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皇国妖精恋歌  作者: yogu
第一章
6/16

出会い・運命・契約(6)

少し以前の話を改稿しました。

もしお暇な方がいらっしゃったら確認してみてください。

6.


世界は粥で造られてはいない。

君等は怠けてぐずぐずするな。

固いものは噛まねばならない。

喉がつまるか消化するか、

二つに一つだ。

- ゲーテ -



「げほっ!うぇっぇぇ・・・・。」

エドゥアルトの指が引き抜かれた瞬間、アスターは思わずえずく。

口の中はエドゥアルトの血の味がする。不快だ。

むせ返るアスターを見下ろすエドゥアルトは、無表情のまま口を開いた。

「これで、俺とお前の契約はなされた。精々俺にふさわしい契約妖精になれるように努力するんだな。」

「は・・・?契約・・・?」

アスターはハトが豆鉄砲で撃たれたような顔をした。アスターの鳩豆顔に思わずエドゥアルトは吹き出した。

「くっ・・・ははっ!おい、妖精!お前ただでさえ間抜けな顔が余計に酷いぞ!」

ギっ!とエドゥアルトを睨みつけて、アスターは吠えた。

「うるさい!ほっといてよ!ってか契約って何!?」

「お前、妖精のくせにそんなことも知らないのか。」

呆れたようにため息をつくと、エドゥアルトは指をパチンと鳴らした。

なんだか※だだしイケメンに限る、なポーズが似合っていて、非常に腹立たしい限りである。

「ええっとぉ、僭越ながら説明させていただきますねぇ。・・・ってか陛下の表情が豊かすぎて、すごいキモイ・・・。」

少し青ざめたベルタが丸めた書類らしきものをもって歩み出る。

先ほどの指パッチンはこの為のものだったようである。

「あ?俺はいつだって表情豊かだろうが。」

「本気で言っているのならぁ、医師を呼ばなきゃならないのですけれどぉ。あ、そうそう。

今から説明しますねぇ、妖精ちゃん。」

青ざめた顔色から、とってつけたような笑顔になると、ベルタは手にしていた書類を広げて見せた。

「妖精ちゃんはぁ、契約妖精の仕組みはご存知ぃ?」

「え、ああ。まぁ、一応・・・?」

契約妖精とはその名の通り、人間と契約した妖精のことである。

「なら話が早いわねぇ。妖精と人間の契約の仕方っていうのは知ってるぅ?」

「え、えーと・・・。確か互いの血液とか交換して、魔法陣の上で契約の呪文を唱える・・・だったような・・・?」

一般的な妖精の知識のうちに契約妖精のことは入るが、ただでさえ見た目も能力も凡庸かつ、本人も森を出る気がサラサラなかったアスターはお座なりな知識しかなかった。

「うーん、半分正解で、半分不正解というかぁ・・・。テストで言うと100点満点中25点くらい?ぶっちゃけぇ、赤点!」

「いだっ!いだい!ひょんといはい!」

きれいな笑顔で言い切ると、真っ赤に塗られた爪が輝く指でぎゅむっとアスターの頬を抓りあげた。ただ左右に引っ張るだけでなく、微妙にねじりが入るという高等テクニックのせいで、アスターの頬は大打撃である。

アスターの頬を抓る手はそのままに、ベルタは主君に笑いかけた。

「陛下、今更ですけどぉ、この子若干お頭弱いみたいですよぉ。だいじょうぶですかぁ?」

「仕方あるまい。凡庸とはいつの時代も理解が遅いものだ。」

「そうですかぁ。じゃあ説明続けますけどぉ。」

パッとベルタの手から解放されたアスターの頬は真っ赤に腫れ上がっていた。

「ううっ・・・。この人超怖い・・・。」

「何かいいましたぁ?ええと、それで話し続けますけどぉ。

人間と妖精が契約するためにはぁ、妖精と魔力を持った人間がお互いの体液を交換(手段は問わない。)してぇ、契約の言葉を交わすことが必要となるんですねぇ。魔法陣はあくまでその補助であって、契約の場にあればいいんですぅ。だから魔法陣の上で契約する必要はないんですよぉ。」

「へー・・・。」

ベルタの説明はわかりやすい。わかりやすかったがそれを自分の置かれた状況に当てはめて考えさせるのをアスターの脳内は拒否していた。

そんなアスターの幽かな努力もむなしく、ベルタに説明を丸投げしていたエドゥアルトが足元の花を拾ってアスターに現実を突きつけるかのように、傲慢に見下ろす。

「お前と俺の場合、体液交換は俺の血とお前の涎、契約の言葉はお前に読ませたあの書類、そして魔法陣は・・・。」

「これですよぉ。」

アスターの寝ていた籠にしかれていた布をベルタが持ち上げる。

その布は遠目から見ると何の変哲もないただの柔らかな布・・・だが。

アスターはまじまじと布に近づいてよく見てみた。

丁寧に施された刺繍のアンシンメトリーの中にごくごく小さな━それこそ蟻サイズの大きさで、契約の魔法陣が紛れ込んでいた。

「詐欺じゃん!!これ完全に詐欺だよ!?」

ようやく自分の置かれた状況━即ち、自分とエドゥアルトが契約を結んでしまったという現実━がのみこめたアスターは、わたわたと両手を動かしながら訴えた。

なんてことだ。詐欺なんて恐ろしい犯罪行為を皇帝がやっていいのか。

アスターは諸悪の根源を睨みつけようと顔を上げた。

「詐欺でも、なんでもいい。」

アスターの髪に拾い上げた花を挿すと、エドゥアルトは傲慢に微笑む。

「これで、お前は俺から離れられない。」

その傲慢な笑みに、アスターは見惚れるより先に凄まじい寒気とどえらいことになったという絶望を感じるのだった。


初恋はこじらせると大変だよねっていうお話。

説明ばかり多くなってしまい申し訳ないです。

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