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学校に行く途中、私は気付いた。
「友達少ないよね、私……」
ゲームのことばかり気にしていたせいで友達が少ない。何で今まで気付かなかったのかがおかしいくらいの事だ。
これからはもっと違うことに目を向けていく可能性があるかもしれない。いつどこでフラグが立つか分からない今、必要なことはやっておこう。
確か情報屋兼友達のキャラの子もいたはずだから、友達になろう。今すぐに。
友達の作り方なんてどうしようもないことを考えていると、学校に着いた。すると下駄箱に入ってすぐ、女子の高い声が聞こえた。
「リンネ〜!今日の放課後空いてるぅ〜?」
「琳音先輩!お弁当作ってきました!!」
女子の塊。猫なで声が響き、私は逃げる準備をした。何故なら、その中心にいる人物に会いたくないから。
逃げたい。早く逃げたい。なのに、焦っているせいか上履きがうまく履けない。
「ありがとう、後輩ちゃん。嬉しいよ」
低音で腰にくる声が響いた。彼が口を開くだけで、周りにいた女子が静まり返る。まるで彼の声を聞きたいがためのように。
赤原琳音。ゲーム中での唯一の先輩でありチャラ男。私が一番苦手だったキャラだ。
肩までの髪は茶色で、ハーフアップ。セーターを腕まくりしていて、意外としっかりした腕が見える。タレ目で色気があり、いつも笑っている。
チャラ男と言うからにはいつも甘い台詞を言っているように思ったけれど、この先輩は違った。
確かに女子を沢山連れているし、態度は軽いけれど一線は絶対に越えさせない。それでもチャラ男か!?と言いたくなるけど、女子とは遊んでいる模様。授業をサボることもあるらしい。
前世で真面目だった私は、琳音の考えが理解出来なくて、攻略を難儀した記憶がある。今日の出会いイベントのあるキャラの1人だ。
「ぶぅ〜!ボクの方がカッコイイのに!!」
私が琳音を見つめていたら、隣から急に声がした。驚いて横を見ると、私とほぼ変わらない身長の男の子がいた。琳音を見て頬を膨らませている。まずこの子が琳音にカッコイイという分類で勝つことは不可能だと思う。
そしてこの子は……。
「ね、そう思うでしょ?センパイ。あんな見た目だけの奴の何がいいんだろうねぇ〜」
こちらを向いた彼の目が笑ってない。目が笑ってないよ。
私は逃げることなんて忘れていた。もう遅いけど。それにすごく動揺していた。すぐ近くにいる琳音の存在を忘れるくらいに。
私はこんな話しを知らない。
「ところでセンパイ、ボクのこと知ってるよね?ボクはセンパイのこと知ってるよ〜!桜宮花愛センパイ!……あってるよね?」
最後だけ声が低くなった。
天野誠。後輩で、自分の可愛さをよく理解している可愛い系。だけど腹黒。そこまでは同じだと思う。でも見た目が違う。こんな髪の色じゃなかった。服装も違う。袖があまりにあまったパーカーを着ていて、その色は白。
「驚いてる、ってことはあたりかな?花ちゃんセンパイ、ボクと協力しません?」
銀髪に黒目。高校の制服の色は薄いグレーだから、瞳だけが色を持っているように見える。その色の違いに、何故か私は魅入られていた。まっすぐ私のことを見る目は綺麗で、逆に怖かった。
ゲームと違う姿。声はいっしょのはずなのに、全然違うように聞こえてくる。
「天野……誠……?あなたは誰なの……?」
私の言葉を聞いた彼は楽しそうに言った。
「ハハッ!もう分かってるでしょ〜?センパイと同じ、転生者だよ」
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