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3 雨の日はちょっぴりブルーで
本を小脇に抱えて自動ドアから出た途端、少女はあっと虚空を見つめた。
今日は雨が降らないだろうと高を括っていたのだけれど、どうやら読みが甘かったらしい。
(どうしたものかしら)
そう考え込んでいる間にも、赤や黄色の木の葉や、コンクリートの路地を打つ水音が徐々に激しさを増していくのが分かった。こうなったら選択肢は二つだ。雨がやむまで図書館でもうしばらく待つか、家までの道のりを勇気を出して走りきるかだ。
と、ふと頭の上が暖かくなったような気がして見上げると大きな青い傘が開かれていた。そして柄の先を辿るとそこには少女よりも幾分か背の高い男の姿があった。
「どうしてここにいるの」
見覚えのある姿に安心したのかちょっと泣きそうな顔で見つめると、男は柔らかな笑みを向けた。
「ちょっとコンビニまで来たら、姿が見えたもんでね。さあ、帰ろうか」
少女はうれしそうに顔をほころばせると、そっと背伸びをして耳元へと囁いた。
「あのねパパ、世界で一番大好きよ」