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「何だよ、悟〜!お前もう桜宮さんに目ぇ付けたのか!?」
金剛の隣にいた男子が茶化してくる。でもそんなのが頭に入ってこないぐらい、私は絶望していた。
ここはゲームの世界。どんなに頑張っても、ヒロインである私が登場人物やイベントから逃げることは、不可能なんじゃないのか……?
目の前にいる金剛が目の前にいる私に向ける目は、同族を見る目だ。これがゲームだったら、ヒロインである私が金剛に向けるはずの目。私がその目を金剛に向けなかったから、イベントを起こすために金剛が私の代わりになった……?
……いや、考えすぎかもしれない。もし本当に不可能だったら、髪だって切ることはできなかっただろう。
今私がすべきことは一つ。峰川菜々子から逃げる為に、このイベントのフラグを折ることだ。
私は決心と共に顔を上げる。そして口に出そうと考えたことを声にするために口を開く。
「私は……」
「いいよいいよ〜!是非二人で話して!」
言えなかった……。見事に友達に邪魔されてしまった。私が言おうとしたのは、「私は用事があるから、また次の機会に」だ。こうゆうのを断る時に使う常套句だと思う。
私は隣にいる友達を見る。友達はすごい笑顔だった。憎らしい程に。
「花愛?どうしたの?ほら、時間無いから早く話しなよ」
無自覚とは時に人を傷付ける。
これは本当だったみたいだ。
「桜宮さん、オレと話すの……イヤ?」
「いや、全然大丈夫だよ……」
こんな捨て犬みたいな目を向けられたら断れる分けないだろう。目を見ることができずに私は言った。
「じゃあ桜宮さんの席で話そうか。ちょうど前の席空いてるみたいだしね」
本当にイベント通りに進んで行く。
私の絶望感なんて気付かずに、金剛は私の前の席に椅子を横にして座った。
私も自分の席に座る。体だけ横にした金剛が、少し声を抑えて話し出した。
「桜宮さんももしかしてあの友達に言われてオレ達と話してたの?」
あぁ、この台詞は私が言うはずだった台詞。
でも今は邪魔する友達もいない。フラグを折るために努力しよう。
「ううん、私はそんなことないよ。あの子がイケメンがいる、って言ってたから、結構気になってたんだ」
渾身の笑顔を向けた。この顔を向ければ、私が流されて話していたなんて思わないだろう。何かと不便なヒロイン顔はこうゆう時に役に立つ。
私の笑顔を見た金剛が少し固まっているけれど、きっと予想外のことを言われて驚いたんだろう。
「そ、そっか……」
よし、ここはもうひと押し。
「うん!……話ってこれだけ?」
もう話すことは無いだろうという空気を出す。
金剛は空気が読める男子なのか、ありがたいことに席を立ってくれた。
これでイベントは終わりだ。好感度だってこんな会話では上がりもしなかっただろう。
もしかしたら、私が思っているほど警戒しなくてもいいかもしれない。この調子で攻略キャラと会ってもできるだけ会話をしないようにしよう。
そして朝のHR。あの峰川菜々子との顔合わせイベントが起こる時間が始まる。
初めまして!猫田です!
1話ごとの長さ、更新日など、特に決めていないのでバラけることが多いと思います。
そんなグダグダな作者ですが、面白いと思ってもらえる作品を目指そうと思います!
これからもどうぞよろしくお願いします!