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ギルドへ

町は思っていた以上に賑わっていて、マモルたちの歩く大通りには様々な店が軒を連ねていた。


すれ違う人の中には、同じ冒険者らしきものもいれば、獣耳を生やした獣人も見受けられ、いかにもRPGらしい光景を作り出している。


マモルはセイラの後をついていきながら、活気のある街並みを興味津々に眺めていた。


「なかなかの町だろ?最初の頃はこんなに賑わってなかったんだぜ。」


「セイラは初期からゲームを始めていたのか?」


「まあ大体な。」


ぼくも開始は早かったはずなのだが。数日出遅れてしまったようだな。


「このゲームが始まってどれくらい経つんだ?」


「んー。約1年くらいかな。」


1年!?


そんな馬鹿な。いくら何でも時間が経ちすぎている。


ということはぼくは半年もあの山道で倒れたままずっと・・・。


あまりにシュール過ぎる。


流石にフリーズしている間に殺されることはなかっただろうが。


まったくいい加減なゲームだ。


「つっても現実では時間は過ぎてないし、あくまでこの中だけでの話だけどな。」


「どういうことだ?」


「そういやマモルはこの世界のルール知らないんだったな。」


面目ない。その件に関しては完全にぼくの落ち度だ。


セイラは簡単にこの世界のしくみというやつを説明してくれた。


「マモルのところにもあの機械が送られてきただろ。あれでプレイヤー全員の意識を一か所に集めるんだと。そして集められた場所がこの世界だ。」


「それってつまり?」


「わたしたちは意識だけこのゲームの中に飛ばされたってことだよ。だからここに何十年いようが現実での時間は一秒たりともすすまねぇんだ。」


まったく信じられない話だが、理解はした。それにここまでくればもう信じるほかあるまい。


セイラは続けてこの世界のルールについて話した。


「もうアビリティーについては知ってるよな。基本的にはそのアビリティーや特性などを使って敵と戦うんだ。」


「普通のRPGとさほど変わらないんだな。」


「そんなことないぞ。普通と違うのはその敵もプレイヤーであること。それと死んだら終わり、ゲームオーバーだってことだ。」


敵が同じプレイヤー? 死んだら終わり?


私はセイラに詳しい説明を求めた。



つまりはこういうことらしい。


このゲームには【勇者連合】と【魔王連合】というチーム分けがなされている。

この振り分けはゲーム開始とともに行われていた。


ちなみにぼくたちは勇者連合だ。


連合はどちらかの大将を倒すか、敵チームの領地を3分の2以上制圧すればゲームクリアとなる。


そしてここからが大事。一度死んでしまえば、ゲームオーバー。このゲームから強制的に追放され、現実世界に戻される。


いうなればこれは復活不可能の壮大な陣取り合戦というわけだ。



「みんな報奨金目当ての奴らばっかだからな。簡単には死ねないさ。」


そう、ぼくも簡単には死ねない。もしここで死んで、元の世界に戻ったとしてもお金がなければまともに生活も送れない。そもそもその金を求めてきているのだから当たり前だ。


ぼくにとっては、この世界での死は即ち、現実世界での死ということだ。


「セイラはどうしてこのゲームに参加したんだ?やっぱり金か?」


「そんなの楽しそうだからに決まってんだろ! あとはまあ私にもいろいろあるんだよ。」


いつもの調子で答えていたが、

その時、一瞬だけセイラが悲しい目をしたように見えた。


「マモル、ギルドが見えたぞ!」


セイラのさした指の先を見ると、ほかの建物とは明らかに違う、コンクリート造りの荘厳とした建物が築かれていた。


あれがギルドか。

あの中には戦いに飢えた者たちがたくさんいるのだろう。その雰囲気にすこしたじろいだ。


「セイラ、あそこに行くんだよな。」


そういって振り返ったが、そこにセイラはいなかった。


「おーいマモルー、早くいこーぜー!」


セイラはもうギルドの入り口まで行っていた。こちらに向かって手を振っている。


時々セイラのその能天気がうらやましくなるよ。


ぼくは仕方なくセイラの後を追ってギルドへ入っていった。



大きな入り口を抜けると、明るい照明が室内を照らしていた。


中にはいくつかのテーブルが置かれ、たくさんの冒険者が集まっていて、外とはまた別の賑やかさがある。


セイラは慣れているのかその光景には脇目もふらずに受付へと進んでいった。


マモルもそそくさと後を追う。


「良さそうな依頼が無いか受付で聞いてくるから、マモルはちょっと待ってて。」


待っててといわれても初めての場所なので、どこを見ていればいいのか分からない。


こういう時、普通の人なら冒険者仲間に声をかけたりするのだろうが、ぼくにはそんな度胸もコミュニケーション能力もない。


一人であたふたしていると、大きな掲示板が目に入った。


近くによって見ると、さまざまな依頼書が重なり合って貼られていた。


内容はどれもモンスターの討伐や、壊された建物の修理といったものばかりだ。


「そんなに被害が出ているのか?」


そう憶測しながら掲示板をぼんやりと眺めていると、依頼書とは違う貼り紙を見つけた。


・・・現在の制圧状況?


ああセイラが言っていた連合のことか。何々、魔王連合領地0%。勇者連合領地60%。


・・・何だと!?


「マモルお待たせー。適当な依頼とってきたぜー。」


セイラが受付から戻ってきた。


「セイラ、それよりこれ・・・。」


「ああ、気づいちまったか。そう、わたしたち勇者連合はいま危機的な状況なんだ。」


どうしてこんなことに。もう領地の半分近くが制圧されているじゃないか。


ゲーム側がプレイヤーのバランスを間違えたのか?


「聞いた話じゃ最近魔王連合側にめちゃくちゃ強いやつが現れたんだと。それであちらは勢いついちゃって。」


そしてなぜかセイラはすこし視線を下に落とした。


だからあんな依頼ばっかりだったのか。だとするとなかなか不便になることもあるだろうな。


「マモルは気にしなくていいよ。敵と会うことなんてほとんどないし。それより依頼だよ!依頼!」


そういってセイラは持っていた依頼書をぼくに手渡した。


『ワーフロッグの討伐』か。


「これならマモルでも大丈夫だろ。危険な奴らじゃないからさ。」


先にあんなことを聞かされてはやるしかないだろう。セイラは大丈夫だと言ってはいるが、魔王連合のやつらがいつ襲ってきてもいいようにせめて戦いの仕方ぐらいは学んでおかないとな。


無論、攻撃などはすべてセイラに任せるが・・・。


とにかく行くしかない。


「受けよう、その依頼。」


「いや、だからもう受けてきたんだってば。」


ガクッ


出来ればここは空気を読んでほしかったのだが。


セイラに期待したぼくがいけなかった。



そしてマモル達は町を後にして、ワーフロッグの討伐に出かけた。


何事もなく終わってくれと願いながら。



・・・だがそんなマモルの思いはあえなく打ち砕かれるのだった。

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