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 下駄箱で配られるクラス分け表をよく確認する。私の前世の記憶が正しければ、悪役、攻略キャラ一人の名前が私と同じクラスに載っているはず。


 「あった……」


 それはすぐに見つかった。まず悪役、峰川(みねかわ)菜々(ななこ)。そして攻略キャラ、金剛(こんごう)(さとる)

 そして、ここが本当にゲームの世界だということが分かった。

 一年の時から攻略キャラの名前はあったけれど、本当にここがゲームの世界という確信にはならなかった。でもこれで分かった。ここは本当にゲームの世界なんだ。


 重い足取りで教室へ向かう。教室に着いたら一番最初のイベント、金剛との出会いがあるだろう。

 クラスに友達のいたヒロインが、その友達に流されるまま金剛達の男子グループに話し掛ける。

 これだけだと普通の感じがするけど、金剛もヒロインと同じように流されるまま話すことになり、つまらなさそうな顔をする。それを見たヒロインが、金剛が自分と同じことを考えていると思って話し掛けるんだ。そこで二人の話は盛り上がり、仲良くなる。

 確かに私の友達は同じクラスにいるけれど、私はゲームのヒロインじゃない。ここでは選択肢も出ない。だから私はあえて金剛に話しかけなんてせず、流されるままでいいんだ。

 ここで金剛と仲良くなると、後で悪役である峰川が大きく関わってくることになってしまう。それだけは何としてでも避けたい。


 教室に入ると、シナリオ通りに友達が話し掛けてくる。鞄を席に置いてそのまま金剛がいるはずのグループに連れていかれた。


 「あの男子のグループね、金剛君っていうイケメンがいるんだ!」


 金剛悟は乙ゲーの攻略キャラだからもちろんイケメンだ。少し色素の薄い髪にこれまた薄い瞳。ストレートの髪の毛は短く爽やかな感じだ。特に目立つ容姿なわけではないけれど、顔のパーツの並び方が完璧で、笑うとえくぼができて可愛く見える爽やか系男子だ。残念ながら絵師さんによる美麗イラストでしか知らないけれど、イケメン好きの友達に目をつけられた金剛は、きっとゲーム通りにイケメンなんだろう。

 そしてその男子グループに合流する。

そして顔を上げた私は固まった。


 「……は?」


 生で見るイケメンは直視できないほどだった。

 モデル顔負けの体型にゲーム通りの顔。全身から光を放っていて、同じ人間とさえ思えない。周りにいる男子が可哀想になるくらいだ。


 「えっ!?何この子、めちゃくちゃ可愛いじゃん!」


 そう、私もヒロインということで顔はいい。

真っ黒のサラッサラの髪はボブにして、前髪は眉にかからないぐらいに短くしている。大きい目も黒く、垂れ目である。

 可愛い系の代表のような容姿だ。

 私を見た周りの男子のテンションが上がる。だけど私は未だに顔を上げられない。

 とにかく目の前にいる男が眩しすぎる。

 私をここに連れてきた友達が何か色々言っているけれど、全く耳に入らない。気付けば自己紹介が始まっていた。


 「オレは金剛悟。気軽に悟でいいよ。これから一年、どうぞよろしく」


 ゲームでも真面目な性格だった金剛は、滑舌のいい声で短く言った。

 最後は私のようで、しぶしぶ顔を上げる。できるだけ金剛と目が合わないように。


 「桜宮花愛です。よろしくお願いします」


 すごく視線を感じる。目の前からすごく視線を感じる。実際は私よりも10cmは高いところからの視線だから、上から見られているんだろうけれど、全身を見られているようでどこから視線を感じているのかよく分からない。

視線の主は勿論、金剛悟だ。


 私は混乱していた。なんでこんなに見られているのか分からない。もしかしてゲームのヒロインと髪型を変えているからだろうか。ゲームのヒロインはおさげだった。私はこの高校に入る条件として髪を切った。少しでもフラグを立たせないために。


 「……さんっ!」


 声がしたので顔を上げ直す。そしてとうとう目が合った。金剛悟と。


 「桜宮さん、大丈夫?」


 私は必死に首を縦に動かす。

 彼は安心した顔をすると、爽やかな顔で笑った。その顔を見た隣にいた私の友達が倒れかけたのは気にしないでおこう。


 「何も無いなら、少し話さない?」


 なんで私は話しかけられているのですか?


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