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VS

―町郊外―


遂にモンスターと初対峙、いや正確に言うと2度目な訳だが、真正面からの戦闘を経験することになった。


「ここら辺をテキトーに歩き回ってたら出てくるらしいから。」


なんだそのポ○モンみたいな設定は。


そう言ってセイラは堂々と地面を踏み鳴らして歩いた。


男らし過ぎるよセイラ。というかそんなに堂々としてたらワーフロッグだって怖がって出て来れないよ。


そんな事を考えていると、急に地面が盛り上がり、カエルのような頭が複数顔を出した。


「セイラ何か出たぞ! 気持ち悪っ。」


犬くらいの大きさのカエルが次々と地面から這い出てくるのだ。気持ち悪い事この上ない。


「大量だ―!」


そんなことはお構いなしに、セイラは隣でぴょんぴょんと飛び跳ねて興奮している。


そしてディズの第二形態を発動させた。


ヘルガロンの時と同じく無数の剣がワーフロッグ達を貫いていく。


「これが第二形態のグラディウスか。というかグロッ!」


何しろ相手がカエル型なので、周りは目も当てられないくらいに悲惨な事になった。


具体的に言ってしまうと自分でも気分が悪くなってしまいそうなのでやめておこう。


「これでどのくらい稼いだかなー。」


そんな中でもセイラは目をキラキラさせながら報酬のことを考えている。


この子には倫理観とか、そういうものがないのか。


だが相手はモンスターなので、ここではセイラの考え方のほうが正解なのだろう。


「よし、ミッション完了だな!」


「ちょっと待て、ぼくの特訓はどうなったんだ?」


「あ・・・。」


さては忘れていたなこの娘は。


周りを見渡してみたが、ほかにモンスターらしきものはどこにもいなかった。


全滅させてしまったか、残党は逃げてしまったのだろう。


これじゃあ特訓が出来ないじゃないか。


「そうだ。わたしが練習相手になるよ。」


セイラは悪びれることもなく言った。


それだけはやめてくれ。命がいくつあっても足りない。


ぼくは今までで、セイラが手加減なんてできる子じゃないと確信していた。


セイラが絡むと、ぼくの死亡フラグが立つのだ。



仕方なく、一旦町に戻ろうとしたその時、強烈な突風がぼくたちを襲った。


その突風に思わず顔を背ける。


「痛てっ。」


頬にかすかな痛みを感じてその箇所に触れてみると、手には生暖かい血がついた。


頬からゆっくりと血が顔を伝って垂れてくるのが感じられ、体に寒気が走る。


「な、なんだこれは・・・。」


「マモルっ!」


すると目の前で砂が巻き上げられ、発生した竜巻の中から一人の男が姿を現した。


細身ではあるが、その顔からは狂気が感じられ、異様な威圧感を放っている。


「今のは挨拶代わりだ。さあ楽しもうぜ勇者連合!」


そう言って、顔に笑みを浮かべてこちらを睨んでいた。


「お前、魔王連合の奴か。」


「正解!俺は魔王連合のキルギスだ。まあ名乗っても意味ないけどな。お前ら二人、ここで死ぬんだから。」


「マモル構えろ。来るぞ。」


セイラの言葉で身構えようとした瞬間。奴の姿が消えた。


・・・!


どこだ。どこに消えた?


すると突然、セイラが後方へと吹き飛ばされた。


「セイラっ!」


「大丈夫だっ。」


セイラは体をうまく使ってこらえていた。


だが、キルギスは間髪入れずにセイラに襲い掛かる。そのスピードは目でやつを追うのが不可能なほどだった。


「もうちょっと抵抗してくれないと面白くないぜー!」


奴は武器を持っていない。恐らく奴のアビリティーはあのスピードか。


その時、セイラが叫んだ。


「ディズ、集合!」


すると先ほどまで地面に突き刺さっていた無数の剣たちがセイラの周りを取り囲んだ。


そして絶え間なく繰り返してくるキルギスの攻撃を剣たちは縦横無尽に動き回り、セイラに近づかせなかった。


「わお、流石は勇者連合の夜叉姫だぜー!」


夜叉姫?何のことだ。しかしなぜあいつはセイラばかり狙うんだ。


「夜叉姫、お前の首には高額の懸賞金がかかってるんだよ。」


「ああ、知ってるよ。」


セイラとキルギスは戦いながら会話を交わす。


というかセイラに懸賞金!?聞いてないぞ。


戦闘は続き、互いに譲らず、キルギスとセイラの間には火花が散っていた。


「じゃあそろそろ本気と行くかー!」


そう言うと、キルギスの周りを風が舞い始めた。


「俺は『神速』を持っているがそれだけじゃない。このアビリティー『疾風』で粉々にしてやるぜー!」


※特性『神速』:基礎スピード上昇(大)。回避率上昇(大)。特技『瞬間移動』取得。『高速』の上位特性。


そう言ってキルギスは目を閉じた。


するとキルギスの体は砂のように崩れ、風に溶け込んでいった。


なんだ、今度は何が来るんだ。


私は必死に目を凝らすが、やはり何も見えない。


だがセイラが狙われていることは間違いない。


そう思って振り返ると、足元の砂が一瞬にして渦となり、セイラは巨大な竜巻に巻き込まれた。


「んっ・・・!」


「へへへ、この砂地獄に捕まったらもう逃げられないぜ。切り刻んでチェックメイトだ!」


セイラは息苦しそうに砂の中でもがいている。


ディズの無数の剣が外から何度も斬りつけるが、全然効いていない。


セイラはキルギスからの攻撃で、少しずつダメージを受けていた。


「マモルッ・・・!」


どうする。セイラを助ける?


だがセイラでもかなわない相手だぞ。ぼくが行ってどうにかなるのか?


それに使えるアビリティーもない。



ガンテツから貰った盾はあるがあの強風ではすぐに吹き飛ばされる。



頼れるのは『絶対防御』だけ、だがそれも自分では操作できない。


・・・だめなのか?


ぼくじゃセイラを助けられない? 結局ぼくはセイラに頼りっぱなしじゃないか。



このまま見ているだけならば・・・。


セイラを見捨てることになってしまう。



それだけは嫌だ。


ここで動かないと、友達失格。



いやそうじゃない・・・自分が自分を許せなくなるんだっ!



マモルは砂地獄に向かって走り出した。


「なんだ?急に元気になりやがって。邪魔だ、どいてろ!」


キルギスは砂の塊を勢いよく飛ばして来た。


その強烈な風圧に盾は吹き飛ばされる。


もう自分を守れるものはない。


やられるっ。


そう思った時、目の前が青く光った。


青空のような透き通った青。


その青い光はそのまま私を包み込み、全身の姿にそって膜のように覆った。


なんだ、この青いのは!?


いやそれよりも攻撃は?


キルギスの放った砂の塊は、このおおわれた光を伝ってサラサラと地面に流れ落ちていた。


・・・助かったのか?


「なんだその能力は!」


キルギスは明らかに動揺している。風に舞った砂の動きもどこかおかしい。


だがそんな事は今どうでもいい。


マモルはすかさずセイラの閉じ込められた砂地獄に飛び込んだ。


ただセイラを助けたいという一心だった。


「セイラーっ!」


周りの砂はおおった青い光によって次々にはじかれていく。


そしてセイラの縛りが消えたと同時に、


「ディズ、突撃ー!」


その掛け声で周りの剣たちは一瞬にしてキルギスを襲った。


「ガハッ!」


元の体に戻ったキルギスにはいくつもの剣が突き刺さり、そのまま地面に倒れ伏した。


キルギスはそのまま砂へと姿を変え、風と共に消えていった。


「・・・やった。」


「マモルやったよ!『絶対防御』使えたじゃん!」


いつの間にかぼくをおおっていた青い光は消えていた。


そうか、これが『絶対防御』。ぼくは本当に使えたのか。


その時、ぼくは自分の状況に気づいた。


先ほどマモルはセイラに向かって飛び込んだ。そして、今私は思いっきりセイラの胸に埋まってしまっていたのだ。


「わあごめん!」


慌ててどこうとしたが、


「マモルありがとうっ!」


その手を引っ張られ、セイラに躊躇なく抱きしめられた。


「マモルはわたしを助けてくれた。命の恩人だよ!」


「セイラ、く、苦しい。」


マモルはすぐに退いて、心を落ち着かせた。


セイラにはやはり恥じらいが足りない。まあ悪い気はしなかったが。


私は立ち上がってセイラに手を伸ばす。


セイラは笑顔でその手をとって立ち上がった。


「さて、これからどうする?」


「わたしお腹空いたー。」


そう言ってセイラは倒れているワーフロッグに目を移した。


え、あれ食べるの?



とりあえずマモル達は町に戻った。セイラはワーフロッグを何匹か持ち帰ってきたが。


後から聞いた話では、アビリティーは体力の消耗が激しいらしい。


セイラもいつもの調子ではあるが、そうとう疲労が溜まっているに違いない。

ひとまず、休息をとらねば。


後、服もまた変えなくてはいけない。セイラに関してはキルギスとの戦闘で、ぼくが直視出来ないほどになっていた。


ぼくの特性の話も、この一件の話もその後だ・・・。




—魔王連合本部—


「キルギス、貴様敗北したようだな。」


「剣姫のほかにも厄介な奴がいまして・・・。」


「敗者に用はない。消えろ。」


「待ってください!まだおれは・・・。」


手をかざされると、キルギスは跡形もなく消えてしまった。


「制圧まであと少しだ。誰にも邪魔はさせん。」

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