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 「さ、桜宮さん!」


 「は、はいぃぃ!」


 急に名前を呼ばれたせいで驚いてしまい、よく分からない声で返事をしてしまった。案の定金剛は固まってる。


 「あのー……」


 「……ふっ」


 ん?


 「くくっ、今の声……」


 もしかして、笑ってる?


 「えぇーと……」


 「ご、ごめん!!」


 いや、そんなに謝らなくても大丈夫です。それよりも、イケメンは笑い方も格好良いのですか。

 私の反応に自分の失態に気付いたのか、金剛は背筋を伸ばして私に謝る。


 「急に呼んだりしてごめんね」


 「ううん、こちらこそ変な声出してごめんなさい」


 「いや、それは別に……くっ」


 よほどおもしろかったんだね。こちらからしたらちょっと悲しい。


 「えっと、それでオレは桜宮さんに聞きたいことがあるんだけど、さ」


 「?答えられることなら何でも聞いていいよ」


 私の返事に金剛はホッとした顔をすると、いつもよりワントーン低めの声で話し始めた。


 「じゃあ聞くけど、オレ言ったよね、是澤とは関わるな、って。何で親しくなってるの?それに見てないうちに後輩とも仲良くなってるみたいだし、いい噂を聞かない赤原先輩とだって噂になってるよ。見てるこっちが不安になるようなことを何でするの?」


 その半分以上はゲームのせいだと思う。それよりも、金剛の様子が少しおかしい。こんなに圧をかけるような話し方は見たことないし、こちらを見てる目も怖い。

 もしかしてこれ……、裏ルートに進んでる……?


 「ねぇ、何で?」


 金剛の裏ルートは"ヤンデレ"。この私を束縛するような内容、初期症状な気がしてならない。怖いけど、ここはルート回避のために尽力しないといけない場面だろう。


 「何でって言われても……。誠と赤原先輩と会ったのは偶然だし、尾崎君とは誠から紹介されて会っただけだよ?是澤のことは…、悪いとは思うけど、無視するのも心苦しいし……」


 言い訳じみた内容になってしまったが、全てが仕方の無いことだというのは伝わる内容のはず。


 「へぇ?」


 金剛が少し笑う。でもいつもの優しさの滲む笑顔じゃなくて、裏があるニヤッとした感じの笑みだ。怖い。


 「後輩のことはもう呼び捨てなんだ」


 「え?」


 それの何がいけないのだろうか。


 「だったらオレのことも呼び捨てでいいよ」


 「はい?」


 何でそんな話になる?


 「オレも桜宮さんのこと呼び捨てでいいかな?」


 「別にいいけど……」


 つい返事をしてしまった。でも、金剛の笑顔がいつものに戻ってホッとする。


 「じゃあ呼ぶね。……ほら、オレのこと呼んで」


 何が起こってるのかよく分からないけど、金剛の雰囲気が軽くなったから、裏ルートに入らずに済んだのだろうか。まだ不安は残るが、それよりも今は金剛のことを呼び捨てにするということの方が不安である。何でそうなったのかよく分からないし、今呼ばなきゃいけない理由も分からない。きっと私の顔は不思議でしょうがないという顔をしているだろう。

 私が声を出すのを待っているのか、金剛が笑顔でこちらを見ている。


 「えっと……悟」


 「うん、花愛」


 ……なんだろう、この恥ずかしさ。

急展開過ぎないか不安です。早めにお届け出来て良かった…。

ブクマ、本当にありがとうございます!

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