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VR時代の新しい空想  作者: 廃界幻夢
「Dr-1」との出会い
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「Dr-1」との出会い-3 キャラクター制作、カディナとの再開

「これから、キャラクター作成モードを開始します。キャラクターは貴方の物語をとても豊かにしてくれる存在です。大切に設定しましょう」


 再び目の前に画面が現れた。キャラクターの全身を確認できるような空白が画面左にあり、右には名前、性別、身長、体重、好きなもの、嫌いなもの等の記入欄がある。さながらアイドルの様だ。


 とりあえず、外見が出来ない事には何も設定出来ない。僕は左の空白をタッチした。


 「外見のインポートは、モデルのインポート、脳内スキャンの2つが選択出来ます。どちらかを選んでください」


 「Dr-1」の凄い所は、絵心の無いような男でも、理想の人物を具現化できると言う所だ。絵心が全く無い僕は迷わず、「脳内スキャン」のボタンをタッチした。


「これより、脳内スキャンを行います。頭の中にキャラクターを思い浮かべてください」


 そう問われて、僕が真っ先に思い浮かべる人物。そんなの一人しかいない。


 カディナ、僕の事をいつも励ましてくれた女性だ。彼女は、僕が勉強をしている時も、人に怒られている時でも、空想世界で大冒険を繰り広げたり、静かに過ごしている時でも一緒にいてくれた。言わば僕のイマジナリーフレンドなのだ。


 とても優しく、おっとりとした雰囲気なのに意外に活発な所もあって、僕が振り回される事もあった。薬屋を営んでいた僕に冒険の話を持ちかけたのは彼女なのだ。重い腰を上げて行った町外れの洞窟。そこで彼女と僕は大冒険を繰り広げて、終いには宝を持って帰る事が出来たのだ。


 僕はカディナの容姿を思い浮かべる。金色の綺麗なロングヘア、平均より少し低い程度の僕と同じ位の身長。目は茶色でくりくりした可愛らしい目。とても可愛らしい少女なのだ。


「スキャンが完了しました」

 何回も何回も思い浮かべた愛しの彼女だ。すぐ姿形を思い浮かべる事が出来る。


 目の前に青い光が浮かぶ。地面から天に向かって伸びていた。そして、光が弱まる。人の姿が徐々に見えてきた。


 「カディナ…」


 ようやく肉眼で見えた彼女。その姿は頭の中で思い浮かべていた彼女そのものだった。長らく脳内にしか存在しなかった彼女が、今、この瞬間、僕と対面しているのだ。


 今まで、「カディナが今ここに居てくれたらな」と思うことは山ほどあった。彼女の姿や声を知っているのに、対面したことが無いと言うのは中々辛い物があった。そんな彼女が近くにいるのだ。


 僕は恐る恐るカディナの手に触れる。それは確かに手だった。質感は正しく手だ。さらさらした手触りで、触れてて心地がいい。まさしく、それはカディナの手だった。


 暫く手を触っていると、視線に気づく。カディナが冷たい目で僕を見ていた。気まずい…


「あっと、えっと」


 動揺する僕を見ていたカディナ。また静かな時間が流れる。すると僕の目をじっと覗き込んで来る。少し微笑みを浮かべながら僕を見つめていた。


「初めまして、かな?」


 頭の中で思い浮かべていた通りの声だった。脳内で何度も言葉を交わしていたので、初めましてと言うと少し語弊があるのかもしれない。


「初めまして」


 でも、折角、対面できた記念日なのだから、「初めまして」と返す事にした。


「やっと会えたね。啓太くん」


 本当に、会えて嬉しいのだ。


 世紀の出会いに感動を覚えつつ、横を見る。ガイドの女性が真顔で佇んでいた。


「そりゃそうだよな」と思う。普通の人間でも、こんなやり取りを横でされたら、水を差さずにいるべきか、「良かったですね」と合いの手を入れるか。どの選択肢を取るか、何を言おうか迷ってしまうだろう。


 このプログラムされた女性は黙る事を選んだのだろう。僕達(カディナも彼女に目を向けていた)の視線に気づいた彼女は再び話しだした。


「キャラクターの情報に変更点がありましたら、手動で修正してください。また、変更はキャラクター作成後にも可能です。その際はオプションよりキャラクター設定モードへ移行する事が可能です。新たなキャラクターの創造もそこで行ってください」


 情報画面を見ると、カディナの情報が全て記されていた。僕が想像していた通りに記載されていて、取り敢えずほっとする。しかし、一応本人に記載漏れが無いかどうかを確認するべきであろう。


「ここの情報間違ってない?」

「大丈夫だよ。何も間違ってないよ」


 聞いた所ではっとする。彼女はプログラムされた人格であるのだから、僕が想像した、つまりあそこに書かれている通りの人格でしか無く、絶対に「間違っていない」と答えるはずだったのだ。もし間違っているのであれば、僕が直さなければいけなかったのだ。


 しかし、彼女の事なのだから、彼女に同意を得るのは、道義としても、儀式としても正しいのだろうと考えなおした。彼女をここに呼び寄せた男として、やれる事は全てやる事が筋であるだろう。


そして僕は再びガイドの女性へと視線を向ける。


「キャラクターの設定が完了したら、次のステップに移行します」


 夢の世界で過ごす準備が少しずつ、少しずつ整ってきている。


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