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7話 新たなチート

 

「くっ、この光は……!?」


 眩いばかりの光が俺を包み込む。その現象は、神殿に転移させられた時のものとはまた違う様子だった。あの時は、サヤの体全体が光ったのに対して、俺のものは胸から発せられているからだ。そして、どこか懐かしい感じもする……


 そして間も無く光はおさまり、再び神殿と、この世界の管理者《神》である女神テレシャの顔が視界に入った。


「……ふう、できました!」


 テレシャはそういい、親指を立てグッと突き出した。


「もしかして、また異能か?」


 そう、俺が懐かしいと感じたのは、5年前、同じ光を見たことがあるからだ。その光とは、すなわち。


「その通りです! ささやかなものですが、魔王討伐の旅が少しでも楽になればと」


 異能、いわゆるチートを発現させるときのものだ。


「……そうか、ありがたく受け取っておくよ」


「はい。それで、効果のほどですが、全魔法を使えるよう、マジッククリエイトの能力にしておきました! 前回は武力、剣技一筋でしたもんね? て 手数は多い方がいいでしょう?」


「全魔法、だと?」


「はい、その通りです。といっても、クリエイトと名のつく以上、ただ解放されただけではありません。ユーキさんがこんな魔法があればいいな、と想像できうるものを、すべて実現させることができるものです。ですので、この世界に予め存在しているものであっても、知らなければ使えうことはできませんし、逆に私や現地人には思いつかないようなとんでもない魔法を使うこともできますよ?」


「えっとつまり、どんな魔法が使えるかは、俺の想像力によるということか」


「そういうことですね。但し、使える魔法はユーキさんのステータス、魔力《MP》に依存していますから、それを超える魔法を発動することはできませんので、お気をつけください」


「なるほど、世界をぶっ壊すような魔法は使えない可能性が高いというわけか……」


 俺の魔力は成長チートがあったとはいえ、それほど高くはない。せいぜいそこらの武人よりも高いかな、程度だ。先程サヤに幾つかかけた魔法は補助魔法で、それは俺のような武器に頼る前衛の者でも使えるようなものだ。それ以外、所謂魔法使いや賢者といった者たちが使うような強力な魔法は一切発動することができない。


 だが、このチートを貰えた今、魔力次第ではどんなに強力で、この世界の人々が見たことがない魔法であっても、即座に発動することができるというわけだ。勿論、俺がその魔法を発動するに至る明確なイメージを持っていることが前提ではあろうが。


「ぶっ! じょ、冗談ですよねっ!? そ、そんなことをすれば、私の立場が、いや、職や命さえも……」


 テレシャは俺のつぶやきを聞いた途端、ブルブルと震えだした。神様であっても、仕事でミスったらペナルティがあるのか? というか、命さえって、物騒な話だなあ……


「当たり前だ。一度はこの手で救った世界、壊す必要がどこにある?」


「で、ですよね! よ、よかった……」


「だが、場合によってはお前を消すこともできるんだよな? ん?」


「えっ! ゆ、ユーキさん〜〜」


 テレシャは俺の足にすがって「嘘ですよね? うそですよね!?」と裾を引っ張る。


「これ以上変なことをしないという前提でだがな」


 俺は、テレシャのことをジロリと睨む。チートを与えたのはこいつだ。こちらは被害者であり、またこいつが何をしでかすかわかったものではない以上、牽制をしておくのに越したことはない。


「や、約束しますから! も、もう一つあるんですよ!」


「なにがだ?」


「チートが、ですっ!」


 テレシャは俺から離れ、おずおずと立ち上がる。


「今回は、成長チート改、をつけさせていただきました!」


「成長チート改?」


 成長チート、というのは、前回召喚された時に貰った異能だ。先ほども少し説明したが、具体的には現地人よりも成長するスピードが1.5倍速くなる、異世界人特有のスキルを、レベルに応じて幾つか手に入れられる、といった程度だ。それの”改”と言われても、それほどパッとしない気もするが……


「はい、改といっても、ただの強化版ではありませんよ? なんと、自らのステータス、他人のステータスを確認することができるのですっ! どうですか?」


「なん、だと?」


 ステータスを確認できる、だと?


「えへへ、驚いたでしょう? そうでしょう?」


「ああ……よ、良くやったぞ、テレシャ!」


「ふぇっ?」


 俺は、テレシャの手を握り、上下にブンブンと振り回す。テレシャがあたふたとするが、俺は気にしない。それほど嬉しかったのだ。


 なぜかというと、理由は簡単だ。前の時にはステータスを確認することができなかったから。サブカルに慣れていた俺は、てっきり自分や敵のステータスをよくあるホログラム的な何かで確認できるものだと思っていたが、そんなことはなく、全て自らの頭に収めなければならなかった。

 実際の戦闘も仲間に頼ってばかりで、勇者らしからぬ姿を見せ、リーダーシップを発揮することもできなかったので、仲間には迷惑をかけただろう。それでも、文句も言わずに俺についてきてくれたみんなには感謝するが。


 が、今回は違う。敵のステータスを確認できるということは、それだけ戦略を練りやすくなるし、何より自分のHPやMPを数値として把握できることで、感覚に頼らなくてもすむ。

 異世界転生といえども、身体は地球にいた頃の自分のままだったので、現地人は生まれた頃から学んできたスキルや魔力についての知識、またその力が体内に存在するという感覚を理解できるだろうが、そんなものは存在しない地球で暮らしていた俺は、その感覚を掴むだけでも大変だった。

 素人が銃を持たされて、自分で使い方を学べと言われると考えたらわかりやすいだろうか?


 まあ、要はこれからが本当の”チート”の始まりと言えるだろうということだ。


「よし、これでようやく色々と自由にできるぞ!」


「よ、よかったですね……」


 テレシャはなぜかげっそりとしている。が、気にしない。


「こほん、ステータスを確認するには、頭の中でステータスと唱えるだけで結構です」


「おお、簡単なんだな」


 俺言われた通りに早速、自らのステータスを確認することにした。


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