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皇国妖精恋歌  作者: yogu
第一章
1/16

出会い・運命・契約 (1)

海と山に挟まれた栄華を誇る皇国、ブルーム・エアデ。

人生イージーモードのチート皇帝の心を射止めたのは、ごく平凡な芋好きの花妖精でした。

体長10センチの妖精と180センチ越えのチート皇帝の送る異種族ラブコメディー・・・?

1.


毎日を生きよ。

あなたの人生が始まった時のように。

- ゲーテ -





皇国歴、2000年。

運命の鐘は1000年ぶりにその音を国中に轟かせた。

・・・ある春の、麗らかな日の出来事であった。





海と山に挟まれた資源豊かな皇国、ブルーム・エアデ。

1000年ほど前から発展をつづけ、近隣諸国の中でも、《老後に住みたいと思う国》《制度の整っていそうな国》《これからも安定している国》《国民の幸福度が高い国》などの様々なランキングでもほぼ独走状態にある、一大帝国である。

皇国98代目皇帝に当たる男、エドゥアルト・フォン・バルヒェットは、月のない夜をまとったような漆黒の髪に、知性を持った薄紫の瞳、絵師がさじを投げたくなるほどの完璧な顔の造形、ダメ押しに彫刻のように整った体躯を持つ、もはやお前は2次元の化身かといいたくなるほどの美丈夫であった。

しかもこの男、類稀なる容姿だけでは飽き足らず、剣を持たせれば軍は不要、魔法を使わせれば魔導書が自発的に役割を終え、政治的手腕は歴代の中でも比類なく、逆にできないことは何なのだと、人々が問い質したくなるほどに有能であった。

唯一の欠点といえば、まぁ、その槍が降ろうが雨が降ろうが揺るがない鉄仮面と、性格にあったりするのだが、個人的な付き合いをする者が少ないため、その事実を知るものは一握りである。


生まれは王族、恵まれた容姿、向かうところ敵なしの能力を備えた人生イージーモードの青年━98代皇帝エドゥアルトは、グッと眉間によっていた皺に指をあてた。

彼の目も前には様々な種類の『癒し』について書かれた部下からの書類が山のように積んであった。

皇帝の仕事は国が滅びるか、その生涯を終えるときまで終わりがない。

何の因果か、王族に生まれついて以来プライベートなど存在せず、エドゥアルトは24年の生涯を意図せずともずっと働いて過ごしていた。

もちろん、有能な彼にはこれまた有能な部下がいたものだから、いろいろ振り分けているものの、それでも皇帝の仕事は膨大であった。そんな彼に周囲が『癒し』をと思うのは、当然の帰結であった。


「あらあら、今回はまた一段とすごいですねぇ。」

部屋の隅で待機していた、光り輝くような金糸の美女がゆるりと微笑む。

「ああ・・・。皆からの気持ちはありがたいが、余計に疲れる。ベルタも見てみるといい。」

「愛されてる証拠ですってぇ。どれか試してみたんですかぁ?」

金糸の美女━ベルタはひょいっと書類をつまむ。

「何々・・・後宮で美女に癒される、アニマルセラピー、森林浴、スイーツバイキング、お風呂にゆっくり浸かって美顔マッサージ・・・。うーん、最初の後宮で美女とってのは、いかにも皇帝らしいですけど、他のはどれも仕事に疲れたOLって感じですねぇ。」

「何でもいいが、どれも特にそそられないな。特にこの後宮云々は余計に疲れる未来が手に取るように予想できる。」

エドゥアルトはため息をつきながら、書類の山から目をそらした。






同時刻、ある森の中。

一人(?)の妖精の少女が、危機的状況に瀕していた。

(ああ、短い人生?いや、妖生?だった・・・。)

少女のボンヤリとした赤毛が、バサバサと風にあおられる。

身にまとう黄緑のワンピースには、べったりと鳥のよだれが染み渡っていた。

頼りなさげに風にあおられる透明な翅は普段自堕落に過ごしていた報いなのか、肝心な場面で役目を放棄して羽ばたこうとすらしない。

少女を咥える鳥は上機嫌にどこかへ向かって翼を動かしている。絶体絶命だった。


鳥に咥えられている妖精の名は、アスターという。

どこぞの東方の島国で言うならば、蝦夷菊。その花から生まれた花妖精だった。

花妖精は基本的に見目美しいものが多く、森林や花園で花の蜜を飲んだりして、のんびり自堕落に、でも愛想は飛び切りよくして過ごす種族だ。愛されニートの集まりだとでも思ってもらいたい。

しかし、アスターはその中でも群を抜いて異質な妖精だった。普通妖精は妖精の両親が子どもには言えないあれやこれやそれをおこなって生まれてくるものであるのだが、ごくまれに、自然の花や木々などから生まれてくるものがいる。そういう者たちはこぞって魔力を多く備え、特殊能力は有能で、秀でた容姿のものが多い。

しかし、アスターは蝦夷菊から朝露とともにポロンと生まれた妖精であるが、出生を疑われるレベルで平凡な少女だった。

決して不細工なわけでもないのだが、これといって特徴もない、平凡な顔立ち。

スタイルも、年ごろの花妖精としては貧しいのではと思われるような体躯。

魔力も、他の花妖精たちとそこまで変わらない。せいぜい基本魔術は扱える程度である。

特殊能力もあるといえばあるのだが、アスターの花である蝦夷菊が花占いに使われていた花であるからなのか、占いが人より得意、というレベル。

アスターは360度、どこを切り取っても、平凡な花妖精であった。

自然発生した妖精が平凡な妖精であるというだけでも異質なのだが、彼女はそれに加えて、他の妖精と異なる部分があった。

アスターは異食の気があった。通常、花妖精の主食は花の蜜や、はちみつ、砂糖水というようにそのかわいらしい容姿を裏切らない甘味であるのだが、アスターが好むのは蜜ではなく、芋であった。

ジャガイモ、タロイモ、サツマイモ。サトイモに、トロロイモ。生も好きだが、過熱をすると甘みが増し、食感が変わってくる、魅惑の食材、芋。

幼いころこそ、おとなしく他の花妖精に倣って蜜を食べていたアスターだったが、他の種族の妖精におすそ分けしてもらった芋を食べたその日から、身も心もすっかり、芋を愛するようになってしまった。

今では花妖精たちから誕生祝にかごいっぱいの芋類を送られるほどである。


「うんとこしょ、どっこいしょっと!」

今日も芋を愛する彼女は、人間と契約していた妖精が森に里帰りした際にもらった芋を大事に抱え、きれいに洗うべく川にむかって飛んでいた。

普段の不摂生が祟ったのか、クタクタになりながら川にたどり着き、芋を洗っていたまさにその時。

「へ?」

太陽の光が遮られたことをアスターが認識するより早く、アスターは自分が羽ばたいたことのない高さの空まで連れていかれた。

そう、アスターは鳥に餌と間違われたのであった。


初投稿です。

至らない点も多いと思いますが、頑張りますのでよろしくお願いします。


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