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9話 テレシャとテレシア

 

「行ってしまわれましたか……」


 私は、地球からやってきた異世界人の男の子が、先ほどまで立っていた無駄に豪華な赤い絨毯を見つめていた。


「……私の個人的な実験とはいえ、少し心苦しいものがありますが、これもこの宇宙のため。利用できるものは利用させていただきます……」


 そのようなことを一人呟いていると。


「全能神様!」


「……なんですか、騒がしいですね? 私は今憂いを断ち切ろうと」


「B-255銀河のS-5-4惑星にて、戦争が勃発したとのことです! 周りの星々を巻き込んで、銀河大戦にまで発展しようかと……!」


 そう叫ぶのは、私の直属の部下、秘書と呼ばれる神の一人であった。


「またですか……しかし、銀河大戦となると放っておくわけにはいきませんね。わかりました、すぐに指令書を発行しましょう!」


 単一の惑星内での戦争であれば、私が関与するような事態ではない。しかし、銀河を巻き込んで、となれば、話は別だ。何百、下手をすれば何千もの惑星が滅びる可能性もある。そうなってしまえば、この宇宙全体のバランスも見直さなければならなくなるだろう。不必要な仕事を増やさないためにも、私はさっさと仕事に取り掛かることにした。


「はっ、オグニスにはそう伝えておきますゆえ……」


「うん、よろしくね」


 オグニスとは、今伝えられた銀河を管理する神の名だ。


 そもそも、神とは、全能神たる私、テレシアを頂点とした存在である。超銀河団、銀河団、銀河、星団、星系、星、時には衛星、などなど。それぞれに神が一人ずつ管理者として就任し、日々あくせくと働いている。神の世界は縦社会であるため、私の独裁、ワンマン経営だ。なのでこうして、担当する神では収められそうもない事態が発生した場合は、逐一報告が上がってくるというわけだ。


「では」


 そして秘書たる神はその姿を転移させた。


「はあ、早く片付けてユーキさんを見届けなければ……」


 前回召喚したときは、ハラハラドキドキしっぱなしだった。もしユーキさんが死んでしまっていたら、今頃寝込んでいたことだろう。


 そもそも、なぜ彼をこの星に召喚したのか。一つは、実験である。実験とは、イレギュラーな事態が起きた時、他の星の知的生命体に解決させたらどうなるか、というものだ。もしこれが上手くいうようであれば、神がいちいち出向かなくても、ほいと異世界人を放り込んでおけば、あとは違う仕事に専念することができる。

 逆に上手くいかないようであれば、異世界に干渉しないよう計らう必要もある。いつかは明確に制度化しなければならないと考えていたので、今回の魔王発生を機に見極めることにしたのだ。


 そもそも、異世界とはどのような定義なのか。私がいう異世界とは、違う銀河のことを指している。銀河が一つ違えば、それはもう違う世界と言ってもいいだろう。そう考え、私は異世界、異世界人と呼ぶことにした。

 実際、ユーキさんの生まれ故郷である地球と、この惑星ゴースタは、銀河3つ分くらい離れている。こうなれば、魔法という概念が存在しない、地球が属する銀河系と、魔法と言う概念が存在するこの惑星ゴースタが属する銀河の違いが明確になる。その違いにどう対応するのかを見極めるのも、今回の実験の目的の一つなのだ。


 では、なぜユーキという日本という特定の国の人間を選んだのか。簡単に言えば、気に入ったから、一目惚れしたから、可愛がりたかったから。それだけだ。ユーキさんが秀でた生命体というわけでもないし、銀河系の中で魔法適性が高い部類なわけでもない。ただ純粋に、私の個人的嗜好で選ばせてもらったのだ。


 なので、ユーキさんが怒るのも無理はないし、私はその怒りを甘んじて受け入れようとも思う。今回、サヤさんといういわゆる幼馴染まで巻き込んでしまったのは、私とてまさかすぎる事態ではあったが……だ、だって! ユーキさんの身近にそんな存在がいるとか知らなかったし!? しかもなんか互いに気の置けない存在なようだしっ!? 私、プンプンしちゃいます!


「はあ……これくらいでいいかな?」


 そんなことを頭の片隅で考えながら、私は書類を仕上げた。全能神という名は伊達ではない、自分で言うのもなんだが、仕事は早い方のつもりだ。え、だったらポカしてんじゃねえよって? そ、それは……てへっ!


「おーい、誰かいますかぁ?」


 私は神殿の天井に向かってそう叫ぶ。


「……はっ!」


 すると数秒後、またどこからか秘書たる神が現れた。先ほどの神とは違う神だ。


「これ、持って行ってー。私の能力が含まれているから、どうにかなるでしょう。あとは指示通りに動けば、それほどしないうちに解決するはずです」


「御意……」


 そして私の書いた指示書を受け取ると、スッとその姿を消し去った。


「ふう、さてさて、ユーキさんはどうしているかな? サヤさん、ちゃんと異能チートを手に入れられたかな?」


 私は指をパチンと鳴らす。すると目の前にモニターが現れ、ゴースタにある何処かの草原が映し出された--


というわけで、テレシャは全能神テレシアでした!

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