パスタ
パスタは
どこに行ったって逃げやしない
ミートソースとか
カルボナーラとか
そんなものを身に纏って
湯気を立てて
目の前で
お皿の上で
静かに待っている
さっきまで
冷凍庫の中で
ぶるぶる凍えていたことなんて
もう忘れたんだろうって
しれっとして
アツアツで
待ってる
できることといえば
フォークに刺されて
ぶるっと
身もだえして
滑るように
イヤイヤしながら
お皿の上に戻るくらいで
逃げ去るのは
パスタが纏ったふりしてた
熱とか
匂いとかそんな
パスタじゃないものばかり
アツアツなパスタなんて
誰も食べやしないし
冷めたパスタだって
誰も食べやしない
逃げ去っていく残り香を
名残惜しそうに啜る
逃げそびれたパスタを
ミートソースを
カルボナーラを
啜る
オシャレしてるんじゃないよ
はねるなよ
逃げようなんて思うなよ
パスタのくせに
ありがとうございました。