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ある男の話
今思えばこれまでの人生、本当になにも無かった。
学生時代にした事といえば、半ば無理矢理に押し付けられた図書委員くらいだろうか・・・。
ああ、でも昼休みに人のほとんどいない場所を見つけた点ではラッキーだったのかもしれない。
成績といえば完璧なまでに中の中。
こんな奴に彼女なんてできるはずもなく・・・。
我ながらこの卑屈性には手を妬いたものだったなあ。
そのままズルズルと25歳。
無論、まともな職にはついていない。
いわゆる無職というやつだ。
だがもうこれからはそんな事などどうでもいい。こんな世界とはおさらばだ。
1つ確認しておくが、ぼくはこれから死ぬ訳ではない。
まだ心臓は生き生きと動いているし、身体は若者のそれである。
こんな生きにくい世界でもやはり生きていかなきゃならない。そのためにはそれに足るだけの金がいるのだ。
とはいえ、少しばかり社会に規格外なぼくはマトモな仕事は向かない。
だが、今ぼくは自分にぴったりな仕事を見つけたのだ!