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6 ペダルは始まりの合図
チリンチリン、と軽快な音楽が耳を打つ。それが友達が自転車で迎えに来たお決まりの合図だ。
時計を見ると午前七時五十分、僕は慌ててパンを口にくわえると、学校鞄に片腕を通した。
おっと、大事なことを忘れていた。テレビを消さないと後で姉ちゃんにどやされちゃうんだった。
扉を開けると、ほらね。
「おっそいぞー」
いつもの君の声が聞こえる。
「ごめんごめん」
僕は靴底で地面を思いっきり蹴り、ペダルというスイッチを押す。
さあ、出かけよう。
僕らを待つ世界へ。