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私は何事もなく帰宅した。
そのまますぐ夕飯を食べ、自室にこもる。
「さて、やりますか!」
まだ使っていないノートを一冊出し、表紙を開く。
まず最初に書くのは、「登場人物」。
桜宮花愛
・高校二年生
・乙女ゲーム「SweetMagic」のヒロイン
・黒目黒髪。たれ目
・天然そうに見えるけどしっかりしていて、言うことはちゃんと言う
・身長の低さが悩み
金剛悟
・高校二年生
・ヒロインと同じクラス
・茶色に近い黒目黒髪
・爽やかで誰からも人気がある
・裏ルートは「ヤンデレ」
是澤大和
・高校二年生
・ヒロインの隣のクラスで委員長
・黒目黒髪。つり目
・真面目で堅物。頭はいいが恋愛に疎い
・裏ルート「?」
今のところの重要人物をまとめる。簡単にしか覚えていないが、イベントさえ思い出せれば問題はないだろう。
悪役である峰川菜々子は、ルートによって性格や見た目が少し変わるので、まとめようがなかった。
残り三人。三人の名前は、赤原琳音、尾崎夕夜、天野誠だ。
学年も違うから会う可能性は低いかもしれないが、イベントが必ず起こるとしたら出会うことになる。またその時に確認してからまとめよう。
そしてイベント。
金剛、是澤のイベントを細かく書き出していく。覚えている範囲で選択肢も。
是澤はラクに思い出すことが出来た。流石は自分の推しキャラ。
金剛は少し迷ったけど、前世の友達が言ってたことを頼りになんとか思い出せた。
最後にノーマルイベント。誰かのルートに入っていようが入っていなかろうが起こるイベント。これが意外と思い出すのに骨が折れた。
一番最初に試しでプレイした時、私は見事にノーマルエンドだった。終わった後に是澤のことが気になり、是澤ルートを頑張ったのが二回目。それからどんどん他のキャラを攻略したせいで、一番最初にプレイしたノーマルルートの記憶が薄い。だいたいは書けたけど、不安が残った。
最後に「裏ルート」の発生条件。
これは選択肢に紛れている、「裏ルート」専用の選択肢に鍵がある。専用選択肢は、普通の選択肢と違い、キャラが怒りそうな選択肢や、親密度が下がりそうな選択肢の中にあって、親密度によっては意味を成さない選択肢。だからこそ難しく、誰もが熱中した。私は攻略を見ながらだったからラクにできたけど、はっきり言って楽しめなかった。
さっき頑張って書いた選択肢の横に、必要親密度とともに印を付けていく。是澤のしか分からないけれど、少しでも負担を減らしたい。
一旦ペンを置き、溜息をつく。
「なぁんでヒロインなんだろ……。ゲームの世界なんて、モブでも私には重いよ……」
前世では恋愛経験ゼロ、ただの凡人だった私にとって、ゲームの世界は精神的に疲れる。誰か同じような人がいて、話を共有できたらいいのにと考えてしまうのは間違っているのだろうか。
深い深い溜息が出る。
「……寝よう」
今日はもう疲れたから寝る。明日またイベントがあるけど、頑張って乗り越えるしかない。そのためには、休みが大切。
お風呂に入ってからベッドにダイブする。布団を被り、そのまま気絶する様に眠った。
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