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VR時代の新しい空想  作者: 廃界幻夢
「Dr-1」との出会い
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「Dr-1」との出会い-2 チュートリアル、地形の創造

 目の前にデカデカと「Dr-1」のロゴが出てきた。近未来的なフォントだ。技術革新が進んだ現代を象徴するかのようなロゴであった。しばらくすると、「Now Lowding」の文字と共に草原が出てきた。周りには、突然右に曲がりまたまっすぐ伸びた木であるとか、なんだか妖しげな雰囲気を醸し出す赤い花、周りには密林や孤島でしか存在を確認できないような、蝶が綺麗に待っている。


「ああ、ファンタジーパックを導入したからだな」

と不意に背景の意味に思い当たった。インストール時に「ファンタジーパック」「古代パック」「現代パック」「近未来パック」の4つから最低1つのパックを選ぶ様にとの指示があったのだ。勿論、複数選んでもいいし、後から導入することも可能だが、僕の思い描いていた世界は主にファンタジーだったので、これを選ぶ事に決めたのだった。また、公式サイトでは、今後もどんどん新しいパッケージがアップロードされるのだという。


 文字が消えると、女性が現れた。茶色の髪に、黒い目。その長い髪は先っぽがカールしている。白い、質素なドレスを着て、温和な表情を浮かべた人だ。女性の年齢を探るのは失礼な事ではあるが、20~30代前半と思わしき顔だった。しかし、その表情からは、年齢以上の落ち着きを感じさせられた。


「始めまして。VR補助装置『Dr-1』をお買い上げいただきありがとうございます」


 落ち着いた口調に声だった。チュートリアルのキャラクターと言えども、こう作り込まれると、技術者の本気を感じさせられる。


「これから、チュートリアルを行います。説明をご覧になりたい方は左のボタンを、説明がご不要な方は右のボタンを押してください」


 説明と同時に、2つの板状のボタンが映しだされた。近未来的な、青みがかっていて、ケーブル状のデザインが施されたボタンだ。それぞれ、『詳しい説明を見る』『チュートリアルを終わる』とある。


 これを触るのは初めてなのに、説明も聞かずに「さあ、始めましょう」では右往左往するのが落ちであろう。結局、説明を聞いたほうがよかった…となってしまう。周りに誰もおらず、見栄を張る必要もないのだから、説明を聞かない理由等ない。


 僕は、手を動かして、左のボタンを押した。今はまだ実装されていないが、身体を動かすべく発せられた脳波をこの「Dr-1」が受け取り、完全に仮想空間にダイブできるようなプログラムが開発されているという。「Dr-1」自体は既にこの機能を実装できるほどの性能を持っているらしい。とても楽しみなことだ。


「では、『Dr-1』の世界にご案内いたしましょう」


 画面が切り替わり、平地が映しだされた。どこまでもどこまでも続く平原であり、綺麗を通り越して殺風景だと感じるほどには広がっていた。僕のすぐ横にはあの女性が立っていた。改めて美しいと感じた。


「まず最初に地形を設定します。地形の変更は地図を操作して行います。また、変更を目視して確認することも出来ます」


 目の前に地図が映し出される。当然標高も何もないから、一面が緑である。


「現在地は赤で示されています。標高や、天候の変更は変更したい地図をタッチして行ってください。縮尺の変更は地図下の縮尺表示をタッチして行ってください。また、単位表記のデフォルトはメートル法準拠となっておりますが、ヤード・ポンド法、また、この世界オリジナルの単位にも変更することが出来ます。画面右上の歯車ボタンをタッチして行ってください」


 そう言うと、画面上に様々な指示が躍り出た。先ほど説明があった場所にポインタが出てきた。それぞれ、「地図の変更」「縮尺の変更」「設定」と出てきた。なんと親切なんだろうか。


 そして、オリジナルの単位が設定できるなんて!


 僕が、いや、人々がノートに書き留めていたような世界がこの機械で実現されるという事ではないか!僕がこの機械を買ったのは間違っていなかったのだ。ワクワクが止まらない。きっとこの機械は人々の生活のあり方を変えるのだとの確信を深めたのだった。


 とりあえず、地図をタッチして地形の変更を行おう。


「地形変更モードになりました。範囲を指定してください」


 音声と画面の指示の通りに範囲を指定する。現在地から北にしばらく進んだ場所、そこに山脈を作る事にした。

「これから脳内のスキャンを行います。地形を想像してください」


 虚をつかれた。地形の想像とは一体全体、具体的にどう行えばいいのだろうか。

 とりあえず山脈を思い浮かべる。地図から見たらどんな感じか、目視したらどんな感じか、登ってみたらどうだろう、頂上は尖っていてとても登れそうに…


「スキャンが完了しました」


 なんとかなっただろうか、地図を恐る恐る確認すると、確かに僕の思い描いていたような標高になっていた。


「移動モードにし、移動したい地点をタッチすればその場所まですぐ移動が可能です。また、手動で細やかな変更が可能です」


 地形も、山の色もばっちりだった。よくあるような禿山だ。


 この後も僕は地形の変更を加えた。東から南にかけて海を作り、西側はなだらかな丘を作った。


 空想世界の創造はまだ始まったばかりだ。

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