が痛い。
「……絶対秘密を暴いてみせますから。」
「私の…私の名前はセレナ、セレナ=フレイム」
「俺の名前は……! 俺の名前?」
「俺の名前、俺の名前、俺の名前は………」
――――――!!
思い…出せない………!?
物語が動きだしました!
これからに期待です!