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次の日、私はいつもより晴れやかな気持ちで学校に来れた。今日もイベントは変わらずに起こるけれど、ここ数日のように怯えるようなことはない気がする。
下駄箱に着いて上履きに履き替えている時、私は捕まった。
「おはよう、花ちゃん」
ウインクとともにご登場したのは琳音。さっきまでの晴れやかな気持ちは一瞬でなくなった気がする。
なんでか分からないが少しずつ近付いてこようとする琳音と、その周りの女子から逃げられるよう、私は階段に、琳音達が近付いてくる分だけ近付いていく。
「お、おはようございます」
私の態度が気に食わないのか、周りの女子たちが騒ぎ始めた。
琳音に対してあの態度はなんなのとか、わざわざ話しかけてあげてるのにとか、顔だけのくせに、とか色々。いや、そんなこと言われても困ります。はっきり言って近付きたくないし、話しかけてほしくもない。容姿のことだってしかり。できるなら私は前世と同じなんの特徴も ない平凡な顔が良かった。
女子達の言葉が聞くに耐えなかったのか、琳音が私から女子達の方に振り返った。
「ほらほら、そんなこと言わない言わない。皆だって充分可愛いよ。それに、俺が誰に話しかけようと君達には関係ないはず」
琳音の表情が私からだと見えなかったけれど、最後の言葉に女子達が怯んだのは分かる。元から色気のある声だけど、最後の言葉には色気はあるのに感情が感じられなくて、ゲームで聞きなれてたはずの私でも少し怖かった。
琳音のことが苦手だった私は、ゲームもほとんど飛ばして読んでいた。特に琳音のストーリーは後半が重くて、明るい話が好きだった私には本当にあわなかった。そんな意味でも、私は琳音に対して他のキャラよりも知らないことが多い。
女子の何人かが逃げるようにいなくなると、小さく溜息をついた琳音は私に向き直った。
「なんかごめんね?」
「……いえ、別に大丈夫です」
本当に申し訳なさそうに謝られると、つい返事をしてしまう。こちらに非がないのにあれだけのことを言われたのだから、怒ってもいいのかもしれないけど、小市民的性格な私には琳音に向かって怒ることなんてできるはずがない。
「花ちゃんは優しいね」
それを言った琳音の表情は見たことがない顔をしていた。いつもヘラヘラ笑っている琳音だけど、今の表情は何かを隠すような笑いだった。
私が自分の表情に戸惑っていることに気付いたのか、琳音はすぐにいつも通りのヘラヘラ笑いに戻すと、また私に近付いてくる。
「あの、なんですか?」
へっぴり腰になりながらでも聞いてしまう。
「なんだと思う?」
知りませんよ!そんなこと!用があるならはっきり言ってください!
心の中で私が叫んでいることに気付いたのか、琳音は楽しそうに笑いながら私から離れた。
「何でもないよ、ただ見かけたから話しかけただけ。それに野次馬も増えてきたし、今日はここまでにしようかな。じゃあまたね」
周りを見ると私達を避けるように人がいなかった。皆少し離れたところから見ている。朝のこの時間に階段前でこんなことをされてはいい迷惑だっただろう。
言うだけ言っていなくなった琳音に心の中で悪態をつきながら、本当に何がしたかったのかと考えてみる。教室までの道のりをひたすら悩んでみても理解不能で、私は考えることをやめた。
教室に着くと、また彩に心配された。琳音に会うと気分は下がるが、友達との仲が深まる気がする。友達が大事な私は、それに免じて朝の行いを許すことにした。
金剛か琳音にするか悩んだ結果琳音にしました。
ブランクを取り戻して皆の性格を早く思い出したいので、更新頑張りたいと思います!
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