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 チラチラと金剛の視線を感じながら、私は朝のHRを終えた。

 挨拶とともに金剛が立ち上がったのには驚いたけど、峰川もそれに気付いて立ち上がり、金剛を止めてくれたことには感謝したい。だってめっちゃ私のこと見てたもん。はっきりいって怖い……。

 金剛は峰川さんに任せておこう。


 さて、今日はもう一つイベントがある。

同じ学年にいるはずの、是澤大和これさわ やまととの出会いイベントだ。

 是澤は真面目で堅物。当然頭もよく、テストは必ず一位。

 そんな是澤は、前世での私の推しだった。ストーリーも良く、エンディングまですごく楽しめたのと、性格、見た目ともに私の好みだった。親密度が上がるにつれてツンデレっぽくなるのが本当に可愛かったのだ。

 金剛はメインヒーローというのもあり、何もかも完璧で優しく、隙のない優等生。理想が詰め込まれた性格、と言うのが早いかもしれない。

 是澤のルートでは、峰川は少し違う。金剛のルートでは典型的ないじめっ子であり、少しストーカーな人だ。だけど是澤のルートでは、頭がいいことを利用し、ヒロインには分からない話をすることで二人の会話を邪魔してくる、噛ませ犬の様な存在だ。金剛の時よりも躱すのはラクだけど、是澤との勉強会によって成績の上がったヒロインにとうとうテストで抜かれた峰川が、ヒロインが不正をしたと言い出す場面がある。そこを切り抜けられないとルート失敗。選択肢選びが大変だった。

 だけどここで一つ違いがる。

 今の私は成績が悪くない。それよりも上の方に位置する成績だろう。

 この場合、是澤とのイベントは起きない可能性がある。はっきり言って悲しいけど。


 私が下を向きながら悩んでいると、机の前に誰かが立ったのか、人の影が私に重なった。

 顔を上げると、眩しいくらいに笑っている金剛だった。……怖い。


 「桜宮さん、次の休み時間、話できる?」


 峰川がすごいこっちを見ている。だけど金剛の目からは逃げられる気がしない。次の休み時間が駄目でも、また次、そして最後には放課後になってしまうかもしれない。嫌なことは最初に片付けるのがいいだろう。


 「う、うん。別に大丈夫だよ」


 金剛は怖い雰囲気を取り除くと、輝く笑顔を向けてきた。眩しいから止めてくれ。


 「そっか、良かったぁ〜!じゃあまた次の時間に」


 何を話すのか分からないけれど、とにかく峰川が怖い。金剛が席に戻れば金剛に話しかけてるけど、時々こちらを見る時の目が本当に怖い。


 嫌な感じがしながら一時間目を終わらせると、金剛が私の席にくる。


 「ゆっくり話したいから、廊下出てもいい?」


 私は小さく頷いてから席を立つ。そのまま廊下に出ると、イケメンがいた。

 真っ黒の髪にこれまた黒い目はつり目で、性格のキツイ感じがする雰囲気。それに眼鏡だから、硬さまでプラスされてる。

 この見た目、すごい見覚えがあるんですけど。

 そのイケメンが私と金剛に気付くと、私達に近付いてくる。それを遮る様に金剛が私の前に立った。


 「桜宮花愛か?」


 「お前こそなんなの?」


 私が声を出すよりも金剛が先に言ってしまった。声でしか分からないけど、背中から感じる雰囲気はトゲトゲしい。


 「ハァ……。君に話し掛けてはいない。君達が恋仲であろうと、僕には関係ないからね。それよりも、桜宮花愛に言いたいことがあって僕はここにいるんだ。もし本人なら少し時間はもらえないだろうか」


 金剛のトゲトゲしさが増した。これは流石に答えないとまずいと思い、私は金剛の前に出た。


 「私が桜宮ですけど、今はちょっと時間が無いので、また次にしてもらえますか?」


 なんでか場の雰囲気が怖い。内心震えまくってるけど、言ってしまったものはどうしようもない。最後まで耐えるだけだ。

 イケメンは少し考える素振りをすると、顔を上げて頷いた。正面から見ると本当にイケメン。そして私の好み。これで顔が赤くならない方がおかしいだろう。


 「分かった。では君の都合のいい時間に僕を訪ねてくれ。僕は是澤大和。隣のクラスだ」


 あぁー……。やっぱり本人でした。そりゃ私好みのはずです。推しだったんですから。でもイラストより生の方が破壊力がすごい。私には耐えられないよ、うん。


 「分かりました。今日中には伺います」


 「それではまた後で」


 そう言って是澤は隣の教室に戻った。

 それをなんとなく見ていると、名前を呼ばれた。


 「桜宮さん」


 ヤバイ。後ろから感じるオーラが怖い。

 首から音が出るんじゃないか、ってぐらいの硬さで振り返ると、笑っていた。

 金剛はそれはもう眩しい笑顔で笑っていたのだ。


 「時間無くなっちゃったから、また次の時間にしようか。だからあいつの所に行っちゃ駄目だよ?」


 私は激しく首を縦に動かした。顔は笑ってるに目は笑ってない。こんな器用なことができるなんてすごいと思う。画面越しならいいけど、現実にこれは怖すぎる。

 私はここで思い出した。それぞれのキャラには裏ルートが存在したことを。

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