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教室の扉が開く。それはまるで地獄の扉が開かれる音のようだった。
「おはようございまーす!」
クラス全員から注がれる奇異の視線。それをものともし無い表情。自分が可愛いと理解している声色。
全てはゲームの通り、そのままの姿で現れた。
「峰川菜々子……」
峰川はクラスを見渡すと、真っ先に金剛を見付けた。そして顔を赤らめる。
その顔のまま、つり目の瞳を輝かせながら金剛の元に走り寄った。
「ねね!あなたなんて名前?私は峰川菜々子!」
明らかに金剛は困っている。周りの男子も、どうしたらいいのか分からないのか、二人の顔を交互に見ることしか出来ていない。
金剛が口を少し開いた瞬間、鐘が鳴った。それと同時に担任であろう先生も入ってくる。
「ほら、席に座れ〜」
「先生!!」
担任の言葉を遮る様に峰川は強い口調で言った。
「私目が悪いので、前の席にしてもらってもいいですか?」
金剛は一番前の席、峰川は私の列の一番後ろだ。ちなみに私は金剛の斜め後ろ。男女それぞれの列だから、五十音的に私達の席は近い。なのに、なんでさっき金剛が自分の席ではなく前の席に座ったかは、ゲーム時代からの謎である。
これもゲーム通り。でも私は少しでも悪役とのフラグを折るために、峰川に向かって言った。
「なら私と交換しようか。私の席だったら見えるんじゃないかな?」
峰川が私を見る。そして私と金剛の位置を確認すると、弾ける笑顔で頷いた。
「本人が良しとするならいいか」
そして私と峰川の席は変わった。金剛とも離れられたし、一石二鳥かもしれない。
後ろから峰川を観察する。
少し茶色い髪はハーフアップになっていて、お嬢様の様な雰囲気。そして黒い瞳のつり目。はっきり言って美人だ。ヒロインが可愛い系だから、悪役が美人系になったのかもしれない。
そして前から思っていたけれど、「SweetMagic」はカラフルじゃない。ゲームならよくある白髪とかもいないし、現実によくいる色しか登場人物は持ち合わせていないのだ。だからこそ私はあのゲームを楽しめたけど。
さっきの席替えでは、本当は峰川は金剛の隣の席になるはずだった。そしてしつこく金剛に話し掛けるのだ。それを面倒臭くなった金剛が、朝少し話して仲良くなったヒロインに、助けを求めるように話し掛ける。それに嫉妬した峰川がヒロインを敵認定する、という悪役が悪役になるイベントだったのだ。
でも私が席を交換したおかげで金剛との会話を邪魔する人もいないし、場合によっては峰川が悪役にならずに済むかもしれない。
私がニヤニヤしていると、また視線を感じた。峰川の斜め前、金剛から。
なんで私はまた見られてるの?
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