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美少女が死にたくない理由  作者: 藍木 青
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 それにしても何だったんだろう、あの美少女は?

 よく夢は潜在意識からのメッセージというけど──なにかの暗示?

 死にたいと思っていながらも、本当は死ぬのが怖い──みたいな?

 つまりなに? あの美少女は、あたし自身てこと?

 いやいや、だとするなら、いくらなんでも美化しすぎでしょう?

 まあ、強いて言うなら、憧れ──というか、理想の姿だろうか。

 きっと彼女は、見た目だけじゃなく、性格なんかもスゴく良い本物の美少女に違いない。

 もし、あんな子がクラスにいたら、玲奈だって大きな顔でのさばってはいられないだろう。

 あっ! 今なんか浮かんだ。

 あたしは慌ててペンとノートを掴んだ。

 転校生。

 そうノートに書き付ける。

 あの美少女が、あたしのクラスに転校してくるのだ。

 席は──あたしの左隣。

 一番窓際の列は人数の関係で、左前の三浦くんが最後尾。

 つまり、あたしの左隣は何もない。

 もし転校してくるとするなら、そこが彼女の席になるはずだ。

 そして、前の席の三浦くんと仲良くなるのだ。

 玲奈がヤキモチを妬いて嫌がらせをするけど、そんなことに負ける彼女じゃない。

 見た目も、成績も、性格だって玲奈より上。

 男子ばかりでなく女子からも人気を集め、ついには玲奈帝国に亀裂が生じる。

 やがて悪の帝国は滅び──。

 玲奈という最大の障害を乗り越えた彼女は、三浦くんと結ばれる。

 どう? なんか良くない? こういう恋愛小説。

 そうだ、あの子の名前──。

 えっと、あたしが坂本(さかもと)芽花(めいか)なので、苗字は「さかもと」を並び替えて「ともさか」にしよう。

 名前はもう少し複雑に、アルファベットでMEIKAを並び替えて……EMIKA。

 ──友坂(ともさか)咲日(えみか)

 うん、いいかもっ!

 あの美少女に、あたしの名前のアナグラムを付けるのは、ちょっとおこがましい気もするけど、そこは──まあ、ご愛敬ということで。

 そして、あたしはパソコンを起動する。

 書き出しは、玲奈に支配されているクラスの様子が良いだろう。

 これから主人公を待ち受ける困難を予想させるし、実体験をそのまま書けばいいだけなので、あまり考える必要もない。


 思った通り、筆──というかキーが進む。


 それにしても、改めて文字にしてみると、よくこんなことをされて今まで耐えてきたなぁ、あたし……。

 それはさておき──。

 いよいよ、友坂咲日が転校してくる場面だ。

 三浦くんに咲日のことを任せる先生。

 すぐ前の席だし、先生からの信頼も厚いので、特に不自然ではないだろう。

 かくして、いきなり2人は大接近することになり──。

 当然、玲奈に目を付けられることになる。


 うん、いい感じだ。

 あまりの出来の良さにテンションが上がったあたしは、つい誰かに読んでもらいたいという衝動に駆られてしまった。

 そうだ、無料の小説投稿サイト──。

 いつもは読む専門だが、誰でも投稿して良かったはずだ。

 いちおう念のため、架空の友坂咲日以外は、苗字を削除し名前をカタカナにする。

 飯塚怜奈は「レイナ」、三浦遼くんは「リョウ」といった感じだ。

 ペンネームは、芽花だからM──では、あまりにも安易なので、漢字にして笑夢(えむ)にした。

 投稿から10分と経っていなかったと思う。

 あたしの小説に対して、最初のコメントが寄せられた。


 ・レイナ最低! こんな人が実在していたら、学校に行きたくなくなるよ。


 読んでもらえた嬉しさと、玲奈の卑劣さを理解してもらえた喜びで、小躍りと涙が同時に溢れ出しそうになる。


 ・リョウくんカッコイイ。私の好みです。

 ・どうして咲日だけフルネームで漢字? 主人公だから特別ってこと?


 ──などなど、次から次へとコメントが増えていき、それに伴いあたしのテンションもどんどん上がっていった。

 そんな中──。


 ・先が気になる、続き早う。

 ・ちょっと短くない? 読み足りない。

 ・今日はもう更新しないんですか?


 続きを期待する内容の投稿もあり、正直いって驚いた。

 こんなあたしが書いた小説でも、読みたいと思ってくれる人がいるんだ……。

 期待に応えたいのは山々だけど、もうすぐ0時になる。

 宿題もまだやっていないし、この先の展開も全然考えていないので、今日はここまでにすることにした。

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