落語よく知らないけどもそれっぽい話≪噺≫作ってみた
「時そば」、または「時うどん」という噺を聞いたことはありますか?
名前だけ知ってる。という方も多いと思います。
そばといえば、夏にはざるそば、年越しには年越しそばなど、年中美味しく食べられますね。食べたことないですが
実は僕、蕎麦アレルギーでして…
というわけで、「そばは食べられないからさばを使おう!」と思った次第です。
さばは大好物なんですよねぇ…
塩焼きとか…味噌煮とか…〆さばもいいですね…
『歳サバ』
むかしむかし…具体的には江戸中期のこと
とある城下町に松と武という男がおりました
これはある天気のいい日、その昼下がりのこと
「やあやあ、そこにいるのはご近所の武さんじゃあないか」
「おやおや、そういうそっちは松さんじゃあないか。どうしたんだい?」
「武さんや、今ちょうど昼時だねぇ、腹は空かねぇかい?」
「ん?……あぁ、もうそんな時間だったかねぇ。どうしたんだい、奢ってくれるとでもいうのかい?」
「いやぁ、この万年金欠男に飯をおごれとは武さんも人が悪い!
私が言いたいのはそうじゃなくてねぇ、一緒に食べに行かないかと言ってるんだよ」
「おや、松さんが誘ってくるとは珍しいね。どこへ行くつもりなんだい?」
「どこってねぇ……最近そこら江戸中で流行ってる噺があるだろう?」
「葉無し?あぁ、巷で話題の『ロールキャベツのキャベツ抜き』かい?
ちょっと気になってたんだよねぇ…」
「ほほう、そりゃあうまそうだね!」
「なんでも肉が口の中に入った瞬間に溶けて、スープの味と共に肉汁と服が弾けるそうだよ。美味しいんだろうねぇ…」
「ところで武さん、それはただの『煮込みハンバーグ』と何がちがうんだい?
…まあいいか。だからね、葉っぱ無いじゃなくて、噺だよ噺、聞いたことくらいはあるだろう?」
「なんだ、落語のことかい……最近の流行ってと……『時そば』かい?
なんだなんだ、お前さんもあれにあやかってそば屋で金をけちろうってのか」
「やめてくれやい、あんな馬鹿な連中と一緒にしないでくれよ。
だいたい流行りの噺のそのままでそば屋を騙そうなんて甘すぎるね!」
「いやぁ、アレは呑んだくれが冗談でやってるもんでしょうや……
『時そば』じゃないのかい。するてっと…何かあったかなぁ」
「いんや、『時そば』であってるよ武さん。
でもね、私を他のやつと一緒にしてもらっちゃ困るよ……
私ゃキチンと成功する方法を考えついてるからね!」
「いやぁ、そりゃあ冗談を本気にしちゃあ呑んだくれの人たちに失礼でしょうねぇ……」
「私は考えたのさ。どうして他の奴らが失敗するのかをね……
ここが私のすごいところさ!発想の逆転ってやつだね」
「そこよりも先に実践しようとする発想を逆転するべきだと思うけどねぇ
……って聞いてないね」
「つまりだね、そのままの方法でやるから見抜かれるのさ。上手くこちらの思惑を隠し通せば良いんだよ」
「松さんや、本気で騙そうとしたら御用だよ」
「だからね、あえて普通の定食屋に行ってみようと思うんだ。という訳でさっさと行くよ!」
「ちょっと待ちなさいな…ってもう行っちゃった」
〜とある食事処〜
「ここの店はね、独身の女がやってる所でね、確か歳がちょうど30になったところだったかね……」
「いやいや松さん、なんでそんなこと知ってるんだい?」
「そりゃあ下調べは大事だからね」
「言ってることは正しいのにやってることはただの悪党だよ…」
「まあ見ときなよ、
邪魔するよ〜」
「いらっしゃい!」
「今日も良い天気だねぇ、仕事してると腹が減ってたまらん。今日は何かおすすめはあるかい?」
「おすすめかい?そうだねぇ…最近は鯖が美味しいよ」
「へぇ、鯖か。最近食べてなかったけどうまそうだなぁ
……よし、鯖の味噌煮定食1つで!」
「あいよ!……
〜数分後〜
ほら、鯖の味噌煮だよ」
「おっ、こいつぁうまそうだ。いただきます。
おお、こいつぁうめぇ。いい鯖使ってるねぇ
うめぇうめぇ、味噌もいい味出してるよ
……ああ、食った食った。こんなに食ったのは久しぶりだねぇ、とんでもなくうまかったよ」
「ははは、そう言ってくれると嬉しいよ
お勘定だね……えっと…38文だね」
「38文だね。
ちょっと待っておくれよ……
10…20…っともう束が無いね……
すまんが小銭を出すから手を出してくれないか?」
「手かい?わかったよ。ほら」
「21…22…23…24…25…26…27…28…29っと
…そういやぁお前さん、今年にいくつになったんだっけか?」
「あたいかい?……今年で26さね」
「そうかいそうかい、27…28…29…………38っと
ほら、ちょうど」
「はいはい、ありがとねぇ」
「いやぁ、こっちこそうめぇメシ食わせてもらったよ。ごちそうさん」
〜店の外〜
「今の見たか!?どうだったよ?」
「そんなことよりお前さん、昼時に店の外で他人がメシ食ってるのを立って見ていた俺のことも考えたことあるかい?」
「いやいや、むしろ私はなんで武さんが入ってこないのか不思議だったよ」
「お前さんが見てろって言ったんだろう……まあいいか。
どうだったって何がだい?馬鹿なお前さんが3文多く払ったことかい?」
「なんだって?そんな馬鹿な話があるかい」
「おや、気づいてなかったのかい
店主が26って言った後にまた27から数え直してたじゃないか」
「なんだって!26歳!
あの店主なんだって嘘をついたんだ!?」
「いろんななんだってがあるんだねぇ
店主が嘘をついた理由かい?そんなの最初に言ってたじゃないか」
「何か言ってたか?
鯖が美味いとしか聞かなかったが……」
「言ってるじゃないか……
それにお前も言ってたじゃないか、店主は独身だと」
「なんだ……何を言ったんだ?」
「何度も言ってるじゃないか、
『サバ』を読んだんだよ」
……独身女性に年の話題は厳禁ですね。たぶん
おあとがよろしいようで_:(´ཀ`」 ∠):_
……え?よろしくないって?
お金などは店主の年齢に合わせたので価値はよくわかってません……
まあうどん16文っていうのが有名だから……○亀の釜揚げうどん2杯分くらいの値段……かもしれない