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校舎裏から出ると、目の前はグラウンド。空はもう茜色で、太陽もかなり傾いている。
「もうこんな時間か〜。ん?あれはー……夕ちゃん?」
誠がグラウンドを見て、誰かを見つけたらしい。向こうも誠に気付いているらしく、手を振っている。
「あ!やっぱり夕ちゃんだ〜!」
誠と夕ちゃん?はお互いに近付いていく。向こうの方が足が速かったらしく、二人が止まった場所は、私からでも声が聞こえる範囲だった
「花ちゃんセンパイー!」
誠が振り返って私を呼ぶ。反応しないわけにもいかないから、私は二人の元に向かった。
そこにいたのは、私や誠よりも身長が高く健康的に日焼けした体、黒髪は少し癖があって短い男の子。またそれが運動部らしい爽やかさを醸し出している。
「紹介するね!夕ちゃんは尾崎夕夜、ボクの親友だよ!」
一目見て分かった。最後の攻略キャラであるということに。名前を聞けばもう確信できる。
「で、このセンパイが桜宮花愛センパイ!」
尾崎君は初対面なのもあって緊張しているらしく、軽く頭を下げるだけの挨拶だった。
「花ちゃんセンパイ?」
誠の言葉でやっと動けた。
「よ、よろしくね!」
「はい、よろしくお願いします!」
笑顔が眩しい。金剛の笑顔はキラキラしているけれど、尾崎君は綺麗な風が吹き抜けていくような気がする。つり目なのに、キツイ感じが一切しない。
「センパイはもう帰る?」
「うん。時間も時間だしね」
もう見慣れた誠の顔を見ることで気分を落ち着かせる。やっぱりイケメンは直視するのが難しい。
「そっか。じゃあ送ってくよ?」
「それは大丈夫だよ!家近いから」
「本当に?」
「本当の本当」
私の家から学校は近い。徒歩で三十分あれば余裕で着く。今から帰れば、真っ暗になる前には帰れるだろう。
「駄目ですよ、桜宮先輩」
「へ?」
そこまで黙っていた尾崎君が急に口を挟む。それに驚いた私は、反射的に尾崎君を見てしまった。その顔は真剣で、私が一人で帰ることを心配しているのがよく伝わってきた。
「先輩は、その……」
「?」
急に歯切れが悪くなる。心なしか顔も赤い。そして目が泳いでる。一回深く息を吸うと、決心したように私と目を合わせた。
「か、可愛いんですから、いくら家が近くても危ないです!!」
はい?
尾崎君の顔は真っ赤。そんな顔をされるとこっちまで照れてくる。いや、女子高校生の反応としては照れるのが正しいのかもしれないけれど、中身は今の年齢と足してアラサー。照れるよりも先に相手が心配になる。
誠は隣でぽけっとしてる。そんな顔でも可愛いからすごい。
「えっと、その、だから……」
「夕ちゃんはセンパイを送りたいみたいだよ」
唐突に誠が私の視界に入ってきた。そして誠、空気を読んであげて。誠の後ろで尾崎君が明らかに落ち込んでるよ。男子にしてみれば、女子に送ってくと伝えることさえ緊張するのかもしれない。しかもその前には君可愛い発言。尾崎君の緊張と照れはマックスだったのだろう。そこで最後に決めるはずった台詞を、誠は見事に言わせなかった。
そして言われそうになっていたのは私。信じられません。
「誠!最後まで言わせろよ!」
邪魔されたことは尾崎君も分かっているらしい。
「えぇ〜?だってなんかそれってずるくない?ボクだってカッコ良く花ちゃんセンパイを誘いたいのに!てか夕ちゃん告白するみたいな雰囲気だったよ?」
最初の方はむくれていたのに、最後の方はニヤニヤしている。
それを聞いた尾崎君の顔はもっと赤くなった。
「な、何言って!?ち、違いますからね!?オレはただ心配で……って、先輩?聞いてます?」
まだ話の中心が私だと信じられなくて、固まっていた。だって、こんなイケメンに家に送ってもらうなんて話今まで無かったし、心配されるのも初めて。でも二人の表情と会話は面白くて、私は吹き出してしまった。
「ははっ!尾崎君は赤くなりすぎ!別に告白されるなんて思ってないよ。そこまで自惚れてない」
「いや、先輩は十分……」
「誠は尾崎君からかわない!楽しんでるのが丸分かりだよ!」
「えぇ〜?だって夕ちゃん面白いんだもん!」
尾崎君が何か言おうとしていたけどそれは小さすぎて私には届かなかった。それをまた誠がからかって、私が止める。それの繰り返しなのに、何だかすごく楽しくて、気付いたら二人に私は家まで送ってもらっていた。
全員揃いましたぁぁぁ!!!!
せっかく全員揃ったので次回は人物紹介にしようと思います。
軽く(見た目とか大まかな性格とか)だけなので、読まなくても大丈夫だとは思います!
今日計画していたところまでは進めることが出来ました……!
それだけでも作者はかなり嬉しいです♪
感想、意見はいつでも受け付けてます!




