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美少女が死にたくない理由  作者: 藍木 青
12/15

約束

 今日は天気も良かった。

 中庭にレジャーシートを敷いて、いつもの4人でお昼を食べていると、不意に浜西が立ち上がった。

「坂本、ジュース買いに行くべ」

「はい? あたし?」

 思わず眉根を寄せてしまった。

 珍しいこともあるものだ。

 浜西が咲日ではなく、あたしに声をかけるとは。

 次の瞬間、あたしは気づいた。

 咲日と三浦くんを二人きりにしようという算段なのでは?

 もしかして強制力? いや、三浦くんに頼まれたのかもしれない。

 咲日をデートに誘うから、二人きりになるように協力してくれ──とか。

 そうだとするなら浜西、あんたもホント人がいいわね……。

 そういうところは嫌いではないのだけど──。

 やっぱ、あり得ないわ、浜西だし……。

 もちろん、二人きりになるのを邪魔するつもりはない。

「あ、うん、わかった」

 浜西の誘いに乗ることにして立ち上がった。

「あ、咲日は? ついでに買ってくるよ?」

 咲日も付いてくると言い出さないように先手を打つ。

「ああ、ありがと、じゃあ、お茶を」

「うん。三浦くんは?」

「ああ、オレも。ありがとう」

「いいのいいの、浜西のおごりだから」

「俺かよ! まあ、いいけど──」

「あ、いいんだ、ごちそうさまー」

 などと冗談を言いながら、自動販売機へと向かう。

 途中まで来たところで思い出した。

 あたしはデートに誘うところを目撃しないといけなかったのだ。

「あ、ごめん、先に行ってて」

「え? なぜ?」

 浜西が「マズい」という顔をする。

「あたし、教室に財布置いてきちゃったから、取りに行ってくる」

 それは嘘だ。

 しかし、二人の所に戻ると言えば、三浦くんに義理立てした浜西は、なんとか阻止しようとするかもしれない。

 教室ということにしておけば油断するだろう。

「俺のおごりだろ?」

「ありがと。でも、まあ、さすがに悪いし」

「いいって別に、どうせ──」

 言いかけて慌てて口をつぐむ浜西。

「『どうせ』なに?」

「いやぁ、あのぉ……」

 あやしい。

「どうせ……そう、どうせ遼にあとで請求する──みたいな」

 なるほど、そういう裏取引があったか。

 飲み物で譲るなんて、どれだけ安いのよ、あんたの愛情は。

 感心して損してしまった。

「そういうことならなおさら、自分の分は自分で出すわよ」

 呆れながら言ったあたしは、

「だから、あたしの分まで三浦くんに請求しないでよね」

 強めの口調で付け足すと、いったん教室の方に向かって走り出す。

 廊下を曲がったところで身を潜め、浜西が追いかけてこないことを確認したところで中庭へと向かう。

 木の陰から陰へと渡り歩き、会話が聞こえる位置まで近づく。

「じゃあ明日、9時半ということで」

「わかった」

 なんとかそれだけは聞くことができた。

 遠回りをしたのがいけなかった──。

 本当は、三浦くんが誘って咲日が照れながら頷く──というこっぱずかしい場面まで目撃するはずだったのだが……。

 それでショックを受けたあたしは逃げるようにその場を立ち去り、咲日にみつかってしまう。

 まあ、いいか。

 どうせ知っていることだし、これ以上は苦しい思いもしたくないし……。

 あとは見つかるだけ──なのだが、肝心の咲日がこちらを見ようとはしない。

 そうか、どうせ強制力が働くはずだから、どんなに上手に逃げ出しても、咲日はちゃんと気づくはず──ええっ?! うそぉっ!

 浜西が戻ってきてしまった。

「あれ? 坂本は戻ってきない?」

「一緒だったんじゃないのかよ?」

「それがさ、財布忘れたって教室に行ったきりなかなか戻ってこなくてさ、捜しに行ったんだけどいなくてさ──」

 マズい、なんだか雲行きが怪しくなってきた。

「もしかしたらこっちかと思って」

 とりあえず、お手洗いに行っていたことにして、何食わぬ顔で合流しよう。

 ──そう思った時だった。

 ガサッ!

 しまったぁ!

「あ、芽花──」

 まさかここで強制力ぅ?!

 スカートが引っかっていたらしく、立ち上がった瞬間に枝が揺れ、咲日に見つかってしまった。

「もしかして、聞いてた?」

「う、うんん、全然聞いてないよぉ」

 あたしは慌てて頭を振る。

「…………」

 うわぁ、あの目は疑ってるよ……。

「おまえなぁ、教室に行くって言ってただろ」

 浜西の当然の愚痴。

「いや、そのぉ、途中で、こっちだったかなぁ、とか思って戻ってきたら、なんか良い雰囲気だったんで、出るに出られなかったというか……」

 苦しい言い訳だ……。

「それより、飲み物はどうしたのよ!?」

 浜西が手ぶらだということに気づき、無理やり話題を逸らした。

「いや、だっておまえが──」

「ほら、もう一度買いに行こう」

「お、お、おい──」

 あたしは浜西の腕を掴み、逃げるようにその場を後にする。

 これで小説に近い展開になったと考えていいのだろうか?

 少し不安ではあったが、強制力を考えると、これでいいのだろう。

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