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本っ当にお待たせしました!

 周りがざわめく中、金剛は私を保健室に運ぶために歩き始めた。まるで見せつけるようにゆっくりと。


 「金剛君!」


 私が羞恥で悶えていると、峰川が金剛と私の前に回ってきて金剛の名前を叫んだ。その顔は必死そのもので、私としては睨まれすぎて怖い。


 「峰川さん、そんなに動けてるなら足、大丈夫だよね?本当に痛いようだったら保健室に行きなよ?それよりも今は本当に痛そうな桜宮さんを運ぶ方が大事だから」


 軽く皮肉も混じえた金剛の言葉に、峰川は絶句している。私は恥ずかしさで顔があげられないけど、指の間から少し覗いた峰川の顔は絶句そのものだった。目は大きく開いていて、口も少し開いている。そこから小さく聞こえる声はきっと信じられない、とか、どうして、とかだろう。


 「分かってくれるかな?」


 金剛の止めの一言に、峰川は唇を噛み締めて下を向くと、そのまま授業に戻っていった。こんなことになっていても止めない先生の好感度は、私の中でダダ下がりしている。


 「じゃあ桜宮さん、行こうか」


 囁くように言われると、距離が近いのもあって本当に恥ずかしい。

 下駄箱で下ろしてもらい、上履きに履き替える。下駄箱のすぐ近くにある保健室に着くと、中には人の気配がなかった。


 「失礼しまーす……っと、先生いないみたいだね」


 私はその後ろ姿を見ながら、扉の横に掛けてある目立つプレートに気が付く。


 「あ、書いてあるよ。二十分くらいで戻るって」


 その目立つ木製のプレートには先生の手書きで「職員室にいます。二十分ほどで戻ります」と赤のインクで書いてある。

 金剛もそれに気付き、ほっとしたような顔をする。


 「あと十五分から二十分あるとすると、丁度いい時間になるね。先生が戻ってくる前に更衣室に行こうか。それまではここで休んでよう」


 確かにその通りだけど、私は授業に戻りたい。せっかく暖かくなってきて外体育が楽しくできる時期になったのに、二年最初の授業からサボりはキツイ。


 「私足なんともないし、授業に戻りたいなー、なんて……」


 勇気を出して金剛に伝えると、すごい真面目な顔で諭された。


 「駄目だよ、今戻ったら峰川さんに何されるか分からない。だったらここで落ち着くのを待とう?ほら、中入って」


 そのままなし崩しにソファに座らせられる。確かに授業に戻って峰川に何か言われる、もしくは無言で睨まれるよりかはここにいた方がいい。


 「「……」」


 しかし気付く。今までまともに話したことのない私たちにとって、十五分から二十分の時間はかなり長い。この沈黙、私は耐えることができるだろうか。

次の話は早く投稿できるといいな…。


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